月刊アスキー 2007年12月号掲載記事
次世代光ディスクの主導権争いが、いよいよ本格化してきた。
Blu-ray(ブルーレイ)陣営では、ソニーが「今後、日本国内市場向けの新製品は、すべてブルーレイに切り替える」(ソニー・井原勝美代表執行役副社長)と発言。松下電器産業も、「ブルーレイDIGAの新製品は、フルハイビジョンの大衆化をもたらす商品になる」(松下電器パナソニックマーケティング本部の西口史郎本部長)と意気込み、ラインナップを拡張した。
一方、HD DVD陣営の東芝は、アジア最大の家電展示会CEATECに新たなHD DVDレコーダー製品群を参考出品。年末商戦向けの製品投入に弾みをつける。また、米パラマウント・ピクチャーズがHD DVDの排他的支持を表明し、HD DVD陣営にはとって大きな追い風となった。こうしたなか、その前哨戦ともいえる激しい戦いが北米で繰り広げられていた。
北米は、レコーダーの需要よりも、プレーヤーの需要の方が旺盛という点で日本とは環境が異なる。だが、その分、低価格化が激しく、両陣営の戦いも熾烈だ。
東芝は、一部の調査会社の試算で700ドル以上のコストがかかっているとされるHD DVDプレーヤーを、499ドルの戦略的価格設定で投入したのに続き、今年4月にはそれを399ドルに引き下げ、さらにその翌月には、期間限定としながらも299ドルで販売。今年夏の新製品では、発売時点から299ドルとしたのに加え、一部店舗では50ドルの割引キャンペーンを実施するという異例の措置をとった。さらに、購入者を対象に、3つのスタジオから発売されている15種類のHD DVDソフトのなかから、好きなタイトルを5枚プレゼントするという大盤振る舞いだ。
これに対するブルーレイ陣営も黙ってはいない。ソニーは499ドルのブルーレイプレーヤーを、松下電器も599ドルのブルーレイプレーヤーを投入。ソニー、松下をはじめとする6社が共同で、各社のいずれかのブルーレイプレーヤーを購入すると、7社の映画会社から発売されている21タイトルのコンテンツのなかから、5タイトルをプレゼントするキャンペーンで対抗した。
ここまでの熾烈な競争が、日本に飛び火する可能性は、いまのところは低い。だが、東芝の一部関係者が「価格戦略も辞さない」と、国内でも徹底抗戦に挑む姿勢を見せているだけに、それに対するブルーレイ陣営の動きも絡めて、予断を許さない。本番を迎える年末商戦に向けて、これからどんな戦いが繰り広げられるかが注目される。