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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第9回

約900人の墓巡礼から「ジョジョ立ち」まで──熱すぎる管理人の「芸術愛」に触れろ!

2007年10月15日 17時23分更新

文● 古田雄介

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バトンを誰かに渡す使命感

 

── 「史上最強の超名作洋画ベスト1000」など、ご自分で鑑賞された作品をランキングで紹介しているコンテンツが多いですよね。これはどういう目的で作っているんですか?

カジポン 紹介する作品に説得力を持たせるためです。プロの映画評論家じゃない僕が普通に映画を語っても、誰も耳を傾けてくれない。そこで「最低でも1000本観た」って根拠を示すわけです。ベスト10だったら「なんだ10本観た中の1位か」ってなるじゃないですか。1000本の中の1位だったら、いち個人の評価だとしても、作品が相当スゴイって伝わる。

ランキング

「芸術に甲乙を付けるのは無意味」としながらも、批評的なランキングではなく、自分の人生に影響を与えたという尺度でランク付けしている。単に表に並べるだけでなく、すべての作品に解説を載せているのがスゴい

 

── なるほど。正直、ちょっと見にくいかなと思ったんですが、そういう意図があったんですね。

カジポン 確かに見にくいですけどね(笑)。でも「この作品はスゴい!」って情熱を伝えるためには必要なんです。

 そもそもランキングを作ったのは、人にいい作品を伝えるのが目的なんです。僕が今、400年前書かれたシェイクスピアの「ハムレット」や「リア王」を読めるのは、膨大な数の「伝えてくれた人」がいるからなんです。ベートーベンも、ベートーベン1人だけじゃ後世に残らない。ベートーベンの曲を「いい」って言う人がたくさんいたから、国境や時代を超えて今に残っているわけです。

 あらゆる芸術作品が残っているのは、その作品に感動した無名の人々の魂のリレーがあったからなんです。

 そのバトンが手元にあるのに、僕で止めるわけにはいかない。ゴッホだのダ・ヴィンチだの手塚先生だの、僕はたくさんのバトンを持っているわけで、早く誰かに渡さないと、バトンの重みで沈んでしまう(笑)。

 

── そこまで使命感を持って、作品を鑑賞している人はあまりいないですよ。

カジポン そのくらい、多くの芸術作品に心を救われてきたんです。だから作者に感謝の意味を込めて、「こんなにスゴイ人がいるんだよ」と伝えたい、ていうか、伝えねばならぬ!って感じです。

 

── ちなみに、ランキングの順位はたまに変えているんですか?

カジポン 頻繁に変えています。若い時にはまだ分からなかった魅力に気づくことで、300位くらい一気に上がるときもありますね。もう、順位を修正しながら懺悔ですよ。「今までよさが分からなくて、本当すいませんでした」って。

 あと、ランキング表はネットで公開する前から、手書きで友達に配っていたんですよ。だから、新作を見るたびに何かを削る作業は昔からあった。それが辛い作業なんですよ。すごくいい映画を観たあとに、帰りの電車で「どれも削りたくない……」って悩むわけです。

── 僕も中学時代に「好きな音楽ベスト100」とか作っていたんですが、完全に自己満足だったので人に見られるのが恥ずかしかったですよ。全然コンセプトが違いますね。勝手にシンパシー感じて、すいません(笑)。

 

(次ページに続く)

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