このページの本文へ

産婦人科はITが必須

ここまで進んだ“赤ちゃん系”IT

2007年07月27日 00時00分更新

文● 吉川大郎(編集部)

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

月刊アスキー 2007年9月号掲載記事

オギャーCD写真

産声をCDに録音。“21世紀のへその緒として…”というキャッチコピーがついている。バリエーションとして、動画も入った「オギャーCDROM」や「オギャーDVD」も用意されている。

産声をいつまでも「オギャーCD」

産婦人科の世界で、ウェブビジネスのお手本になるようなサービスが展開されている。「産婦人科デビュー・COM」がそれだ。産婦人科のポータルサイトなのだが、ターゲティング、ビジネススタイルの2点に注目したい。

産婦人科デビュー.com画面

ユー・ディーのカバー範囲は出産だけに留まらない。生まれたあとのケアを行う「オギャー・プロジェクト」や、少子化対策を考える「Angel Aid」、電子母子・父子手帳「オギャーNet」など、多岐に展開する。

まず、ターゲティングだが、「妊婦とIT」という組み合わせに気がついた点が素晴らしい。運営元のユー・ディー・コーポレーション(以下ユー・ディー)代表取締役 岡本敏秀氏は言う「お年寄りの多い一般病院と違って、産婦人科に通うのは主に若い女性です。だから、情報収集をするとしたら、ケータイやPC を使う。産婦人科とITの親和性というのは、とても高いのです」。言われてみれば当たり前なのだが、これはなかなか盲点ではないだろうか?

ユー・ディーのカバー範囲

産婦人科デビュー.comの中の「全国産婦人科一覧」。分娩方法やお産法、部屋の形態なども細かく分かる。一覧上に並んでいるアイコンが、オプションサービス。

さらに同社のビジネススタイルも秀逸だ。彼らは、産婦人科に対してITサービスを提供し、妊婦そのものを直接顧客にはしていない。産婦人科のITサービスのアウトソーシングを請け負っているのである。そのサービス一覧が本ページ左のアイコン群なのだが、ビジネスのコアとなるのは「産婦人科デビュー・COM」内の「全国産婦人科一覧紹介」コーナーである。これは全国のさまざまな産婦人科が登録されたデータベースで、産婦人科は無料で登録できる。

まずここで、ユー・ディーと産婦人科のリレーションが取れるわけだが、ここから彼らは有料サービスを展開していく。たとえば、産婦人科内をビデオで撮影した「産婦人科・TV」、生まれた赤ちゃんの写真をケータイでアップして家族で共有できる「TinySmile」といったサービスを有償提供するのだ。特に、赤ちゃん誕生時の産声をCDに収め、レーベルに足形をシルク印刷した「オギャーCD」はビジネスの基幹となる。いずれのサービスも妊婦は産婦人科からプレゼントとして提供され、金銭的な負担はない。いわゆるB2B2Cのビジネスなのだ。妊婦や産婦人科に、必要最低限の無償プラットフォームを提供し、差別化オプションで利益を得るという手法は、いわゆるウィン‐ウィンの関係構築という意味でも、注目に値する業態と言えよう。対象層の発見といい、業態の発想といい、ウェブビジネスで見習う点が多々あるサイトである。

ユー・ディー・コーポレーション  代表取締役 岡本敏秀氏

ユー・ディー・コーポレーション 代表取締役 岡本敏秀氏 1988年に同社を設立。もともとはデジタル音楽や映像、デザインを行う会社だった。左の一覧にあるサービスは、すべて岡本氏が命名・ロゴデザインを行っている。現在は少子化対策にも力を入れる。

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中