このページの本文へ

ERPから「BPP」へ――SAPが注力するビジネスプロセス・プラットフォーム

2007年06月19日 21時27分更新

文● アスキービジネス編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

SAPジャパンは6月19日、報道関係者を集め、エンタープライズSOAを実現する基盤「ビジネスプロセス・プラットフォーム」(BPP)に関する説明を行なった。BPP事業への取り組みを紹介するとともに、今年4月に米国アトランタで開催された「SAPPHIRE 07 Atlanta」で明らかになった「NetWeaver」のロードマップも説明された。

ERPから「BPP」へ――SAPが注力するビジネス プロセス・...

SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスプロセスプラットフォーム本部長 福田 譲氏


エンタープライズSOAによるシステム構築を実現する「BPP」


 「“SAPは使い勝手がちょっとね”といわれてた時代もあったが、状況は相当変わってきている」。SAPジャパンのバイスプレジデント、ビジネスプロセスプラットフォーム本部長である福田 譲氏はこのように語る。

 SAPジャパンは2006年に、ERPパッケージの新版「SAP ERP 6.0」(当時の名称は「mySAP ERP 2005」、以下SAP 6.0)の出荷を開始した。それまでの「SAP R/3」で採用していたクライアント/サーバ型の密結合のアーキテクチャから、オープンで疎結合されたアーキテクチャへと一新。ミドルウェア群「NetWeaver」を基盤とした「エンタープライズSOA(サービス指向アーキテクチャ)」(E-SOA)のコンセプトを打ち出した。

ERPから「BPP」へ――SAPが注力するビジネス プロセス・...

R/3と現在のSAP ERPのアーキテクチャの違い

 E-SOAでは、これまでSAPがERPで提供してきた機能を、ビジネスの視点で定義された「エンタープライズサービス」の単位で分割。エンタープライズサービスをNetWeaverの「エンタープライズ・サービス・リポジトリ」に格納し、ビジネスプロセスに沿って必要なサービスを組み合わせて「コンポジット(合成)・アプリケーション」を作成する。

 このとき、エンタープライズサービスは、必ずしもSAPのアプリケーションである必要はない。自社で開発したアプリケーションであっても、同様にコンポジットアプリケーションを構成することができる。「SAPが合わない部分は他のサービスを使い、抜き差して使うことができる。自社開発かパッケージかのどちらかではなく、両方を組み合わせることで新たなバリューを提供する」(福田氏)。

 こうしたE-SOAに基づくコンポジットアプリケーションを作成するプラットフォーム全体を、SAPは「BPP」(ビジネスプロセス・プラットフォーム)と呼んでいる。具体的には、コンポジットアプリケーションを構成するサービス(SAPアプリケーション)と、それを組み合わせるためのツールであるNetWeaverから構成されるものだ。

ERPから「BPP」へ――SAPが注力するビジネス プロセス・...

ビジネスプロセス・プラットフォームの構成要素


バックエンド化するSAP、フロントエンドは“使い分け”の時代へ


 BPPのメリットはどこにあるのか。SAPがBPPに取り組む理由を福田氏は「“SAPを10年使いたい”という期待から、明日、何があっても対応できるような“足を引っ張らないIT”へと変わってきている」と話す。つまり、企業を取り巻く環境の変化へすばやく対応できる、柔軟な基幹システムを構築できるのがBPPの大きなメリットとなるというわけだ。

 従来のSAP R/3では、「画面デザイン1つ変えるのにもプログラムミングで解決する世界だった」(福田氏)のに対して、SAP 6.0では機能とユーザーインターフェイス(UI)を分離することで、UIを自由にカスタマイズできるようにした。また、インタラクティブなPDFフォームやMicrosoft Office、さらにはデスクトップガジェットなど、外部からSAPのサービスを呼び出して利用できるようになっている。

UIと機能の分離により、さまざまなフロントエンドからSAPを使える。(左)=NetWeaverが持つWebポータル機能、(中)=Adobe Formsを使った申請書、(右)=デスクトップガジェット。

「実際にERPを使うユーザーのリテラシや頻度、場所などに併せて、さまざまなUIを用意し、使い分けができる。バックエンドで意識せずに動いているのがSAPのサービスとなる」(福田氏)

 また、先に挙げたとおり、BPPではSAP以外のサービス化されたアプリケーションを組み合わせることができる。このため、過去の資産を再び利用できるメリットもある。加えて、ニッチな業界・業種向けのアプリケーションについても、コンポジット(合成)することで低コストで用意することが可能となる。「SAPに足りないものは、他のサービスで補うことができる」(福田氏)。

 SAPはBPP事業を中堅中小企業(SMB)市場と並ぶ今後の成長分野と位置づけ、グローバルで強化する姿勢を打ち出している。今年1月にはBPP事業を推進する「ビジネスプロセスプラットフォーム本部」を立ち上げ、すでに国内でも140名の専任体制を敷いた。

 また、新しいリッチクライアント「SAP NetWeaver Business Client」と、WikiやブログなどのWeb2.0の要素を取り入れた「SAP NetWeaver Portal Collaborative Portal」を第3四半期中に、企業内検索(ESP)アプライアンス「SAP NetWeaver Enterprise Search Appliance」を2008年中に発売するなど、相次ぐ新製品の投入が計画されている。

■関連サイト

カテゴリートップへ