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林信行のマイクロトレンド 第8回

パソコンテレビの革命児“Joost”

2007年05月26日 00時00分更新

文● 林信行(ITジャーナリスト)

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新技術に積極的な米国テレビ業界


 Joostにとって追い風となっているのが、最近の米国の放送業界の風潮だ。

 日本では既存の放送業界のしくみを守ろうとする動きが強いが、米国では、これまで作ってきた映像コンテンツという資産を、とにかく勢いのあるところに載せて広げたり、再利用することで盛り上げようという考え方が強い(この当たりは日本の放送業界の仕組みも含めて、月刊アスキーの最新号で詳しく取り上げている)。

Apple TV

Apple TV

 任天堂やソニーといったゲーム機メーカーや、アップルやマイクロソフトのようなIT系メーカーが、いかにしてリビングのテレビに進出しようかと競っている間、米国の映像コンテンツ業界は、そうしてゲーム機やApple TVをいかに追い風にできるかを考えている。

 さらにテレビだけに留まらず、全世界にテレビの利用者の2倍以上いるという携帯電話や今回紹介してるJoostのような新サービスにも番組を載せようと奮闘している。

 携帯電話で番組を流す場合も、ただテレビ用の番組をそのまま流すだけではなく、携帯電話で見やすい長さや明るさ、そして映像に編集し直してから放送する。例えば球技の放送では、ボールが携帯の小さな画面でも見えやすいように工夫するといったことをやっている。

 テレビのドラマ放送を盛り上げるためにウェブページ専用の番外編(ウェビソード)や携帯電話専用の番外編(モビソード)を用意したり、といった工夫も行っている(筆者が取材したITmediaの記事、「モバイルテレビで重要なのは“携帯ならでは”の番組編成──米Verizonのダーキン氏」も参考にしてほしい)。



Joostが過去のやり方に雪解けをもたらす!?


 コンテンツ、画質、そして使いやすいインターフェースもそろったJoostが日本で成功するかというと、それは分からない。現在、Joostで提供されている番組はすべて外国語で、日本語の字幕もない。

 それに、DVDのリージョンコードの例をあげるまでもなく、そもそもこれまでコンテンツの提供地域を絞り込むことに、躍起になっていた映像コンテンツ業界が、Joostの本サービス開始後、異なる地域からの利用者をどう扱うのかも正直分からない(だが、Joostが、こうした過去のやり方に雪解けをもたらすような期待も持っている)。

 こうやって優良なサービス、優良なコンテンツが次々と入ってくる中、日本の映像コンテンツ業界がどう動くかは注目したいところだ。


筆者紹介─林信行

著者近影 林信行さん

 フリーランスITジャーナリスト。ITビジネス動向から工業デザイン、インタラクションデザインなど多彩な分野の記事を執筆。『MACPOWER』『MacPeople』のアドバイザーを経て、現在、日本および海外の媒体にて記事を執筆中。マイクロソフト(株)の公式サイトで執筆中の連載“Apple's Eye”で有名。自身のブログ“nobilog2”も更新中。オーウェン・リンツメイヤーとの共著で(株)アスペクト刊の『アップルコンフィデンシャル(上)(下)』も発売中。



*次回は6月8日掲載予定


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