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「閉じた世界は死に絶える」

放送業界、マイクロソフト……、古川氏が大いに語る

2007年06月13日 22時30分更新

文● 小西利明 (編集部)

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データではなく、ワークフローの共有が可能になった


 デジタルシネマを例にした、IPネットワークの活用例も紹介された。2006年公開の映画『男たちの大和/YAMATO』では、数TBのデータが、毎日尾道のロケ現場から、非圧縮で東京に送られていたという。

 「データ(の共有)だけではなく、仕事そのものの流れを共有することが始まって、初めて仕事のスタイルが変わった」(古川氏)

 映画制作の分野では、遠隔地の撮影現場で荒くカット編集したデータやシーケンスを、東京と共有するといったワークフローが登場し始めている。IPネットワーク化が映像制作のあり方に大きな変化をもたらした例のひとつだ。

 古川氏は国内だけでなく世界規模でデータの共有が実現すれば、「映像編集スタジオは世界のどこにあってもいい」とも述べている。

PLCモデムを手にした古川氏

PLCモデムを手にした古川氏。IPネットワークの技術がより簡単に家電の世界に入り込んでいく可能性を語った

 放送の世界でも、IPネットワークが広く使われている例が取り上げられた。古川氏が挙げたNHKの例では、北海道と東京を結ぶ光ファイバーの専用線での映像伝送が一時的に落ちた際に、バックアップのIPネットワークに切り替わったのを、NHK側では気づかなかったという。

 つまりIPネットワークでも、専用線に劣らない遅延のない伝送が可能になっているというわけだ。また、専用線では回線切断のような障害発生時に対応できないが、IPネットワークならば迂回して通信を維持することも可能という例も挙げられた。



古川流のユーモアも飛び出す


 古川流のユーモアを交えた皮肉も飛び出した。

 日本のデジタル放送は、映像伝送はMPEG-2、データ放送にはBMLを利用しているが、現在ではH.264のような帯域効率に優れた映像圧縮技術が登場してきている。H.264であれば、IPネットワークでハイビジョン放送を品質を損なわず伝送することも可能であるが、日本の放送業界は既存の利権を脅かす可能性のあるIPネットワークでの放送には、拒否反応を示している。

2台のDLNAクライアント機能搭載テレビにハイビジョン品質の映像を配信するデモを披露

写真では見えないが超小型のDLNAサーバーを使い、同時に2台のDLNAクライアント機能搭載テレビにハイビジョン品質の映像を配信するデモを披露

「仕様として決めたんだから、MPEG-2以外は使わない。H.264が、MPEG-4がいくら良くても関係ない! BMLは使い続けるし、B-CASは永遠に続くんだ……なんて人が、(放送業界に)いるかいないかは別として」

と少々皮肉交じりの前置きしたうえで、古川氏は、映像制作現場ではすでにIPネットワークと新しい映像圧縮技術の活用も始まっているとした。NHKの番組「つながるテレビ@ヒューマン」などが、その代表例である。

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