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開発拠点、大和研究所のプレスツアーの様子をお届けする

引き継がれる堅牢性、“ThinkPad”開発の舞台裏に迫る

2007年06月08日 09時43分更新

文● 小浜 雅胤

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執拗な落下試験にも耐える

ノイズ検査や電磁波の検査なども行われていたが、圧巻だったのは落下試験だ。上下左右あらゆる面を下にして落下させたり、角を下にして落としてみたり、とにかく、これでもかというくらいに落下試験を行っていた。落とすたびに、ビクっとするような大きな音が鳴り響くので、「本当に壊れないのだろうか?」と心配に思ったほどだ。

残念ながら、落下試験の様子は撮影できなかった。堅牢性がThink Padの最大の売りなので、落下試験に関しては企業秘密なのだそうだ。

ノイズ試験1

ノイズ試験。パソコンのまわりにマイクを立て、HDDやファンから出るノイズを測定する。まずは、音がほとんど反響しない“半無反響室”の中で行う

ノイズ試験2

ノイズの指向性が高い場合、“半無反響室”では、マイクが音の方向から外れてしまうと正確に測定できない。そういったノイズに関しては、音が部屋内に均一に反響する“残響試験室”で測定する。ちなみに、「ノイズは何デジベル以下でないといけない」という国際的な基準はないので、会社ごとに基準は違う

無反響室の入口

残響試験室の入り口にあるダクト。室内にエアコンをつけるとノイズが起きてしまうため、別の場所にエアコンを設置し、ダクトで冷風を送っている

電磁波測定

電磁波測定。壁と天井は電磁波を反射しない素材で作られている。パソコンから発せられている電磁波を2機のアンテナで測定し、各国の基準に適合しているかをチェックする

電磁波測定

電磁派をチェックするアンテナ



ThinkPadの魂は引き継がれている

従来通り大和研究所が開発を行っているとはいえ。古くからのThinkPadユーザーの中には、「レノボに移ってもIBMと同等の開発力を維持できるのだろうか?」「クオリティーは下がらないだろうか?」と不安に思う人もいるだろう。IBMに比べれば、日本でのレノボの知名度は低いのでその考えはもっともだ。

レノボ・ジャパンの広報担当 石田聡子氏は次のように話す。「実はレノボに代わってからのほうが、IBM時代より開発がしやすくなってるんですよ。IBMの事業は多岐に渡っていて、パソコン事業はその中のほんの一部に過ぎません。メインはサーバー事業なので、ThinkPadの開発に資金を回してもらうのが難しかったんです。しかし、レノボはパソコンの会社です。レノボで一番収益を上げているのはThinkPadなので、ThinkPadに沢山の資金を回せるんですよ」

「顧客からのフィードバックを行ない、常に新たな検証・改良を続ける」という姿勢は、IBM時代から一貫して行なわれている。レノボに代わったあとも、品質が下がることはなく、むしろ故障などによる部品の交換率は年々下がっているそうだ。

また石田氏は、現在の社内の雰囲気について次のように述べる。「構想はあっても資金不足で実現できなかったことがやれるようになりました。製品開発だけではなく、新しいマーケティング戦略や広告を積極的に行っています。今の社内は、開発・マーケティング・事務などといった職種に関係なく、全員がひとつの方向に向かって進んでいるムードがあります」

ThinkPadのトレードマークとも言える“IBMロゴ”は、徐々に姿を消しつつある。しかし、IBMのロゴは消えても、開発者がThinkPadにかける強い気持ちは変わらないようだ。

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