Adobe MAX 2007は3日に終了したが、米アドビ システムズ社(Adobe Systems)とアドビ システムズ(株)の計らいで、記者はカリフォルニア州にある2つの米国本社を訪ねた。
2つの本社とは、サンノゼ(正しい発音は「サンホゼ」だそうな)のシリコンバレーに構えた3つのビルと、サンフランシスコ市内にある旧マクロメディア本社を指す。2005年12月に合併した両社は、製品ラインナップこそ競合するものが少なくなかったが、社風は大きく異なっている。Macromedia MAXとAdobe MAXを2度ずつ取材した印象から、誤解を恐れずに言うなら、「大学ノリで収益よりも独自性や面白さを追求するマクロメディア」と、「ビジネス性に主眼を置いて製品開発を続けてきたアドビ システムズ」といったところか。
写真で見るアドビ本社――サンノゼ編
社風の違いは、今回訪ねた2つのオフィスにもよく現われている。サンノゼの米アドビ システムズのビルは、ウェスト/イースト/アルマデン(Armaden)という3つの名前で、米アドビ システムズが収益を拡大するたびにスタッフとビルも増えていったというわけだ。現在は4つめのビルを建設予定とのことだが、この3つのビルは上空から見るとアドビ システムズの「A」のロゴ=正三角形を表わしており、その中央にはフルサイズのバスケットボールコートとそれを取り巻くスペースが作られている。余談だが、バスケットボールコートは足への負担を軽減するべく緩衝性の高い素材が用いられ、同じフロア(建物の6階部分に当たる)の屋内には社員向けのトレーニングジムが用意されている。なお、ジムには「ビリーズ ブートキャンプ」はなかった。
ビルは内部に別会社の管理事務所を持ち、中央集中的に電源管理と予備電源システムへの切り替えなどが行なわれている。リアルタイムに消費電力が分かるほか、各部屋/エリアの電灯やエアコンなどのオンオフが、管理事務所からのリモートで制御可能だ。また、省電力のために社員の各部屋には人感センサーが設置されており、出社すると自動的に電気が付き、帰社すると自動的に消灯する。消し忘れを防ぐ工夫とのことだが、開発会社の常として、深夜になっても帰宅しない(できない)社員がどこにいるのか、ビルの外から一目瞭然なのだそうだ。
写真で見るアドビ本社――サンフランシスコ編
一方サンフランシスコのオフィスは、港に荷揚げされたコンテナを鉄道に積み替えるために使われた旧倉庫街のひとつをマクロメディア時代に買い上げ、煉瓦造りの外観や太い柱を使った構造などはそのままに、内部をインテリジェントビルへと一新させた、雰囲気のある3階建ての建造物になっている。
オフィスの目の前には線路が通り、隣接するCaltrain(キャルトレイン、サンフランシスコ市内とサンノゼ方面を結ぶ長距離鉄道で、2階建て列車も走る)の車両基地からは、1日に何度かはポイント切替えのためにディーゼル車が顔を覗かせるという、これまた雰囲気のいい環境となっている。
外観だけでなく、スタッフの座席もずいぶん違う。サンノゼのビルが1人1部屋ずつ個室が割り当てられているのに比べて、サンフランシスコのほうは高さ150cm程度の低いパーティションがあるだけで、特に開発製品や担当部署ごとに壁で仕切るといったことがない。社内には無線LANが行き渡り、自由に使える電源と打ち合わせ用の丸テーブルが至る所にあって、必要があればすぐに会議(ミーティング)を始められるそうだ。
今年のAdobe MAXは、2006年のそれ(合併後初のAdobe MAX)よりも従来のMacromedia MAXに近い雰囲気を感じた。アドビ側からユーザーに新製品や新情報を「提供する」というよりも、新製品や新情報に対するユーザーの「反応を見る」、ユーザーを巻き込んで一緒に製品を作り上げていく「手作り感」のようなものが随所に見られたからだ。
11月1日と2日には東京・お台場のホテル日航東京で、「Adobe MAX Japan 2007」が開催される。日本での開催もそうした暖かみのある内容になることを期待したい。