このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

林信行のマイクロトレンド 第10回

あなたの世界観を変える、5つの映像作品〈前編〉

2007年07月30日 18時00分更新

文● 林信行(ITジャーナリスト)

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 世の中には“歴史を変える作品”というものが存在する。そうした優れた作品は、人々の世の中に対する見方を変え、“新しい潮流”(トレンド)を生み出す力を持っている。今回のマイクロトレンドは“夏休み特別企画”として、このページからワンクリック先にある、あなたの生き方を変えるかもしれない作品を5つほど紹介したい。



エンゲルバード、アラン・ケイ、ジョブズ……ITの系譜


 いま改めて振り返ってみると、コンピューターの世界は常に、優れたビジョンを持った作品の影響で変貌し続けてきた。

ダグラス・エンゲルバート博士

ダグラス・エンゲルバート博士

 1945年、ヴァネヴァー・ブッシュ氏がAtlantic Montly誌に『As We May Think』という論文を載せ、“memex”(メメックス)と呼ばれる近未来の情報検索システムの姿を描いた。第二次世界大戦でフィリピンに、無線技師として駐留していたダグラス・エンゲルバート氏がこの論文を読み、影響を受ける。

 やがて、このエンゲルバートが1968年12月に、彼の研究成果を統合した未来のコンピューターのあるべき姿を描いた伝説のデモを行なう。これは“すべてのデモの母”と呼ばれているものだ。このデモもひとつの作品と呼ぶことができるだろう。

アラン・ケイ博士

アラン・ケイ博士

 実は、このデモの影響を受けた1人に“パソコンの父”と呼ばれるアラン・ケイ博士がいる。彼はその後、エンゲルバートの発明したマウスを使い、米ゼロックス社のパロアルト研究所で“ALTO”(アルト)と呼ばれる新時代のコンピューターと、“Smalltalk”(スモールトーク)という先進的なシステム環境の開発に携わる。

 このALTOで動くSmalltalkを見て、影響を受けたのがスティーブ・ジョブズ氏を筆頭にした米アップル(当時はアップルコンピュータ)の人々で、これがMacintoshの誕生に、そしてWindowsの誕生につながっていく。



【その1】Did You Know 2.0


Did You Know 2.0

YouTubeで公開されているDid You Know 2.0の動画

 パソコン黎明期に影響を与えた“作品”は、論文だったり、SF小説だったりすることが多いが、最近では、これらの作品と同じくらいの影響力と、世の中の見方を変える衝撃を持つ“作品”が動画という形で、インターネットに公開されるようになってきた。

 上の例のようにパソコンの未来を示したものではないが、まずは、これから先、今日の子供たちが大人になるころの世界を描いた“Did You Know 2.0”を見てほしい。

 Xplane Visual ThinkingによってYouTubeに掲載された下記リンクの映像に、“字幕.in”のサービスを使ってtokuriki氏が字幕をつけたものだ(Karl Fisch氏が作ったオリジナル動画はこちら)。


“もっと先のこと”こそ議論する価値がある


 作品では「20世紀初頭にはイギリスが世界のリーダーだったが、それから1世紀も経たない間に大きく情勢が変わった」「今やアメリカの大学卒業生よりもインドや中国の卒業生の方が多い」「しかもインドの大学卒業生の英語習熟率は100%、10年後には世界で一番、英語が話されている国は中国になる」といった衝撃的な事実が続く。そして「今日の子供の教育がこのままでいいのか」と問いかける。

 子供だけの問題でなく、この急速に変わる世界を生きていく、ひとりの大人としても、これからどう生きていけばいいのかを深く考えさせられる作品だ。

 テレビでは、社会性やモラルに欠ける教員が巻き起こした事件や、教員と親が責任をなすりつけあう情けない姿ばかりが報道されているが、本当はこうした“もっと先のことこそ議論する価値があるものなのではないかと、改めて考えさせられる。

 と同時に、これからの時代、英語を話さないことには、世界規模での活躍は望めない、ということも心に深く刻み込まれそうだ。というわけで、この後、紹介する作品のいくつかは字幕なしの英語作品だ。一応、簡単な概略だけつけるようにした。

 ちなみに、この作品はカール・フィッシュ氏のプレゼンテーションを元につくられたものだが、今回の作品の前にも何度か映像化されており、ほかのバージョンでもいくつかおもしろいデータが紹介されている。ぜひ、フィッシュ氏のブログ記事“Did you know?”からたどってみよう。


(次ページに続く)

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン