キヤノン(株)のレンズ一体型デジタルカメララインナップのハイエンド機にあたる“PowerShot G”シリーズの最新モデルにあたるのが『PowerShot G9』だ。従来機『同 G7』(1000万画素、2006年9月発表、関連記事)から有効1210万画素へと向上し、新たに3インチ大型液晶の搭載、RAW撮影機能など細かく機能強化が図られている。
ボディーデザインはG7とほとんど同様で、本体サイズも変わりなく、コンバージョンレンズ取り付け用リングがあるとはいえ前面がほぼフラットになるまで沈胴する光学6倍ズームレンズなど、ハイエンド機として見ると驚くほどコンパクトに収まっている。背面の液晶ディスプレーが大型化しているため、電子ダイヤル(コントローラーホイール)付きカーソル部がある液晶パネルと本体右側面の間隔は狭まっているものの、撮影操作時に指が触れてダイヤルが不意に回ってしまうということはない。
背面で大きな存在感を占める3インチ液晶ディスプレーは『IXY DIGITAL 10』(関連記事)などにも採用された“クリアライブ液晶”で、広視野角や反射光の低減により屋外でも見やすく、特に防汚コートのおかげで手の脂(指紋)による視認性の低下もほとんどない。光学ファインダーを用いたときに顔(鼻の頭)の脂が付いてしまうとさすがに脂が目立ってしまったが、こうした脂もクロスでさっとぬぐえば、ほとんど目立たなくなる。大型液晶パネルの採用によっていっそう液晶画面を触りやすくなったので、防汚コートの存在は大きいと言えよう。
ボディー外観上の変更点は液晶パネルの大型化程度だが、撮影機能は細かくブラッシュアップされている。例えば、顔優先AFには選択・追尾機能が付き、複数の顔から任意の顔を選択・固定ができるようになった。9点AiAF機能は従来機と同様だが、9点の枠さらに細かく指定でき、AF枠を画面内で移動させる機能が付いた。通常は画面に大きく表示されるAF点の9つの枠が1/4程度に小さくなり、ダイヤルを回せば枠そのものが画面内で移動、シャッターを半押しにすればその枠内から合焦点を選んで合った部分だけの枠が残る。AF点を任意の点で指定する“アクティブフレームコントロール”(小さなAF枠をカーソルで画面内を移動して指定する)機能もあるが、フォーカスさせる被写体をおおまかに選んでAF動作させたいときは9点AiAF枠の移動のほうがすばやく行える。
このほか、RAW記録に対応し、付属ソフト『Zoom Browser』での表示や『RAW Image Task』によるRAW画像の現像も可能となった。カメラ側ではRAW画像とJPEG画像の同時記録も可能なので、エクスプローラなどで閲覧したときに何を撮ったデータなのか分からなくなることも避けられる。また、RAW画像はJPEGに比べてファイルサイズが大きい(G9の最高解像度4000×3000ドットで、JPEGは4MB弱~5MB強なのに対してRAWでは13MB強となる)こともあって記録時間が長くなりやすいのが難点だが、カメラの画像処理の高速化により、RAW撮影でもタイムラグが約2.8秒と、それほど待たされる感覚はない。RAW現像では露出、ホワイトバランス、コントラスト、色の濃さ、トーンカーブ調整などのほか、任意の色域だけ色あいや明るさを変更する“マイカラー”と、10段階のノイズ制御が行なえる。
また、細かな部分にも手が加えられている。従来からマニュアル露出などで絞り/シャッター速度を調整すると、ダイヤルの回転とともに画面上で数値バーが動くというアニメーション表示がなされていたが、さらにISO感度ダイヤルでも同じような表示が追加された。上面にあるISO感度ダイヤルは専用の目盛りがあるダイヤルなので一見すると不要に思えるアニメーション機能だが、G7では液晶画面を見ながら各種設定を行なっているときにISO感度も変更しようとすると、カメラの向きを変えて上面を見る必要があった。これに対してG9では、背面を向けたままでも(フレーミングを変えることなく)ISO感度を容易に設定できるようになったわけだ。さらに高速シャッターとスローシャッターで異なるシャッター音にできるほか、再生時の撮影情報がより詳細になるなど、撮影そのものの機能に加えて細かな操作上の改良点も多い。