なぜ、エンジニアのビジネススキルはなかなか身に付かないのか
3つのビジネススキルの重要性は現場レベルでも言われています。それでも身に付けるのに苦労しているのは、なぜでしょうか。
ひと昔前は、新人は先輩に付きながら仕事する機会が多くありました。そこではテクニカルスキルだけでなく、ビジネススキルを学ぶことができたと思います。しかし、現在はテクニカルな部分の教育には力を入れるが、ビジネススキルまで教育をする余裕のない企業が多いでしょう。身に付かない理由としてOJTの場が足りないという事情があるかも知れません。
しかし、そもそも「問題解決能力」「ドキュメンテーション能力」「ファシリテーション能力」といったスキルは自主性や主体性がないと身に付かないものだと思います。自らスキルアップの機会を作ることが大切なのです。
自分でできる演習方法!
それでは、それぞれの能力はどういった習得の機会を作ればいいでしょうか。
●問題解決能力
問題解決能力を身に付けるためには、ロジカルシンキングを高める機会を設ける必要があります。簡単な方法としては社内でグループ演習の機会を作ることです。1つの問題を提示し、その問題の原因と解決策は何なのかを話し合いをするとよいでしょう。仕事に直結した議題でなくてもいいと思います。たとえば「あるそば屋ではてんぷら定食だけ売れない。それを解決したい」というテーマを掲げて、「てんぷら定食が売れない原因と解決策」を話し合う。メンバーで意見を出し合って、ロジックツリーを描いていくことで、ロジカルシンキング力は高まっていくでしょう。
●ドキュメンテーション能力
先輩が制作した議事録や日報、要件定義書などを読み、同様のものを作成するトレーニングを積むことで身に付きます。制作したドキュメントを先輩に確認してもらったり、弊社のような研修機関で習ったりすることでも身に付くでしょう。自主性さえあれば、ドキュメンテーション能力をアップさせることはそう難しいことではありません。
●ファシリテーション能力
ファシリテーション能力もグループ演習の場やミーティングの中で身に付けることができます。自分がリーダとなって、参加メンバーの意見を促したり、話の流れを整理したり、意見や認識を一致させていくことは、ファシリテーション能力そのもので、実践力が身に付きます。
グループ演習やミーティングには、スキルを習得する以外に大きなメリットがあります。それは意見を戦わせる中で、自分の強みと弱みに気付けることです。同僚に教えられることもあるでしょう。この「気付く」ということが大切で、すべてのスキルアップのスタートとなります。
営業職の場合は取引先とのやり取りの中で、こうしたビジネススキルを身に付ける機会に日常的に直面しています。でも、SEの場合は訓練する環境を作る努力をする必要があるでしょう。「ミーティングの機会がない」とか「客と接することが少ない」などを身に付かない理由にしているようでは、「気づき」も「成長」もないと思います。
- ■取材協力
- 富士通ラーニングメディア
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