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新インターフェイスを採用するコンパクトズーム機

【レビュー】初心者向け多機能機 キヤノン「PowerShot SX100 IS」

2007年10月24日 19時00分更新

文● 行正和義

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AiAFを搭載しなかった理由とは?


AF方式

AF方式は顔認識と中央の2つしか用意されないが、中央にしたときはAFフレームのサイズを“標準”と“小”から選択でき、より細かいAFが可能となっている

 また、スペック的にもかなり特徴がある。フォーカスモードは中央と顔認識が選べるのみで、同社の最近のデジタルカメラで多くが搭載している「AiAF」(9点など複数のAF点から選択して自動でフォーカス点を選ぶマルチ測距機能)は利用できない。分かりやすく言うなら、遠景に比べて近い距離に被写体があればそれを見つけてフォーカスしてくれるのが最近のAFであり、2人の被写体が並んでいる場合などに中ヌケしてしまう(間の遠景にピントを合わせようとする)のを防ぐために「3点」、中央に上下2点を加えて十字型にした「5点」、さらに田の字の各交差点にAF点を配置した「9点」、といった複数のAF点から被写体と思われるものを自動判別するようになっている。PowerShotシリーズやIXY DIGITALシリーズでも、9点測距はごく一般的になっているが、本機ではそれに比べて退化とも思える「中央1点」となっているのは、ある意味非常に新しい。

 本機が顔認識機能を搭載しているように、スペック的に搭載が難しくかったわけではなさそうなので、これは設計側でわざわざAiAFを省略したと見るのがいいのだろう。顔認識機能が利用できることから人物、特にポートレートや複数人の記念撮影の際に、(機能的に競合する)AiAFを誤って使ってしまい人物よりも手前にある被写体などにピントが合ってしまうことを防ぐためにも、AiAF自体をなくしてしまったほうが撮影ミスを起こしにくい(人物を撮るときには「フェイスキャッチ」という習慣が付きやすい)。人物を含まない風景や静物、ペットや建物などの撮影ならば、いったん被写体を中央に置いてシャッター半押しでフォーカスロックさせてからフレームを少し動かせばいいので、AiAFの必要性もないのだろう(シャッター半押しという操作に多少の慣れは必要だが)。

 いずれにせよ、マルチ測距が一般化した現在のカメラから見ると、かなり割り切った考え方ではあるが、顔認識機能が一般化してきているコンパクトデジタルカメラの中で、同社が新しい方向性を模索した結果と言えるだろう。



撮影サンプル


撮影サンプル1 広角側で撮影。すっきりとした発色はPowershotシリーズらしい絵づくりだが、ハイライトの周辺に着色がわずかに見られる。絞り優先AE、1/250秒、F7.1、ISO 80。元画像はで3264×2448ドットで、掲載用に800×600ドットに全体画像をリサイズ、中央部をトリミングしているほかは明るさや色、シャープネスなどの補正をかけていない

撮影サンプル2 撮影サンプル1と同じ場所から同じアングルを最大望遠で撮影。最大望遠ではやや解像感に乏しくなるが、それでもポケットコンパクト機としてはかなり良好だ。明暗の差の激しい画面となっているが、大きな階調のとびは見られない

 実際に手に取って見ると驚くほど小さいにもかかわらずホールド性十分なグリップを備える点は、PowerShotシリーズとしては目新しく、ニコンカメラ販売(株)の「COOLPIX P50」(関連記事3)や松下電器産業(株)の「LUMIX LC」シリーズ(関連記事4)に近い印象を受ける。大きめのモードダイヤルをはじめとして大きめのボタンなどの使い勝手はなかなかいい。望遠機にもかかわらずEVFを搭載していない点を残念に思う人もいるかもしれないが、コンパクトさを優先したと考えれば十分納得できるだろう。

撮影サンプル3 メニューでの設定やモードダイヤルで選択することなく顔認識機能利用できるのはかなり使い勝手がよい。プログラムオート、1/60秒、F4.0、ISO 80

