日本語対応とキーボード入力
日本語表示については、MailやSafari、iPodを含め、すべて問題なく表示される(しかもフォントが美しく見やすい)。それだけに、日本語の入力ができないことは残念だ。OS Xを搭載しているのだから、近い将来、各国語の入力がオプションで選べるようになることを望みたい。
“入力”と言えば、批判されることの多いiPhoneのソフトウェア・キーボードだが、個人的には確かに慣れは必要と感じた。筆者は、購入から1週間経った今でも、Treoに内蔵されているハードウェアキーボードを使った場合に比べて倍の時間がかかる。携帯電話機の日本語入力ではおなじみの、“推測入力支援”機能も搭載されているが、これも完璧とは言えず、今後に残された課題のひとつと言える。せっかくBluetoothを備えているのだから、将来的には、外付けの小型キーボードなども使えるようにして欲しい。
より優れたiPhoneを目指して
最後に、携帯電話としてiPhoneを見てみると、特徴的なのは、伝言メッセージがリスト表示されて好きなものから聞くことができるという“ビジュアルボイスメール”のみ。そのほかは通話品質も含めて、特に特筆すべきところはない。
ここでは紹介しきれないが、すでに私のiPhoneに対する“要望リスト”には、十以上の項目が並んでいる。その多くは、よりユーザーやデベロッパーに、OS X搭載マシンとして提供できる機能をオープンにすることで実現可能だ。ここまでのところアップルは、「ソフトウェアデベロッパーは、iPhone用にウェブベースのアプリケーションを提供すればいい」と主張しているが、Google DocsやGoogle Spreadsheetsも満足に動かない現在では説得力に乏しい。
私としては、iPhoneは携帯電話が進化した製品ではなく、万能なパーソナルコンピュータの延長線上にある製品と位置付けたい。その観点からは、 発売されたばかりの初代iPhoneは多くの可能性を持った素晴らしいテクノロジーであるだけに、今後、ユーザーやデベロッパーに対しての“閉鎖的側面”──例えば、“ファイルシステムに直接アクセスできない”、“アプリケーションを開発するためのAPIが公開されていない”といった点をアップルにはぜひ見直してもらいたい。
筆者紹介──飯吉透 (いいよし とおる)
カーネギー財団知識メディア研究所所長、東京大学大学院情報学環客員教授(ベネッセ先端教育技術講座)。専門は、教育工学・教授システム学。アスキーの各誌で、テクノロジーと文化に関するコラム執筆歴17年。現在は、MacPeopleで“海の向こうで胸騒ぎ II”を連載中。