Windows Home Serverのインストールと日本語化
ユーザー自身でWHS搭載サーバーを作る場合、気になるのが必要なハードウェアスペックであろう。WHSが要求するハードウェア要件は以下のとおりであるが、Windows Vistaに比べればかなりローパワーの環境と言える。
- CPU(最小要件/推奨要件 以下同)
- Pentium III-1GHz/Pentium 4かAthlon 64以上
- メモリー
- 512MB/512MB以上
- HDD
- 70GB(システムドライブ)以上/最低2台以上のHDD
- ネットワークカード
- 100Mbps/1Gbps(Gigabit Ethernet)
- DVDドライブ
- 必要
- クライアントPCのOS
- Windows Vista(全エディション)、Windows XP Home/Professional SP2、XP Media Center 2004/2005 SP2
2~3年前のパソコンなら、十分にWHSを動かすことができるだろう。しかしホームサーバーという用途を考えると、24時間動作し続けることになるので、消費電力の高い古いCPUよりも、消費電力の低いCore 2 DuoやPentium Dual-Core、Athlon 64 X2などで構成したほうが、消費電力も小さく冷却ファンも静かですむ。
メモリーは512MBが最低ラインとなっているが、やはりサーバーということを考えると1GB以上は搭載したい。なおWHSは32bit OSのため、4GB以上搭載しても意味がない。グラフィックカードは、動作さえすればどんなものでもOK。最終的には、リモートアクセスでクライアントPCから管理できるので性能は要求されない。お古でもなんでもかまわない。
HDDは1台でも動作はするが、ファイル保護のためのミラーリング機能を考慮すると、最低2台必要だ。容量は任意のものでかまわないが、24時間365日動作させることを考えると、使い古しのHDDよりも新しいHDDの方がいいかもしれない。
WHSのデータドライブはRAID構成ではないので、容量の異なるHDDを適当に追加してもシステム的には問題ない。システムドライブには新しいHDDを使い、データドライブにはお古のHDDを使うという方法もあるだろう。
むしろ強化したいのはネットワークカードだ。WHSではネットワーク上で大量のデータをやり取りするため(特にバックアップ時など)、ぜひGigabit Ethernet対応カードが欲しい。Gigabit Ethernetを導入するためにはクライアントPC側のネットワークカードを変更したり、スイッチングハブも対応品に交換したりと費用がかかる。コスト的には高くなるが、ネットワークカード上のプロセッサーでTCP/IPの処理を行なう高機能なサーバー用Gigabit Ethernet対応カードを使えば、高いパフォーマンスが期待できる。
インストール時の注意点
WHSのインストールは非常に簡単だ。WHSのDVDをPCに入れて起動すれば、自動的にインストールが始まる。大抵のデバイスに関してはドライバーがDVDに入っている。もし、ドライバーが含まれていなかった場合は、インストール途中のドライバーを追加する場面でインストールできる。
大半のマザーボードやネットワークカードは、WHS用のドライバーなど用意していない。それを考慮してWHSでは、Windows Server 2003用のドライバーがあれば、これを使えるようになっている。そもそも、WHSのベースとなっているWindows Server 2003自体がWindows XPがベースであるので、保障はされてはいないがXP用のドライバーが動作する場合もある。
通常Windows Serverでは、インストール時にさまざまな設定を行なわなければならない。しかしWHSのインストール時は、ほとんど何も入力しなくていい。インストール時に入力するのは、サーバー名とプロダクトキーだけだ。サーバー名に標準の「Server」を使うなら、これすら必要ない。サーバーの管理を行なうAdministratorアカウントのパスワードも、インストール後、最初に起動したときに、画面上でパスワード入力を要求されるようになっている。インストール後にはWindows Updateも行なっておこう。
なお、WHSを管理するAdministratorのパスワードは、強度を高めるために“7桁以上の英数字で、大文字、小文字、数字を混在した”ものにしなければならない。一方ユーザー用のパスワードは、パスワードの強度を「Weak」「Medium」「Strong」の3段階から設定できる。StrongはAdministratorと同じルールのパスワードが必要となるが、Mediumでは5桁の英数字となっている。
