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ビデオジャーナリスト・神田敏晶氏が見た参議院選挙

インターネットだけで選挙は戦えるのか (後編)

2007年08月28日 22時34分更新

文● 神田敏晶(ビデオジャーナリスト)

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 先の2007年参議院選挙に出馬した、ビデオジャーナリストの神田敏晶氏。前編に続く後編では、神田氏が描く政治とインターネットの未来像について語ってもらう。

神田敏晶氏

選挙演説をする神田敏晶氏



マスメディアの“世論”に主導される政治


 国政選挙が迫ると、国会議員にとっては「とても国会どころではない」というのが本音だろう。一番気になるところが、世の中で主流になっている意見“世論”である。

 それでは、世論はどのように形成されるのだろうか? 一般の人にとって、政党や政治家から直接情報を与えられることは限りなく少ない、というか皆無に近いはずだ。

 ほとんど場合、世論はテレビや新聞を元に作られている。つまり、記者クラブや政治記者のぶらさがりによって得られた情報、カメラの前での取材によって報道されたニュースが、一般人の意見を導いてきた。大メディアはその取り上げ方ひとつで大きく日本の社会さえ変えてしまう力を持っているのだ。

 振り返ってみれば、2004年4月には管直人・元民主党代表が、“だんご三兄弟”をレトリックとした“未納三兄弟”なる鮮明なキャッチフレーズを用いて、メディアを取り込みながら年金未納問題を指摘した。しかし、自身の年金未払いが発覚し、党代表を辞任するという墓穴を掘っている(後に未納ではないと判明)。

 一方、今夏の衆議院選挙は与野党逆転という結果に終わったが、その原因のひとつが、民主党の長妻昭・衆議院議員が明らかにした、社会保険庁の年金記録問題だと言われている。また、メディアが“世論調査”として、選挙前に「自公、逆風止まらず」という情報を開示した影響も少なからず大きいだろう。

 仮にこの年金記録問題が未納問題の前に発覚していたとしたら、恐らく先の未納問題は、社会保険庁に責任が転嫁されていただろう。そのとき、メディアが今夏の選挙前のように「自公、逆風止まらず」という世論を報じたなら、もしかすると2005年の衆議院選で民主党は圧勝し、内閣さえ変わっていた可能性さえもある。



マスメディアを動かすネットという存在


 ところが近年、そうした状況が徐々に変わり始めてきた。民衆のブログパワーである。

 例えば昔は、大臣が地方演説で失言をしても、複数のメディアが長期間にわたって取り上げなければ話題ならなかった。しかし、今ではブログや掲示板によって些細な比喩なども詳細に取り上げられて、半永久的に晒されてしまう。さらに、こうした些細な“差異”を、メディアが「ネットで話題になっている」と取り上げることすらある。

 最近ではメディアも、ありきたりの発表や声明では視聴率や購読料をキープしにくい状況となり、常にスクープやスキャンダルといった数字のとれるネタを優先して取り上げる体質となっている。事実による報告よりも、センセーショナリズムを売り物とする“イエロージャーナリズム”と化している状態だ。

 メディアもときとして誤報やねつ造を犯すことがある。インターネットは、そうした過ちの抑止力としても一役買っており、テレビや新聞で風化しつつある話も“ねつ造番組”などで検索さえすればいくつも登場する。

 今後はネットを活用した選挙行動も顕著になっていくことだろう。誰もが、政治に関するトピックを過去のデータと比較しながら検討し、自分の意見を託せる候補者を見つけだす時代へと向かうのだ。

 さらに、ネット上にもっと情報が公開されることによって、その場のトピックや話題や雰囲気だけで政局が左右されるのではなく、本来の政策やマニフェストの実現度などを検証して、その上で自分の判断を行なえるようになる。そうした未来を実現する上で、“検索力”が欠かせない。


(次ページに続く)

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