目標に向かって貪欲に学ぶことで 一歩ずつキャリアアップしていく
今度の転職活動で平松さんは、当時テスト版しかなかったFlashを用いた作品を持参して面接に臨んだ。まだ普及していない新しいソフトウェアにチャレンジすることで、挑戦意欲をアピールしたのだ。その甲斐あって、1999年1月に大手電器メーカーの製品紹介サイトを専門に手がけるWeb制作会社に正社員として入社。全社員がデザイナー3人とディレクターでもある社長の計4人という小規模な会社だが、平松さんは多くの人が利用するWebサイトを作ることに大きな喜びを感じた。
「高級感あふれる製品やかわいらしい製品など、さまざまなテイストの製品を紹介するWebサイトを制作するうちに、自分の引き出しが徐々に増えていきました。当時は仕事の合間に、世界中のWebサイトを見て回ってデザインの参考にしていました。このWeb制作会社で働きながら得たもっとも大きな収穫は、デザイン哲学を学べたこと。デザインとはコンセプトのあるもので、紹介する製品が持つストーリーをデザインに投影することが大切なのだと実感しました」
そんな平松さんは、Web制作会社に入社して半年ほどたった頃、専門学校時代の友人に声をかけられた。フリーのWebデザイナーとして一緒に仕事をしようという誘いだった。平松さんの心は揺れた。正社員として責任ある仕事を任されていたが、ひとつのメーカーの製品サイトだけでなく、他のクライアントとも仕事をして経験を積みたい気持ちも大きかったからだ。そこで、彼女は会社に相談して雇用形態をアルバイトに変えてもらい、フリーランスのWebデザイナーとしての活動を開始。不動産会社や新聞社主催イベントなどさまざまなクライアントのWebサイトを制作するようになった。
「フリーランスという立場でWebサイトを制作するようになってからは、デザイン以外の仕事も請け負いました。クライアントとの打ち合わせから見積もり、制作、納品、ときには更新までに携わることになり、Webサイトを一からすべて作りたいという夢が実現したのでうれしかったですね。また、クライアントと直接やりとりする作業を繰り返すうちに、ディレクション能力を養うこともできたと思います」
Webディレクターもこなすようになった平松さんは、大手不動産会社のWebサイトを制作している際に出会ったシステム開発会社の社長から、一緒に働こうと誘われた。不動産に特化したITソリューション全般をサポートする新事業を立ち上げたいので、Webディレクターとして手伝ってほしいというのだ。1999年当時の不動産業界は、手書きの図面をFAXで送受信して店頭に掲示するという“超アナログ”な環境だった。しかし平松さんは、不動産業にとって物件検索は必要不可欠なので、近い将来に必ずデジタル化されると判断。不動産業界になくてはならないシステムを生み出せるという期待感もあって、この話に乗ることにした。
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