老若男女を問わず、ホームユーザーを広く狙ったソニー(株)のノートパソコン“VAIO type F”シリーズは、15.4インチ液晶ディスプレーを備えたホームノートとしては薄さと、角を丸く落としたソフトなデザインのボディーを備えているのが外見上の特徴であった。製品価格を意識して、ハードウェアスペックも尖ったところのない、オーソドックスなマシンが中心だった。
しかし、今夏の新製品で新たに登場した新type F、通称“FZシリーズ”は、従来のイメージをまったく塗り替えるような尖ったマシンに変貌した。新しい魅力を備えたFZシリーズについて、店頭販売モデルの最上位機種『VGN-FZ70B』の写真を中心に見てみたい。
金属板のようなソリッド感を持つボディー
まず外見だが、写真で見てのとおり旧来のモデルとはまったく異なり、フラット感を重視した形状となっている。エッジの丸かった従来機種とは異なり、角をそのまま残すことで、よりフラットさを強調している。外板のシルバーのカラーリングと相まって、まるで研磨された薄い金属プレートのような、“硬質”“ソリッド”といった印象を受ける。
ディスプレー部を開くと、その印象はより強まる。本体側はキーボード上端から手前までがマットなブラック。キーボード上端から液晶ディスプレーのヒンジまでは、ヘアライン加工を施して金属の質感を強調したアルミ素材によるシルバーとなっている。いかにも“硬質”で“高性能”そうな、男性好みなデザインと言えよう。また、シルバーの部分には後述するBD再生ソフトやメディアプレーヤーソフトを操作するための“AVコントロール”と称する円形のボタンが配置されていて、デザイン上のアクセントにもなっている。厚さは24.9~34.5mmと、同クラスの液晶ディスプレーを備えるノートパソコンと比較してもやや薄い。
搭載する液晶ディスプレーのパネルは、15.4インチワイドサイズ、解像度1280×800ドットである。今日では液晶パネル周囲の額縁が非常に狭いノートパソコンが多いためか、見慣れた15.4インチワイドパネルよりも大きく感じることもある。パネルは色再現性の高さを特徴とする“クリアブラック液晶(ピュアカラー90)”を採用している。このパネルは同社の液晶テレビ“ブラビア”でも採用されている“広色域バックライト技術”を採用することで、色純度はNTSC比で90%と、75%程度かそれ以下が一般的なノートパソコン用液晶ディスプレーよりも映像表現に秀でたディスプレーとなっている。
内蔵BDドライブとGPUによるBD再生
その色再現性に優れたディスプレーを生かすのが、FZ70Bが内蔵する記録型Blu-rayディスク(BD)ドライブである。このドライブとプレインストールソフトの『WinDVD BD for VAIO』によって、BD/DVDソフトの再生が可能となっている。また、内蔵グラフィックスチップ(GPU)として『GeForce 8400M GT』を搭載。BDの高品位映像のデコードの一部をGPU上で行なうことにより、CPUだけでは困難な滑らかなHD映像の再生を実現している(余談だが、同ソフト上でGPUによるハードウェアアクセラレーションをオフにしてみたところ、再生自体は可能だったが、MPEG-4 AVCの映像では常時コマ落ち状態であった)。
映像に関連した特徴のひとつに、本体左側面に装備されたHDMI出力端子の存在も挙げられる。従来、ノートパソコンが本体に備える映像出力は、アナログRGB出力(ミニD-sub 15ピン)かSビデオ出力が一般的だ。デスクトップパソコンでは一般的になったデジタル映像出力端子であるDVI出力は、コネクターのサイズ自体が大きいこともあってか、ノートパソコンが搭載するケースはまれである。FZ70BはアナログRGB出力とSビデオ出力の2つを備えたうえで、デジタル映像出力であるHDMI出力も標準搭載している。
これにより、(HDMI→DVIケーブルを用意すれば)DVI入力を備えた液晶ディスプレーにデジタル出力で画面表示を行なえるほか、HDMI入力を備えた大画面液晶/プラズマテレビと接続することで、BDソフトの映像をテレビに表示して楽しむこともできる。フルHD解像度対応のテレビに接続すれば、1920×1080ドットの画面を表示することも可能だ。
なお、FZシリーズはテレビチューナーを内蔵していないので、地上デジタル放送を録画してBDに保存するといった使い方はできない。しかし、ハイビジョンハンディカムからのHD映像取り込みに対応した付属ソフト『Click to DVD BD』がプレインストールされているので、オリジナルのBDタイトルを作成することが可能となっている。