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米国IT事情を探る 第7回

深刻化する“オンラインゲーム依存症”の問題──米国メディアの取り上げ方は?

2007年06月23日 00時00分更新

文● 遠竹智寿子

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 米大統領選と言えば、1年以上も前から繰り広げられる広報活動や応援合戦が有名だ。今年は、2008年の選挙に向けて民主党候補の2人――ヒラリー・クリントンとバラク・オバマがメディアを賑わせている。

 それぞれ当選すれば、女性初、黒人初の大統領になるというわけで注目度も高く、米メディアの報道の様子も、どちらかというとお祭り騒ぎ的な賑わいだ。

 「オバマは、今やロックスター並みの大人気!」と米メディアで取り上げられたのは今年の6月のこと。「I got a crush on Obama」(オバマに夢中)というプロモーションビデオ(PV)がYouTubeに流れ、あっという間に話題になった(YouTubeの動画)。

 PVの制作者は、マーケティング・広告分野の仕事に携わるベン・レリス(Ben Relles)。曲を手がけたのは、テンプル大学の学生で21歳のリア・カウフマン(Leah Kauffman)。PVに流れる曲も彼女自身が歌っている。そして、PVに登場するオバマ・ガールは、レリス氏が、ネットで見つけたモデルのエンバー・リー・エッティンガー(Amber Lee Ettinger)だ。

 エッティンガーのウェブサイトを見付けたベン・レリスがメールで「面白い企画があるんだけどモデルになってくれないか?」と声をかけ、「面白そうね」と事が運んだ。I got a crush on Obamaは7月には250万ビューに達し、12月には400万ビューを超えている。




 ASCII.jpの読者なら、すでにご存知という方も多いだろうが、このミュージックビデオ、オバマにメロメロな若い女性がニューヨークを舞台にオフィスや公園でオバマに思いを寄せてセクシーポーズをとりながら歌い踊るというものだ。

 歌詞には、オバマの政策を支持する内容なども盛り込まれている。オバマ・ガールとなったエンバーは、無名に近かったモデル時代から一転した活躍ぶりを見せている。「Maxim online」「Howard.TV」「Bikinilife.TV」といった男性向けのサイトが、YouTubeのヒットを聞きつけ、6月に彼女をモデルとして起用。彼女の水着ショットを次々と掲載した。

 このネットの騒ぎっぷりに今度はテレビや雑誌や新聞が反応した。7~8月以降は「People Magazine」「PlayBoy」などにも次々にセクシーショットを披露。全国ネットのテレビインタビューにもいくつも登場している。

 そのたびに、オバマ・ガールの名前が出るわけだから、いい広告塔となっているわけだ。オバマの正式な事務所側の人間は、制作にはまったく関与していない。政府でもなく、候補者でもなく、(その道のプロではあるとはいえ)、個人が学生とコラボして作ったコンテンツが発端となって、大統領選そのものを盛り上げてしまったというのは、Web 2.0時代ならではの現象と言える。

 YouTubeというネット媒体に、従来のメディアが後追いとなって付いていくといった現象はもはや珍しくなくなった。




 この曲の続編として「オバマ・ガール対ジュリアーニ・ガール」なども制作されている。 実は「barelypolitical.com」という政治をパロディ化したコンテンツを配信するサイトが、大もととしてあり、レリスやカウフマンも同サイトのメンバーとして名を連ねている。

 関係者たちのインタビューを聞くと、このサイトの目的は、パロディー化して単に騒ぎ立てたり、皮肉るといったことが目的ではない。むしろ若い人たちを含め一般の人々にもっと政治に興味を持ってもらいたい、自分たちのメッセージを伝えたいといった気持ちが、ウェブサイト立ち上げの動機になっているようだ。

 ちなみに、この10月には、米オンラインミニTVネットワークのNextNewNetworkがこのbarelypolitical.comを買収しているのも興味深い。




 日本では、いまだにインターネットを使った選挙活動が禁止されていたり、選挙中のホームページの更新は違反であるとかといった議論が続いている。しかし、アメリカではもはやそんな次元の低い話を聞くことはない。

 今年7月には、大手テレビネットワークのCNNがYouTubeとコラボした番組「CNN/YouTube Debate」を開催した。ブロガーたちがディベート会場に集まり、ヒラリーら大統領候補たちに質問を投げかけている。この様子を、テレビニュースやYouTubeが紹介し、ブロガーが自分の意見をブログに書くといった具合だ。

