月刊アスキー2007年12月号
融資といえば、これまで銀行や消費者金融といった金融機関の独占的なビジネス領域だったが、近い将来、これが大きく変わるかもしれない。米国や英国、そしてアジアの一部で、個人がSNSを利用してお金の貸し借りをする「ソーシャルレンディング」が急速に広がりつつあるからだ。
例えば、米国では少額の事業性融資が特徴のPROSPERや、独自開発のエンジンで貸し手と借り手をつなぐLending Club、英国では消費者ローンの借換需要をターゲットにしているZopaというサイトが人気を集めている。
サイト自体はSNSの形をとり、ネット上で貸したい人と借りたい人をマッチングする。昔から日本にある地域ごとの相互扶助組織の「無尽」や「頼母子講」のWeb2.0版とイメージしてもよいだろう。ただし、無尽などと違うのは、サイト側が融資成立時に借り手と貸し手の両方から手数料を徴収するところだ。
では、PROSPERの取引方法を見てみよう。サイトへの参加費は無料だが、借り手は信用調査会社による与信審査が必要になる。審査後、信用力をAA(平均貸倒率は0.2%)~HR(同13.9%)と7段階に分類される。
例えば、グレードがAAの参加者が事業資金として年10%で150万円を借りたい場合、貸し手は融資したい金額に加え、貸倒率の0.2%とサイトに支払う手数料0.7%を上乗せした10.9%の金利を提示する。そこでお互いが納得すれば融資が実行される。
そのような金額や金利の提示をSNSで行い、参加者の中から「10万円貸します」とか、「3万円ならOK」というように、出資希望者が複数現れるのだ。
参加者はどのような人たちなのだろうか。
まず、借り手は銀行との取引が困難な人や、金融機関に不満を持つ人たちが圧倒的に多い。一方、貸し手はコミュニティーの一員として困った人を助けたい人や、社会貢献をしたいと考えている人たちだ。中には、ハイリスク・ハイリターンによってお金を稼ぎたいというマネーゲーム感覚で参加する人もいる。
また、サイト側は単にお金の貸し借りをつなぐだけでなく、借り手に虚偽の報告がないかを調べたり、融資のキャンセルをすることで、詐欺などのトラブルを防ぐ。 実際にPROSPERに登録し、貸し手側の体験をしたという電通国際情報サービス金融ソリューション事業部の鈴木淳一さんは「日本では法的規制もあり、同様のビジネスモデルで新規参入は難しい。ただ、賢い消費者が増えるなかで、消費者ニーズを掘り起すきっかけにもなる」と語る。