マッシュアップサイトで収入を上げる方法
「Knecht ハザードマップ」は、大手企業にASP提供されることで収益を上げられるようになった。萩原さんは、初めからASP提供による収益を考えていたのだろうか。
「注目されることは目指していましたが、このようにASP提供が決まるとは思っていなかったです。ただ、マッシュアップサイトは国内外に数多くあり、それらの主な収益源がアフィリエイトやバナー広告だと思いますが、アフィリエイトなど広告による収入は期待できないと考えていました」
萩原さんは、マッシュアップサイトで収入を上げる1つの方法が「固有のサービスとしてのパッケージ化」だと言う。というのも、大手企業でも自社で開発した以外のサービスを外部から調達して使っているからだ。面白い、便利なサービスがあれば、企業はASPのような形で欲しがる。「Knecht ハザードマップ」は、チューリッヒ保険がサービスによって提供する価値と一致していたことで、パッケージとして売ることができたのだ。
「ITベンチャーを立ち上げる際に、受託開発をやっていては急成長はできないと分析しました。そこで、受託をせずにビジネスとして成功させるには、大手からの引き合いがないとダメだと思い、大手との取り引きしか視野に入れなかったのです。そしてチューリッヒ保険さんにASP提供させていただくことで、いきなり1期目から黒字化することができました」
技術先行型では、自由なアイデアは生まれない
マッシュアップにより萩原さんのアイデアが形になったのが「Knecht ハザードマップ」をはじめ、同社が運営しているいくつものサービスだ。全国の図書館とアマゾンの検索が行なえる「クネゾン」、歴史的な出来事を現在の位置や書籍、映像などに結びつける「Knecht クロニクル」、読んだ本を記録していく「クネゾン・リスト」。読んだ本の中から特に感銘を受けた文章を引用し、他人と共有できる「クネヒト・ライブラリー」というコミュニティサービスもある。
「技術先行型の人は、配布されているAPIを見て『何ができるか』という材料ベースや技術ベースの発想をする傾向にあると思います。しかしその方法だとアイデアが限られてしまうのではないでしょうか。多くのマッシュアップと同様に、同じ材料(API)を使って同じようなサービスを作ることになってしまう。でも僕は技術的なことは最後の最後になるまで考えません。まず、自由にアイデアをふくらませます。そしてコンセプトが固まった段階で、はじめて技術的なことを考えるのです。」
就職経験もなく、アイデア1つでマッシュアップによるビジネスを起こし、1期目からの黒字化。これまでの結果では、萩原さんのマッシュアップを活用したビジネスの視点が正しかったと言えるだろう。少なくとも、マッシュアップサイトで収益を上げる成功例の1つを見せてくれた。今後もクネヒトは、最終的な目標のために必要なサービスを追加していく予定だ。萩原さんが言うには、最終目標が形になるのは2011年。マッシュアップサイトの完成形を見せてくれるのか、はたまた、マッシュアップという枠から出た新たな形を提供してくれるのか、非常に楽しみだ。
- ■取材協力
- 株式会社クネヒト
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