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中国IT小話――@命名で考える中国文字コード事情

2007年08月21日 17時46分更新

文● 山谷剛史

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やっぱり豊富だった中国の漢字フォント数


 中国に存在する漢字は8万5000文字と膨大だが、著名な辞書『中華大字典』『中文大辞典』『康熙字典』でも掲載字数はいずれも5万字弱である。日本の状況を考えると、すべての文字を文字コードに登録することは不可能に思えるのだが、中国の事情はどうなっているのだろうか。

 その答えを知るために、まず中国の文字コードについてさらっと紹介したい。

 日本の利用者にも知られているのは“GB 2312”と“GB 18030”だろう。前者は1981年に策定された、正式には“信息交換用漢字編碼字符集・基本集”という規格で“GB0”とも呼ばれている。含まれる漢字数は3755文字の1級漢字と3008文字の2級漢字の計6763文字。加えてラテン文字や日本のひらがなカタカナなど682文字も含まれる。この文字数でも文章などの処理には充分だったが、古い漢字や主に人名など固有名詞向けの文字では不十分だった。

 そこで後者のGB 18030が登場した。これは2000年に国家標準となった文字コードで、2万7484字の漢字のほか、少数民族の文字であるチベット文字、モンゴル文字、ウイグル文字などを含んでいる。GB 2312とGB 18030の間に1993年に作られた“GB 13000”という文字コードもある。戸籍係に質問した当時のニュースを見ると「これで漢字に関する問題はなくなる」とされていた。現在では政務における名前に関する問題はそうそうないのではないかと思われる。



「ない漢字は作る」が、中国流


 もっとも政務では問題はないとしても、ビジネスシーンや個人的な用途で固有名詞を入力する際に、問題が発生することはしばしばある。

 例えば、筆者の名前“山谷剛史”の“剛”の文字は中国で一般的に用いられている簡体字では違う文字を使う。

 ここで仮に筆者が中国で名刺を作ろうと思ったとする。普通に考えると「できないよ」と突っ返されてしまいそうだが、中国の名刺店では仕事をこなしてしまうのだ! 今まで何回もその安さ(100枚で60円!)に注目して名刺をオーダーした経験があるが、断られたことは一度もなかった。

個人商店サイズの名刺店

こんな個人商店サイズの店でも名刺印刷など各種印刷のサービスを行なっている

 これはなぜか? 「日本語のフォントを入れているんだろう」――いや、名刺屋で日本語のフォントで入力する人はいない。なんせ日本のIMEでの入力方法が分からないのだから。

 おそらく中国語簡体字で利用したフォントに似た“繁体字”(台湾や香港などで用いられている伝統的な字体)のフォントを利用するか、漢字をグラフィックデータとして処理し、それぞれのパーツを組み合わせて、新しい文字を作っているのだろう。例えば、剛の字であれば、岡の字の幅を縮めて、ヘンとして使う。このいずれかの方法で、問題を対処するのだ。

作成してもらった名刺

名刺屋で作成してもらった名刺

 小さな個人経営の名刺店でも拒まれたことはないのだから、個人個人が文字コードにない文字を作成するスキルを当たり前のように身に付けているのだろう。中国人の中には珍しい漢字を名前に持つ人がいるが、サイトで事例を調べてみると、皆やはり同じ方法で対処しているようだ。

山谷剛史(やまやたけし)

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。

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