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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第8回

元シンクタンクの達人が明かす「だまされない統計データの読み方」

2007年10月01日 10時00分更新

文● 古田雄介

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情報を正しく受け取る極意


── ネットが普及して情報が膨れあがりましたが、同時に情報の玉石混合化も進んでいます。統計データにしても、クリック無制限のネットアンケートは恣意的な意見が反映されやすい。普通の人が、そうした問題のあるデータと客観的なデータを見分けるコツはありますか?

本川 それは、よくよく考えるしかないですよ。どうやって取得して、どう分析されているか。ネットのアンケートは確かにバイアスがかかりまくるんですよね。

── とはいえ、毎回、よく考えて読むのはけっこう大変です(笑)

本川 うーん、まあ深刻な問題じゃないから、いい加減なソースが残っているというのはあるでしょう。大事なデータは国がとったりしていますから。まあ、いいんじゃないでしょうかね。分かる人は分かっている程度で(笑)。

── あと、信頼できそうな新聞社の統計データの場合でも、各社で結果が異なることが多いですよね。内閣支持率とか。これは、ジャンルによって、信憑性の高い新聞社を探す出すしかないのでしょうか?

本川 確かに新聞によって差が出ますよね。電話調査にしても会社名を名乗るわけですから、「●●新聞社なら俺は答えない」って人も出てくる。だから、どうしてもバイアスはかかってしまう。

 しかし、情報操作しているわけじゃないから、各紙の平均を見ればいいんです。一紙だけ見るにしても、ひとつの調査の絶対値は信頼性が低いかもしれませんが、過去の結果からの推移は信頼できると思います。複数の新聞紙が同じような統計を出しているわけですから、一紙だけおかしな推移をしていたら、それこそ情報操作が疑われる。

── 一歩引いて、ふかんすると真実が見えてくるわけですね。

本川 まあ、そうです。そんなに日本は情報操作するとか無茶苦茶じゃないから、それで大筋が見えますよね。独裁政権になってマスコミ統制が始まると信用できないですけど、まあ、日本は大丈夫ですよ。



Yahoo! JAPANで大きくアクセスが伸びる


── 社会実情データ図録の「月間アクセスランキング」を見ると、ニートやフリーター、自殺率などが常に上位にありますね。

本川 読者の関心の高さが現れていると思いますが、あの順位だけでは判断できませんね。

 Google検索の上位に引っかかりやすいフレーズがあったり、Yahoo! JAPANに引用されたりすると、アクセス数が跳ね上がりますから。

 僕のサイトは全体で1日1万アクセス程度なんだけど、Yahoo! JAPANのトップニュースに引用されると、それだけで1時間に1万アクセス以上行くんです。最近、TOTOの最高賞金額の記事で、胴元がいくら取るという僕のデータが参照されていて驚きましたね。Yahoo! JAPANはすごいですよ。日本を動かします(笑)。

 あとは、有名なブログサイトに取り上げられると、孫引きするサイトがたくさんできるので、その場合もアクセス数が上がります。

── この人気ランキングがダイレクトに世相を反映しているわけではないと。

本川 人気の推移を見るのは有効かもしれません。ニートやフリーターのページは一時期よりアクセス数が減りましたから。世間の関心が薄くなってきたのかな、と見ることができます。あと、記事のアクセス数が跳ね上がった要因を備考で載せているので、それを読めば少しは有意なデータとして見られるかもしれませんね。

月間アクセスランキング

社会実情データ図録の「月間アクセスランキング」。急上昇したデータは赤文字で表示される。その要因を読みながら見ていくと、世相の一端が見えてくるかもしれない



論議するなら、客観的なデータで


── ちなみに何かの記事に引用される場合は、その記事の裏付けとして使われると思います。そういった思想や意志がくっついてしまうのは、どうお考えになりますか?

本川 まあ、勝手にやってもらえればいいとは思いますよ。データ自体が間違っているわけじゃないですし。先日も、「新聞を読む人が減っている」というデータを出したところ、新聞嫌いの人がこぞって取り上げていました。

 僕はそのデータに「新聞が売れなくなって、情報を伝える仕事の替わりのメディアはどうするんだろう」みたいなコメントを載せたわけですよ。そのコメントを無視して、「ほらみろ新聞はだめだ」ってばかり言っていて、少し残念でしたけど。

 まあ、嘘のデータで議論を始めるより、より客観的なデータで盛り上がってくれたほうがいいですよね。

── 最後に、このサイトの目標を教えてください。

本川 これで生活できるといいですね。会社化すれば、人を雇って英語ページを作ることもできるし。今は、小遣い程度にしかなっていないですけど(笑)。


著者近影

筆者紹介──古田雄介


建設現場と葬儀業を経てデジタル&サブカルライターに転身。デジタルと言いつつ、“古田雄介の週末アキバPick UP!”(ITmedia)など、足で稼ぐ記事が多い。当連載では、大好きなサイトの管理人さんに直接会える喜びを堪能しています。自ブログは“古田雄介のブログ”。


*次回は10月15日掲載予定

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