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SIGGRAPH 2007で大きな発表が!!

エイリアスとゴールインしたオートデスクの戦略をマーティン・ヴァン氏に聞く

2007年08月09日 13時28分更新

文● 千葉英寿

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米サンディエゴで現地時間の5日から開催中のCG関連学会イベント“SIGGRAPH 2007”を控えた7月20日、米オートデスク社(Autodesk)からメディア&エンターテインメント担当のバイス・プレジデントのマーティン・ヴァン(Martin Vann)氏が来日し、会見を行なった。多忙な滞在日程の合間を縫っての会見を行なったヴァン氏は、旧エイリアス・システムズ社(Arias Systems)との合併以降のオートデスクの現状と今後の見通しについて語った。SIGGRAPH 2007での発表が目前ということもあり、会見そのものでは目新しいメッセージは出なかったものの、各種ビジュアルコンテンツが2Dから3Dへと大きくシフトしてきている現状にあって、同社の動向を知る上で重要な会見となった。

SIGGRAPH 2007ではすべての製品で新しいニュース!?

マーティン・ヴァン氏

オートデスクのメディア&エンターテインメント担当のバイス・プレジデントのマーティン・ヴァン氏

同社のワールドワイドセールス担当となって4年半になるヴァン氏は、セールス&マーケティングをメインに、メディア&エンターテインメント部門におけるすべての製品を統括している。オートデスク以前もエンターテイメント・テクノロジーの分野で12年の実績を持つ人物だ。ヴァン氏は5日から開催されているSIGGRAPH 2007での同社の動きについて、まず説明した。

ヴァン氏 SIGGRAPH 2007がサンディエゴで行われます。ここでわれわれはさまざまなアナウンスをする準備をしています。すべての製品で新しいニュースが予定されており、いままでで一番大きいプレゼンスを用意しています。また、大きなユーザーグループのミーティングを予定しており、1000名を超えるユーザーが集まるユーザーグループも準備しています。ぜひ、SIGGRAPH 2007でもわれわれの動向にご注目ください。


ヴァン氏が説明しているように、現地の同社ブースでは連日、『Autodesk Maya』、『Autodesk 3ds Max』、『Autodesk MotionBuilder』、『Autodesk Toxik』といった同社ソリューションのデモンストレーションや、ユーザー自らによる活用事例のデモンストレーションが行なわれている。とりわけ、Mayaの映画制作への活用事例として、“パンズ ラビリンス”、“スパイダーマン 3”、“パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールドエンド”、“トランスフォーマー”と言った大作、話題作のクリエイターが登壇している。また、6日には現地のホテルを会場にユーザグループミーティングが行なわれた。


続いて、ヴァン氏は、同社の体制について語った。

ヴァン氏 弊社のビジネスには4つの分野があり、それぞれにソフトウェアやソリューションを提供しています。4つの分野とは、メディア&エンターテインメント、建設、インフラストラクチャ、製造になります。これらの4つの分野において、さまざまなお客様が弊社製品をお使いいただいています。もちろんその中には日本の企業も多くいらっしゃいます。まず、ホンダやトヨタ、GE(米ゼネラル・エレクトリック社)といった自動車関連。さらに、さまざまな放送局もあります。国内であればNHK、米国ならABCなどです。映画制作スタジオにはディズニーやソニー・ピクチャーズ エンタテイメント、PDI/ドリームワークス。ゲーム分野では任天堂などでお使いいただいています。私が担当するメディア&エンターテインメントでは、5~6のマーケットセグメントがあり、ゲーム、フィルム/映画、テレビ/CMなどの番組の制作編集、アーキテクツ・デザイン、教育分野に分かれています。

―― ワールドワイドセールス担当として、この4年半はどのように推移してきましたか?

ヴァン氏 私がオートデスクに入社したのは2003年ですが、それから4年半の間で、これらの分野を総合して13~15%の成長を実現してきました。われわれは今後、さらにオートデスク全体として15%の伸びがあると予測しています。

―― 15%の成長を促す要素をどのようにお考えですか?

ヴァン氏 世界的に見て、さまざまなところで2Dから3Dへの移行が顕著です。オートデスクのお客様には2Dをお使いの方も多いのですが、3Dへの移行がどんどん進んでいます。特に2Dではできない部分での移行が進むことが考えられており、こうした傾向はいろいろな分野で共通して言えることだと思います。例えば、工業製品のデザイン分野では、デジタルカメラや“iPod”のような製品のデザインにも弊社のデザインツールが使われて設計されています。また、シビル・エンジニアリングでは橋などのインフラストラクチャーをデザインする部分でもますます伸びるだろうと考えています。われわれはこうした2Dから3Dに移行していく過程をサポートしていくことを使命とし、これをひとつのゴールと考えています。

―― では、特にどの地域のマーケットに期待し、成長するとお考えですか? アジア市場では成長著しい中国のマーケットに、今後ますます注目が集まると思いますが。

ヴァン氏 地域としては、とりわけラテンアメリカやアジアに期待しています。おっしゃるとおり、アジアでは中国のマーケットが成長するだろうと考えています。中国では2D(の普及)を飛び越えて、いきなり3Dへの移行(需要の拡大)が始まっていることも、期待をかける理由になっています。また、このほかにロシアやインドも伸びるだろうと思います。特にこれらの地域については、30%の成長も期待できるものと予測しています。



大作映画が公開と同時にゲームもリリース!
これも3D化のメリット


―― 直接のご担当であるメディア&エンターテインメントについて、トレンドとしてどのようなことが起こっているのでしょうか?

