袖の下もOK? 「フリーダム」な審査会
さて、冒頭で「ニコニコ動画はカオス」という話が出たが、ニコニコ映画祭についても同じ状態で、手塚氏も「今後も定期的に開催」「受賞作品を映画館で上映」といったように、さまざまなアイデアを抱えているという。
中でも興味深いのは、審査の様子をオープンにするという計画だ。
「映画祭自体をユーザーのみなさんに楽しんでいただきたいので、審査会の様子を撮影して、スミからスミまで見せたいです。ニコニコ動画にアップすれば、ユーザーが審査会に対してツッコミを入れられる」
普通じゃないのは、審査の様子を見せることだけではない。
「ユーザーの声次第で、評価が簡単に寝返ったりとか、なんでもアリにしようと思ってます。特定の審査員に名指しで『ぜひ大賞に選んで欲しい』と袖の下を付けて送ってきたら絶対に通るとかね(笑)。そうしたことも含めて全部オープンにしちゃおうかと。これは通常のコンテストの審査に対するアンチテーゼなんです。普通のコンテストは、誰がどういうつもりで作品を選んでいるのかが見えないですからね」
主催している審査員も楽しまなければ、見ている人たちに楽しさは伝わらない。だから思う存分に楽しもうという、実にニコニコ的なスタンスだ。
実は、ニコニコ動画はそんなに利用してない
ニコニコ動画への思い入れを熱く語ってきた手塚氏だが、意外なことにニコニコ動画はほとんど利用していないという。
「たまにチラ見はしますし、普通にネットも使いますけど、時間があまりないのでどっぷり浸かったりはしない。実はメールアドレスも持っていないし、テレビも15年くらいきちんと見ていない。ゲームをやったのは、『テトリス』が最後かな」
しかし、新しいメディアやエンターテインメントに触れていないわけではない。
「みんなが僕がニューメディアに詳しいと誤解して、最先端にかかわる仕事を振ってくるんです(笑)。実はWindowsが登場する以前にパソコンで3Dグラフィックスもやっていますし、アスキーは立ち上げの頃から知ってます。その頃から最先端と誤解されて取材も受けていたんです」
ニューメディアの勃興をいくつも体験してきた手塚氏だからこそ、ニコニコ動画の可能性を見いだして、成長へのプランを提案できたのかもしれない。
ケータイで撮った単純な作品たちが、プロの映像家たちの立場をゆるがせることになるのか? それとも駄作ばかりになってしまうのか(それでも審査の様子やコメントは盛り上がるかもしれない)。それはフタを開けてみなければ分からない。「我こそは!」と思う方は、ぜひニコニコ映画祭の公式ページで参加要項を確認して、応募してみよう。