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林信行のマイクロトレンド 第14回

ネットに衝撃を与えた「インパクト・ゼロ」な生き方

2007年10月19日 20時24分更新

文● 林信行(ITジャーナリスト)

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 「No Impact Man」というブログを知っているだろうか。9月に開催した「Earth Coding」というイベントでベンチャーキャピタリストの伊藤穰一氏が紹介していたのだが、No Impactといいながら、世界中のマスコミに大きなインパクトを与えている。

No Impact Man

「No Impact Man」のウェブサイト

 No Impact Manの正体は、ニューヨーク在住のコリン・ビーベンという人物。

 彼は2007年初めから1年の予定で「環境に影響を与えない生き方」を模索し始めた。2月からその様子を先のブログで実況中継している。



家族を巻き込んでの実験


 人間は生きている以上、環境に影響を与えないことはありえない。そこで彼が実践した考え方は、環境に悪い影響を与えたら、その分、環境にいい影響を与えて、トータルでの影響(インパクト)をゼロにしようという考え方だ。

 最初は、カゴを持って買い物に出かけ、リサイクル品しか使わない、ということから始めた。

 続けて、食べ物は近くの市場で産地直送品を購入する、二酸化炭素を排出する車や公共交通機関の利用をやめて、歩きや自転車を利用するといったことを実践し始めた。次の段階では、電気の受給を止め、食器洗い機はもちろん、冷蔵庫や洗濯機もない生活を送るようになる。その後、1日に使う水の量を減らすことにも挑んでいる。

 しかも、これは1人での挑戦ではなく、奥さんと小さな娘さんを巻き込んでの実験だ。

 家族は本格的な実験にとりかかる前に1週間のテストを行なった。夜中、うだるような暑さの中で目を覚まし、子供をその暑さにさらしていいのか考えてしまったことや、夫婦共働きで忙しいのに、娘を保育園まで歩いてつれていく時間をどうやって捻出するかに頭を悩ませたことなど、最初はいろいろと問題が直面した。

 しかし、しばらく活動を続けることで歩くことが好きになり、テレビのない生活をすることで、娘と話す時間も長くなり、家族の愛情も深まったという心境の変化があったという。



大手マスコミも注目


 日に日に環境に対するインパクトを減らし続けているNo Impact Manだが、反対に彼が世界に与えるインパクトはどんどん広まっている。ABCやNBC、The New York Timesといった米国のメディアはもちろん、BBCなど米国外のメディアでも彼の活動をとりあげるところが増えてきた。

 彼の活動はとても簡単に真似できるものではないが、彼の活動をブログで読むことで、改めて今日の行き過ぎた消費社会を客観的に認めることもできる。そして何より、「自分でもこれならできそう」という環境に配慮するためのヒントも得られるはずだ。

 彼はノーベル賞は受賞していないが、ブログを通して人々の生活にインパクトを与えた人を紹介している「LifeRemix」の名誉メンバーになっている。


(次ページに続く)

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