マイクロソフト(株)は6日、スマートフォンなど携帯端末向けOS『Windows Mobile 6』を端末機器メーカーに提供を開始したと発表した。電子メールやウェブブラウジング、セキュリティーなど多くの機能が強化されている。
同日、東京都内にて開かれた開発者向け会議“Microsoft Mobile&Embedded DevCon 2007”では、米マイクロソフト モバイルコミュニケーションビジネス ジェネラルマネージャーのトニー・メストレス(Tony Mestres)氏や、マイクロソフト執行役常務 ビジネス&マーケティング担当の佐分利ユージン氏らによる基調講演が行なわれ、Windows Mobile 6の特徴などが説明された。
基調講演の冒頭でメストレス氏は、Windows Mobile搭載スマートフォン市場の現状について述べた。同市場は成長率が非常に高く、2006年度にはワールドワイドで600万台に達し、2007年上半期中にさらに500万台の上積みを見込んでいるという(マイクロソフトの会計年度は7月開始)。スマートフォン市場が立ち後れていると言われていた日本でも、年内に100万台の出荷を目指すとメストレス氏は述べて、国内でもスマートフォン市場に大きく力を入れていくことを示した。
Windows Mobile 6の特徴に挙げられているのは、以下の3点である。いずれもビジネスユーザーや企業システム用の端末として求められている要素と言える。
- モバイルメッセージング機能の強化
- 電子メール機能の強化
- ウェブエクスペリエンスの向上
- Windows Liveサービスとの統合と、Internet Explorer Mobileの機能強化
- セキュリティー・開発性の強化
- ストレージの暗号化、ポリシーベースの運用管理、.NET Compact Framework 2.0標準対応など
また、Windows Mobile 6には3種類のエディションが用意されており、端末メーカーは機器に合った機能を備えるエディションを選択可能となっている。標準対応の機能であっても、オプションコンポーネント扱いの機能については、搭載しないという選択も可能である。
- Windows Mobile 6 Standard
- 音声通話主体の通信端末向け。タッチスクリーンUIなどの機能は備えない
- Windows Mobile 6 Professional
- データ通信主体でタッチスクリーンを備える通信端末向け
- Windows Mobile 6 Classic
- 常時通信機能を持たない“非接続型”の端末向け。タッチスクリーンを備えるPDAなど
Windows Mobile 6で重視されているのは、ビジネスユーザー向け携帯端末としての利便性やセキュリティーの向上と言える。電子メール関連の強化はその好例で、パソコン用のOutlookシリーズに近い機能の実現や、Exchange Serverとの連携などに現われている。組み込みの電子メールソフト“Outlook Mobile”は、HTMLメールの表示やスペルチェック機能が実装されたほか、予定表を見やすくなるなどの改良が行なわれた。またExchange Server上にあるメールアイテムを対象に検索を行なう機能や、Exchange Server経由でSharePointサービス上にある共有ファイルにアクセスする機能も加わった。
また、組み込みのOfficeソフト“Word Mobile”“Excel Mobile”“PowerPoint Mobile”などは、パソコン用のOffice 2007で作成されたOffice 2007形式のファイル(.pptxなど)を扱えるようになった(Office Mobileはオプション扱いの機能で、製品によっては付属しない場合もある)。
ウェブエクスペリエンスに関する機能強化点としては、まずWindows Liveサービスへの対応“Windows Live for Windows Mobile”が挙げられている(オプション扱い)。従来は別途提供されていた“Windows Live Messenger”が付属したほか、ウェブベースのメールサービス“Windows Live Hotmail”、ウェブ検索サービス“Windows Live サーチ”、ブログサービス“Windows Live スペース”なども利用できるようになった。
Internet Explorer Mobileも機能強化が図られ、Ajaxを使用するウェブページを表示できるようになった。すでにウェブサービスでAjaxを利用するものは多く、待ち望まれていた強化点と言える。そのほかに、ウェブページのレンダリングスピードが高速化されたほか、高解像度のディスプレーを持つデバイス向けの高解像度対応などが図られた。ただし、タブブラウジング機能などは採用されていない。
セキュリティー面では、メモリーカードの暗号化がまず挙げられた。またExchange Serverとの連携により、端末に制限(パスワードのポリシーや有効期限など)をかけたり、ウェブベースの電子メールサービス“Outlook Web Access”を利用して、リモートで端末のデータを消去するなど、紛失・盗難時の情報漏洩を抑止する機能が搭載されている。
ソフトウェア開発に関する面では、.NET Compact Framework 2.0 SP1の標準搭載が挙げられる。.NETベースアプリケーションの開発と使用が容易になる。また“リモートデスクトップモバイル”機能も搭載された。WindowsパソコンにWindows Mobile 6端末からログインして、パソコン上のアプリケーションやデータを利用できる。
Windows Mobile 6対応のスマートフォンとしては、すでにソフトバンクモバイル(株)が対応製品を複数発表している。また(株)ウィルコムも、7日発表予定の端末でWindows Mobile 6 Classicを採用することを公表している。