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古田雄介の“顔の見えるインターネット” ― 第7回

九龍城で生活、日本で引きこもり、議員になった“飛び地男”

2007年09月17日 08時00分更新

文● 古田雄介

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飛び地との出会いは中学生のころ


── 飛び地に興味を持ったのは、いつ頃ですか?

吉田 最初に海外へ行った中学2年のときです。親の会社の旅行に参加して、香港とマカオに行きました。当時、中国は文化大革命が終わったばかりで、“竹のカーテン”と言われるような社会主義の謎の国でした。

吉田一郎氏 吉田一郎氏。現在は埼玉県さいたま市の市議会議員を務める。香港ポストでは『香港通信』と『香港ビジネスポスト』の編集長を歴任。著書に『世界飛び地大全』『国マニア』『九龍城探訪』などがある

 イギリスの植民地だった香港と、その左下にあるポルトガル領だったマカオは、その中国に囲まれた箱庭みたいな小さな世界だったんです。そのときに「この人達は一生こんなところで過ごすんだろうか」と思い、“別の世界に四方を囲まれた場所”という共通点から、飛び地にも興味を持つようになりました。


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 飛び地にハマったのは、その後、地図を見るようになってからです。高校一年のときにはヨーロッパ周辺を一人旅して、スペイン領のセウタのほか、バチカン市国やモナコといった小国も回りました。

 セウタは、周囲は砂漠で、典型的なアラブ人の世界なんだけど、あの飛び地だけヨーロッパの町並みになってて、そのギャップが面白かったですね。これまで30ヵ国ぐらい回りましたが、ほとんどが学生時代までの旅行です。


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緊張感がある飛び地のほうが興味深い


── 色々な飛び地を訪れたと思いますが、その中でも、やはり興味深さは場所によって違ってくるものですか?

吉田 やっぱり僕は、ほのぼのして和気あいあいとした平和な飛び地は、あんまり興味が沸かないんです。鉄条網で囲まれてて、それを越えたら銃殺されかねないようなピリピリした感じの、周囲と緊張関係がある飛び地のほうが興味深い。

 西ヨーロッパにもたくさん飛び地がありますが、パスポートもなく行き来できるところが多くて、全然不便がないわけですよ。不便がない代わりに、飛び地だからっていいこともない。

 緊張状態の飛び地には闇ができます。密輸の拠点になったりとか、闇取引で潤ったりするんですよ。九龍城砦もその例に漏れず、中国や英国の法律が適用されない替わりに、違法営業が盛んに行われていました。



飛び地と知らずに九龍城砦に住む


── 吉田さんは学生時代に香港に留学されたとき、九龍城砦に住んでいましたよね。そんな日本人は滅多にいないと思うのですが、やはり九龍城砦が飛び地だったから選んだのですか?

吉田 いや、あれはわざとじゃないんです。香港は東京よりも家賃が高いので、不動産屋さんを回って安い物件を探していたんです。すると、一件だけ異常に安いところがあり、それが九龍城砦だったと。

 その時は九龍城砦が飛び地とも知らず、住んでから色々調べて事情を知りました。最初は単なるスラム街だと思い、昼と夜と深夜の3回、恐る恐る物件の近くを見に行きましたよ。そうしたら昼は女子高生が歩いたし、夜でも子供が遊んでいた。だから、「まぁ、別に平気だろ」と思って住み始めたんです。


── 暮らし辛くなかったですか?

吉田 暮らし辛かったですよ、本当に。臭いしうるさいし、ゴミだらけだし。水道は通っているんですが、もちろん公営ではなく、水道屋という人達が勝手に地下水を汲み上げて営業しているだけという。あと、警察によく職務質問されました


── 無法地帯なのに(笑)

吉田 そう。なのに香港の警官が違法で中国管轄の九龍城砦に入ってくるんです(笑)。治安が悪い地域だったので、こっそりと私服警官がいっぱい入っていたんですよ。中国もそれを黙認していました。

 それで、道歩いていると私服警官にいきなり取り押さえられるんです。香港人はIDカードっていう身分証明書を常時携帯しないといけないんですが、それを見せろと。持ってなかったら捕まって、香港人なら罰金です。中国からの不法入居者だったら強制送還。僕は日本人っていってもなかなか信じてもらえず、顔を覚えてもらえるまで、毎日のように調べられました。


── 図らずに飛び地での生活を経験したわけですね(笑)。その後、香港の新聞社である香港ポストに就職されて、さまざまな雑誌を手がけられましたね。

吉田 はい。10年働いたあと、1998年の末にリストラで会社を辞めて、1年間香港の自宅で引きこもっていました。


(次ページに続く)

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