撮影サンプル4 コンパクト機でもマニュアル露出ができ、電子ダイヤルの操作も気軽なので、ちょっとした街中のスナップ撮影でも「背景をややぼかしたい」といった絵作りができるのはありがたい。絞り優先AE、1/80秒、F4.0、露出補正+2/3、ISO 80

 コントローラーホイールの独特の操作感にやや慣れが必要ではあるが、基本的にFuncボタンで撮影時メニューを表示、露出補正ボタンで露出補正(もしくは絞り値や露出補正の切り替え)、といった機能自体は従来のPowerShotと変わらないこともあって、操作そのものは使いやすい。AiAFがなくなったことで、人を撮るときには必ず顔認識をONにするか、被写体を中央にする(中央でシャッターを半押しにしたのちフレーミングする)ことを心がけていればまず失敗はないだろう。

撮影サンプル5 マクロ撮影。AF範囲は通常時で50(広角)~100(望遠)cm、マクロ時は1~50cm(広角時)となっており、望遠では最短でも1mと、広角/望遠で大きく撮影可能距離が異なるものの、ズーム倍率が大きいため背景と前景の比率の自由度が高いのは高倍率ズーム機ならでは。絞り優先AE、1/160秒、F8.0、ISO 80

 同社の画像処理エンジン「DIGIC III」(ディジックスリー)の威力もあって、コントラストの強いシーンや薄暗い場面でも色味は鮮やかで、彩度やコントラストの強調も自然なレベルとなっている。同社の光学10倍コンパクト機としては縦型スリムボディーの「PowerShot TX1」(関連記事)があるが、本機はやはり大径レンズを採用するだけあって解放絞り値はTX1のF3.5~5.6からF2.8~4.3と明るくなり、望遠時での解像感低下も少ないようだ。

撮影サンプル6 高感度で撮影。ISO 1600ともなればかなりざらつきはひどくなるので、できればISO 800程度までにしておきたい。ISO感度設定はPowershotやIXY DIGITALシリーズ同様にAuto/Hi-AutoおよびISO感度を必要なときだけアップするISOブースター機能を持つ。プログラムオート、1/25秒、F2.8、ISO 1600

 コンパクト機のAE、AFをはじめとしたオート/プログラムオートの機能も上がってきており、気軽に記録撮影する持ち歩き用途であればマニュアル露出機能の有無にこだわる必要はそれほどないだろう。また、マニュアル露出をはじめとした各種撮影を試したい入門・普及用デジタルカメラであれば、同社のPowerShot Aシリーズのほうがホールド性や拡張性に優れているのは確かだ。にもかかわらず、コンパクトながらも豊富な撮影機能を持つという点はかなり面白く、店頭などで触ってみると使い勝手の良さを実感できるはずだ。本機よりも小さいボディで同様にマニュアル撮影や高倍率ズームを採用するデジタルカメラ製品もあるものの、薄型コンパクト機を高機能化・高倍率化したモデルではやはり機能や操作性、画質などに不満が残る場合も多い。本機はA・Sシリーズをそのまま小さく凝縮させつつ操作性を工夫しており、サイズ/機能ともに非常に充実した製品と言えるだろう。



PowerShot SX100 ISの主なスペック
製品名 PowerShot SX100 IS
撮像素子 1/2.5インチ有効800万(総830万)画素CCD
レンズ 光学10倍ズーム、f=6.0~60mm(35mmフィルムカメラ換算時:36~360mm)、F2.8~4.8
静止画撮影 最大3264×2448ドット
ISO感度 オート、高感度オート、ISO 80/100/200/400/800/1600
動画撮影 640×480ドット、30fps、MotionJPEG圧縮AVI形式
液晶ディスプレー 2.5インチTFT、約17万2000画素
記録メディア SDメモリーカード(SDHC対応)/MMC(MMCplus、HC MMCplus)
インターフェース USB 2.0(Hi-Speed対応)、AV出力、DC入力
電源 単3形乾電池×2本(ニッケル水素充電池対応)
撮影可能枚数 約140枚(単3形アルカリ乾電池)
約400枚(単3形ニッケル水素充電池)
本体サイズ 幅108.7×奥行き46.7×高さ71.4mm
重さ 265g(本体のみ)

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