政治の世界に“検索力”を!
現在、インターネットで公開されている政治関連の情報は少ないわけではない。しかし、残念ながら、現状では単なる情報の羅列で、まともに使えるものではないのだ。
日本の政治には、もっと“検索力”が必要なのではないだろうか?
ボクたちの学生時代であれば、図書館に行って百科事典や関連図書をヒモとかなければ得られなかった知識でも、今やウェブブラウザーの検索バーにたった数文字を打ち込むだけで0.05秒後に表われる。
さらに興味にそってリンクをたどり、関連情報を知ることだって可能だ。調べることの労力が減ったことで、得た情報をどう使うか考えることに時間を割けるようになり、生産価値は大きく向上している。
たとえローマ字入力を覚えたての小学生であっても、教科書や参考書以上の情報がインターネットから得られる。複数の教科を教える学校の先生よりも、時間とネット力を活かして、知識を貪欲にむさぼり集める小学生の方が知識で勝る時代になったのだ。先生は知識力を誇るよりも、学習方法をアドバイスする立場へと変わりつつある。
インターネットの登場は、すでに技術やデバイスの領域を超越し、人々の学びの経験や学習体験にまで深く影響を与えようとしている。
ネットに “はてな国会”や“ニコニコ国会”を
政治の世界も今までの閉鎖的で特別な世界ではなく、もっと開かれた世界であるべきだと感じるようになった。もしかすると、選挙で選ばれた国民の代表だけが政治を行なうというのも、近い将来は“国民が直接、ネットを介して政治に参加する”ということも夢でないような気がしているくらいだ。
そこで重要になるのが、“検索力”だ。現在、政府の情報については膨大な資料が公開されているが、大半がデータを羅列しただけで、情報の見せ方や探し方などについて何もルールが定められていない。
「すべて公開しているので、利用者が必要に応じて調べればいい」という、いわば“野ざらし”のような状態だ。関連する情報について各省庁で連携させるといった工夫もなし。“タテ割り行政”がそのままネットにも持ち込まれている。
さらにサービスの質が向上しないのは、受発注に対して質的な競争がなされていないからだろう。実際、政府系のサイトに触れてみると、データベース設計会社は仕様を満たすことだけを目的としていて、ユーザーインタフェース(UI)の使い勝手などをまったく考えていないのではないかと疑ってしまうくらいだ。
総務省の“統計データ・ポータルサイト”や国立国会図書館の“国会会議録検索システム”では、検索システムは提供すれど、検索したい人々の気持ちをわかっていない設計になっている。
こういったデータベースのAPIを民間に公開することで、興味のある企業やユーザーが自分のサイト/サービスに取り込んで、統計データ情報や国会議員の発言集などを分かりやすいかたちで提供してくれるだろう。
“はてな国会”や“Google Government”、“ニコニコ国会”といったサービスはすぐにでも登場するはず。これらのファクトデータをもとに、今何が起きているのかを、マッシュアップを通じて、国民の誰もが利用できるような形態にすることが、ここまで税金を投じて作られたシステムのせめてもの浄財となることだろう。
筆者紹介─神田敏晶
KandaNewsNetwork,Inc.代表取締役、ビデオジャーナリスト。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局“KandaNewsNetwork”を運営開始。現在、impress.TVキャスター、早稲田大学非常勤講師、デジタルハリウッド特別講師。2007年、参議院議員選挙の東京選挙区に無所属で出馬し、1万1200票で落選。