大魔王ジョロキアとの闘い
試食ルームを出ると、デビルメイドがバーのカウンターに座れと促す。
カウンターには、世界一辛いトウガラシ、ジョロキアの粉末と、それを少量の水で溶いた、パーティ会場特製のドリンクがあった。このジョロキア、インド北部のアッサム地方が産地。日本には輸入販売されていないので、東ハトが独自で輸入しているという。暴君の暴走特急で運んでいるのか、大魔王の魔力の成せるワザなのか?
まず、編集Kがジョロキア・ドリンクを口にする。しかし、少量を口に含んだだけでひどく咳き込んだ。またもやハバネロが仕込んだワナに引っかかってしまった。
むせるKを尻目に、ライターMはすまし顔でジョロキア・ドリンクをほぼイッキ飲み。もともと辛さに対する強さがあるのか?はたまたすでに暴君と大魔王の術中にはまり、舌が麻痺してしまったのか?
とそのとき、編集Kの隣にこのパーティのオーナーである暴君ハバネロがドッキリ登場!! 全身タイツのその姿は、まさにド変態ィィィィ!!!
世界一辛いトウガラシはハンパじゃなかった
先ほど大魔王ジョロキアをイッキ飲みしたライターMは、暴君登場に際し満足なリアクションをとる力がなくなっていた……。
「辛っ、苛烈う――!!」
そう、食道から流れ込んだ大魔王ジョロキアドリンクが、煮えたぎった鉛のように胃の中で暴れ始めたのだ。
カウンターのバーテンに「水ください」というM。しかしバーテンはカウンター上にあった注意書きを指差す。
「水は用意しておりません 体調が悪い方は 係りまでご相談ください」
「バーテンまでドS野郎なのかああ!! チクショー!」
腹がものすごくアツくなって重いっ。ヤバイ……と内心あせるMは、カウンターの隣に仏頂面で控えていたドクター&ナースに水をせがむ。
「本当に飲むの?」
とこれまたドS発言のナース。なんとか懇願し、ペットボトルに入った水をもらうM。
ところが、度重なるドS攻撃に、その脳裏には「もしや、この水も激辛なのでは……」という疑念がよぎる。ペットボトルに入ったクリアな水もドス赤いトウガラシ色に見えてきた。
「悶絶状態が続くならばこの水が激辛でも同じこと」と、今度はペットボトルの水をイッキ飲み。幸い水は正真正銘の水だった。
と安心するのもつかの間、「あー、腹がいてえ、さっきよりものすごく痛くなってきた!」
実はこの水が逆効果。ジョロキアの粉が腹の中でシェイクされまくる!
「すっ、すいませんトイレどこですかああー?」と絶叫するM。
ペットボトルの水を片手にあわててトイレに駆け込む。しばし時間が経過したあと、汗びっしょりの姿でフラフラになって出てきた。大魔王の悪事を水に流したのか、流さなかったのか。少し落ち着いた様子。
しかし、「体が、手足がしびれるうーっ。お水もう一本ください」。水を得た大魔王は、体の中に隅々まで入り込み、神経を蝕み始めたのか。Mの両手がプルプル震えているではないか……。
見かねたナースが気遣い、ペットボトルを持ってくる。さっきまでのドSな態度とは打って変わって「牛乳飲んで、砂糖なめるといいみたいですよ」と砂糖まで持ち出す始末。
激辛から激甘へのシフトで、なんとかMの体内の大魔王は静まり返った。
……気付くと、あまりの醜態に発表会スタッフがドン引き。パーティ会場も静まり返っていたっ!!
ちなみに、同行した編集Kは、悶絶するMを尻目に、関係者にしっかり取材していた。
取材後のカフェにて
Kは、ガムシロをイッキ飲みしそうなMにこう言った。
「Mさん、今日はメディアの人やブロガーの方々がたくさん来たみたいですけど、 あんなに悶絶してヤバかったのはMさんだけだったみたいっすよ(笑)。 あの苦しんでる姿、写真撮りたかったっすけど、人としてまずいかなと思って撮りませんでしたよ」
そしてMは「……いや、撮ってもらえばよかったな。次回からはよろしく!」
この、変態ドM野郎がっ!(ハバネロの声)