ヴァン氏 最近の映画はSFXを多用する大作がどんどん増える傾向にあります。ハリウッドでは、こうした作品による“非常に収益性の高いビジネス”に注目が集まっています。中でもハリウッドのスタジオはゲーム会社とコラボレーションし、映画公開と同時にゲームタイトルをリリースしています。例えば、“ハリーポッター”ではエフェクトを多用した映画作品が出てくると同時にゲームも出てきます。これはアセットや素材、マテリアルを上手に共有して、制作工程において(映画の制作とゲームの制作の)ワークフローをシームレスにすることで、可能となっているものです。3D化はこうした戦略におけるメリットになっています。
ゲーム分野では、任天堂のWiiやニンテンドーDSといったゲームコンソールの成功があります。これらはカジュアルなものであり、グラフィックス的にはもっとハイエンドなもの(PS3やXbox 360)もありますが、そこにあまり特化しない低価格機に人気が集まる傾向にありますね。EAやスクウェア・エニックスといったゲームデベロッパーに私どもの製品をたくさん使っていただき、クオリティーの高い製品をリリースされています。
TV CM分野は非常に強く、世界的に成功している分野と言えます。CM自体がエフェクトを多用することで、よりクリエイティブな楽しい映像になってきています。これはクリエイターの頭の中にあるビジョンを形にするツールがだんだん必要になってきている、ということが言えるのでしょう。こういった広告形態の中にインターネットが台頭してきており、テレビの世界に視聴者をきちんと引き止めておくには、よりよいCMを作らなければなりません。そして、なにより作り手がよりクリエイティブであるためには、いい製品が必要であり、そこでわれわれの製品を選んでいただいています。



―― エイリアス・システムズとの合併は、御社の事業や戦略にどのような影響を及ぼしていますか?

ヴァン氏 18ヵ月前にエイリアス・システムズと合併しました。映像制作の分野では、ワークフローを拡張することができました。“アドバンスドシステム”と言われる『Inferno』や『Frame』(いずれもオートデスクのビジュアル・エフェクトツール)などに、『Maya』(3Dモデリング/アニメーション/レンダリングソリューション)を加えることで、より幅広いワークフローのプロダクション・パイプラインを形成することができました。今後、これらの連携をより強化していき、2Dのエフェクトから3Dのアニメーションに、それをまた2Dに戻してエフェクトで活かす、といったことが可能になります。
デザイン分野では建築物を建てる前にシミュレーションが可能になりました。ここでは3ds Maxが使われています。3ds Maxを使うことで、フォトリアリスティックな表現を使いながら、実際にイメージしやすくなり、建築物の設計プロセスを強化することができるのです。
まとめると、メディア&エンターテインメントが他社のソリューションと比較してユニークなのは、2Dコンポジティングツールと3Dのアニメーションツールの両方を持っていることであり、他社にはこれを超えるベストなツールを提供できないと考えています。それがわれわれの強みだと考えます。



統合よりも連携強化を図り、ソリューションを提案
Mayaと3ds Maxは今後も両製品の開発を続けていく


―― Mayaと3ds Maxは、非常に近い性質と機能を持った製品だと思いますが、これらの製品の切り分けはどのようにお考えですか?

ヴァン氏 Mayaと3ds Max、どちらも非常に強い製品です。いずれもがテレビや映画の制作にお使いいただいています。映画の部分ではMayaが多く、TVとゲームでは同程度です。デザイン・ビジュアライゼーションでは3ds Max、プロダクトデザインではMaya、という感じです。いずれにおいても、非常に愛着を持ってお使いいただいているお客様がいらっしゃいます。そうしたお客様には選択肢を引き続き提供したいと考えています。ですので、今後もどちらのアプリケーションも開発を続け、ベストなフィーチャー(特徴的な機能)を提供し続ける、これがわれわれにとって重要な点だと考えます。
重要なフォーカスポイントはコンテンツデータの共有にあります。これにはご存じのように、“FBXファイルフォーマット”を用いてデータ共有を可能にしており、ここにはInfernoやFrame、Smokeもサポートしています。FBXによって、より広い製品間でのシームレスなパイプラインが形成できるのです。

―― では、メディア&エンターテインメント製品ソフトウェアを整理、統合することはないでしょうか?

ヴァン氏 私は実際にはもっとソフトウェアソリューションが必要だと思っています。そして、統合よりはアプリケーション間のインターオペラビリティ(相互操作性)を向上させたいと考えています。それによって、より効果的な作業ができるように、言語や操作スタイルの共通化が必要だと思います。

―― 御社の製品間ではより強固な連携を進めることが可能だと思いますが、他社製品との連携はいかがでしょう? 米アドビシステムズ社の『Adobe Photoshop CS3 Extended』では、特に3Dや動画との親和性を高めていますが。

ヴァン氏 それにはぜひ、FBXをサポートしていただければいいですね。そうすれば、われわれはなにもしなくていいので、大変助かります。


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