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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第7回

日本の著作権はどう変わる──「6つの論点」のまとめ

2007年10月17日 18時00分更新

文● 編集部、語り●津田大介(ITジャーナリスト)

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非親告罪化は先送りされた


── まず「著作権法違反の非親告罪化」についてお聞きします。今の著作権法では「親告罪」を採用していて、著作者側が告訴しないと、著作権を侵害しても罪になりませんが、この状況は変わりそうでしょうか?

津田 色々議論はありましたが、今回の中間報告では非親告罪化が「先送り」になりました。この問題に関しては、法制問題小委員会の主査を務める東京大学の中山信弘教授がとても分かりやすい意見をおっしゃっています。

 要約すると、「『特許法はすでに非親告罪になっているため、著作権法も一緒に』という議論があったが、特許権は国民の一部であるプロに関係してくるもの。一方、著作権法は日本人全体を対象としていて、一般人にも関わってくる。厳密に言えば、国民のすべてが何らかの形で著作権侵害をしたことがあるのではないだろうか」といった主旨の話をされていました。

 非親告罪化は影響を与える範囲が大きいので、僕ももう少し議論を重ねる必要があると思います。現状では、経済界の要請で話が非親告罪化の方向に行きそうなところを中山教授が止めていますが、またいつこの話が再燃するか分かりません。ネットユーザーも注目しておかなければいけない問題でしょう。


── 「ネットークションにおける画像掲載」とは何でしょう?

津田 これは美術品や写真集などをオークションに出品し、その商品の写真をオークションページに掲載する際、著作権者に許可を取ったほうがいいのではという議論ですね。

 この議論では、オークションで「美術品や写真集の画像掲載がOK」となると、例えば写真集を出品するときに全ページ掲載するユーザーがいるかもしれないから規制できないか、という意見も出ていました。

 といっても、どんなお店でもモノを売るためには中身を見せなければ売れませんし、出品する度にいちいち著作権者に許諾をとるのは常識的に考えて難しいだろうということで、出品者の画像掲載を認める方向で行こうという報告になっています。

 この「掲載を認める」という方針は、妥当だと思います。著作権法でいちいち規制するのではなく、権利者が懸念するような問題は「掲載する画像は3点まで」といったようなローカルルールを作って、オークション業者のガイドラインで制限すれば大きな問題にはならないと思います。



「フェアユース」は日本でも実現なるか


── 「検索エンジンにおけるウェブページの収集」は、検索エンジンがウェブページのデータをサーバーに収集する際、文章や画像をキャッシュしたり、インデックスを作ることが著作権侵害に当たらないかという話ですよね?

津田 ええ。米国はフェアユースの範囲で認めていますが、日本は違法か合法かの区別を明確にしないまま、ここまで来てしまいました。だから日本の検索エンジンのサーバーは基本的に国外に置かれていることが多いらしいのですが、これはあまりにネット企業の運用実態とかけ離れています

 実際、ウェブサービスではRSSを活用して、ブログの一部無断転載などを行なうものがたくさん出ていますよね。そこで少なくとも検索エンジンサービスのデータ蓄積については、何らかの権利制限を設けて権利者の許諾権が及ばないようにしようというのがこの議論です。

 これだけネットユーザーに定着した検索エンジンサービスですから、インターネットの利用形態から考えると早く合法化してしまった方がいいに決まってます。できるだけ迅速にこれは進めてもらいたいですね。

フェアユース フェア(公正)に使うなら、著作者に許諾を取らずに著作物の複製などを行なえるという規定。米国の著作権法は認められている。


(次ページに続く)

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