 そんな様子を見ていても、テレビや新聞などのメディア、そして政治家など、これまでネットを毛嫌いていた側が、その影響力を認めて共存する、あるいは利用する側になってきたのは確かだ。




 だが、そのためとも言える騒ぎも起きている。

 この春、大きなニュースとなったのは、米SNS大手「MySpace」で、一般の支持者が立てたオバマを応援するコミュニティーサイトが、オバマの選挙陣営に奪取されたというものだ。

 ロサンジェルス在住・29歳のジョー・アンソニー(Joe Anthony)は、2004年にオバマ応援サイトをMySpace内に作り、その人脈を広げながら地道にサイト運営を行なってきた。

 そのフレンド数は、2年半で160万人にもなっていた。これに目をつけたオバマ陣営は、この非公式のファンサイトを公式サイトの傘下に入れようと、MySpaceの運営を行なう米News Corporation社に働きかけ、その運営権利権を陣営側に移管してしまった。5月1日のことだ。

 当日のアンソニーさんの日記には、陣営やサイト運営者に送った質問文の内容と、「オバマは僕の一票をなくした」というコメントが掲載された。その後、テレビ、雑誌で話題に上ると、MySpace側は、アンソニーさんが培ってきた登録フレンドを彼に戻すといった処置を行なった。

 オバマ自身がアンソニーに電話をし、これまでの貢献に感謝する旨を伝え、陣営側の対応の悪さを陳謝した様子などもすべて彼の日記に書かれている。この時、アンソニーはネット上で築き上げた友人たちから何百もの励ましのメールを受け取った。ともかくも数週間は、米メディアをこの話題が賑わせていた。YouTubeといいSNSといい、その使い方を熟知する個人の力はもはや図り知れない。




 話は少し反れるが、「大統領選の盛り上がりへの貢献」というつながりで、最近行なわれた応援演説についても触れておこうと思う。

 先だって、12月8~9日のオバマ側の応援演説に、カリスマ司会者のオプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)が駆けつけた。日本ではあまり知られていないが彼女の影響力は、アメリカでは絶大なものだ。番組の視聴率は抜群。彼女が番組で書籍をひとこと褒めれば、視聴者が書店に駆けつける。その言動が、多くの女性たちの口コミにも影響するところは、まさに「アメリカの女版みのもんた」といったところだ。

 そう言えば、去年、赤バージョンのiPod nanoが登場したときに、U2のボーカリスト、ボノ(Bono)とシカゴのアップルストアに訪れて、マスコミもファンも大騒ぎしたこともあった。

 そのウィンフリーが、アイオワ(1月3日に最初の党員集会開催)、ニューハンプシャー(1月8日に最初の予備選)、サウスカロライナの集会に参加すると、延べ7万人もの聴衆が集まった。

 昔からハリウッドセレブからの応援表明がとかく話題となるのだが、今回の応援演説はさらに輪をかけ大盛り上がりを見せ、数日の間、選挙関係の報道ネタもそれ一色になっていた。その翌日には、「1人の政治家を支持すべきじゃない」「あなたのファンを辞める」などといった批判のメールや電話を受け取ったことでまた話題になった。

 一方、25年も続く人気深夜番組「Late Show With David Letterman」(レイトショー・ウィズ・デイビッド・レターマン)でも、お決まりのブラックジョークが候補者たちをここ数日、ターゲットしている。こういったネタは、候補者を応援するしないにかかわらず、アメリカ人は大好きなのだ。

 現時点で報じられている各世論調査をみていても、オバマ対ヒラリーの民主党指名争いは、まさにデッドヒートといった感じだ。党員集会・予備選挙の開始が1月に迫り、毎日の話題はつきない。今日はヒラリーに3ポイント! 今日はオバマに5ポイント入った! といった感じで、まるで接戦のスポーツ観戦にも似た賑わいなのである。


筆者紹介-遠竹智寿子

 外資系コンピュータメーカーのマーケティング部、広報部の勤務経験を経てフリーランスとして独立。ITジャーナリストとして調査、記事執筆を手掛ける一方で、企業向けコンテンツ企画やマーケティング調査などを手がける。 また、コミュニケーションスキルやIT・英語教育分野における研究、事業活動も行っている。現在、 月刊asciiに『マインドマップ「超」仕事術]『深化するCSR』を、アスキービジネスに『ビジネスマインドエッセンス』を連載中。

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