日本語が使えるように
繰り返しになるが、日本で販売されるWHSは英語版となる。そのためインストール時には、言語とキーボードは「米国(US)」がデフォルトとなっている。インストール時に言語の設定を「日本(Japanese)」に変更できるが、キーボードにはJapaneseがないため、USのままインストールすることになる。
しかし、このままでは日本語のファイル名やフォルダ名、ダイアログ画面などが文字化けしてしまう。キーボードが異なるせいで操作もしにくい。WHSにログインしたら、まずは日本語環境で使うための設定を行なおう。
「My Computer」のプロパティで「Manage」を選択すると、「Computer Management」が表示される。リストから「Device Manager」を選択し、キーボードを日本語キーボード(Japanese)に変更する(英語キー配列のキーボードを使用している場合は変更不要)。
「Control Panel」から、「Regional and Language Option」を選択。「Standards and formats」欄と「Location」欄を「Japan」に変更する。
次に「Languages」タブをクリックして、「Text service and input languages」を「Details」→「Add」→「Input language」と選択。「Keyboard layout/IME」で「Japanese」を追加する。すると、IME Standard 2002がインストールされる。
再び「Regional and Language Option」の「Advanced」タブをクリックして、「Japanese」をセットする。
この設定後に再起動すれば、日本語フォントがインストールされ、日本語表示や日本語入力が行なえるようになる。それ以外には、タイムゾーンの設定を日本に変更したり、時計を合わせる程度だ。
NASに比べるとコスト高
WHSはPCをベースにしてホームサーバーを作りあげる。そのため既存のNAS(多くはLinuxベースだ)と比べると、全体的にコスト高になってしまう。しかし、NASはWHSほど高い拡張性は持たない。NASに複数台のHDDを接続して、容量を拡張することも簡単ではない。また、NASではコストを抑えるため、組み込み機器用CPUが使用されている。そのため低価格のNASでは、ファイルサーバーとしての性能は高くない(逆に言えば、パフォーマンスの高いNASは価格も高い)。
NASと比べた大きな利点のひとつは、クライアントPCのバックアップが簡単に行なえることだろう。クライアントPCのバックアップ機能を実現しているNASもあるが、概してエンタープライズ用途向けで高価だ。低コストでクライアントPCの効率的なバックアップが行なえるWHSは大きなメリットがある。
しかしNASとWHSの本質的な違いは、WHSがWindows Server 2003をベースとしたサーバーOSであるため、いろいろなアプリケーションやデバイスを後から追加できるということにつきるだろう。この特性のおかげで、WHS搭載サーバーは機能を多彩に拡張できる。一般的なNASではこうした拡張性は持たないので、基本的には単なるファイルサーバーでしかない。
実際WHSを使ってみると、バックアップなど便利な機能もあるが、その環境を実現するのにハードウェアとOSでトータル10万円ほどかかると思うと、ちょっと躊躇してしまうのが正直なところだ。現状では、日本で商業的な成功を収めるのは難しい。日本でWHSが普及するためには、米国とは異なるプラスαの機能をどう実現していくかが重要になるだろう。
例えば、WHSのハードに地上デジタル放送チューナーカードを組み込み、クライアントPCで録画した番組が見られるとなれば、ニーズもあるだろう。また、さまざまな家電製品との接続性が保証されれば、DLNAクライアント機能を持つメディアプレーヤーや液晶テレビともリンクできる。現状でも“やればできる”製品は少なくないが、動作保証がなければ、ユーザーは安心して購入できないだろう。PC文化とは違うのだ。
今回リリースされたWHSは英語版であり、マニア向きの製品としか言えない。日本では大手PCメーカーや周辺機器メーカーで手を挙げたところはなく、プレインストールマシンの販売を予定しているのも、現状ではほとんどがショップブランドばかりだ。しかし米国では、米ヒューレット・パッカード社を始めとして、米ゲートウェイ社や仏LaCie社、独Fujitsu Seimens社(欧州でのみ)など複数の企業が、WHS搭載マシンの発売を表明している。やはり日本では、2008年以降リリースと噂される日本語化された「WHS V2」が登場してからが、WHSの本番と言えようか。