市場が飽和することはない
さて、更新料ゼロ円の理由は分かったが、これは新規ユーザーの獲得を見越してのことだ。ある程度の数が市場に出回ったあとは、新規ユーザーの獲得が難しくなり、開発や更新ができなくなる時が来るのではないか。
編集部からの質問に小嶋氏はまだまだ市場にチャンスはあると答える。
「日本全国で現在稼働しているパソコンの総数を仮に4000万台と仮定しましょう。ウイルスセキュリティZEROは発売から9ヵ月で124万本売れました。仮に毎年200万本ずつ売っても、すべてのユーザーに行き渡らせるためには、20年かかる計算です。ウイルスセキュリティZEROのサポート期間はあと10年ありますが、この間に市場が飽和するということはまずありません」
昨年のパッケージ版セキュリティーソフトの販売総数は、全メーカー合わせて400万本弱。残りの9割(約3600万台ぶん)のうち、一定の割合がZEROに乗り換えてくれるだけで十分だと小嶋氏は言う。
「非常にざっくりとした計算になりますが、3600万台を1年365日で割ると、毎日10万弱のユーザーが契約更新をするか、新規にソフトの導入をするかの選択を迫られていることになります。そのうちのごく一部――10万人の中の5000人強が乗り換えてくれるだけで、年間の販売数は200万本に到達するのです」
メーカーの視点を捨て、ユーザーの視点に立つ
ソースネクストのソフトウェアはパッケージ販売が中心だ。セキュリティーソフトは、個人向け以外にも法人向けの市場や、BtoBのバンドルビジネスなどがある。こういった分野には関心がないのだろうか?
「当社では、もちろんダウンロード販売も行なっていますが、ダウンロード販売がパッケージ販売の比率を“超えることはない”ですし、“むしろ超えてはならない”とも考えています。パソコンへのバンドル(プレインストール)も現状では考えていません。バンドルしてしまうと、“タダでついている製品”と捉えられ、仮に安価な値付けをしたとしても買い得感をユーザーに提供しにくくなるためです」
一方で「パソコンとセットで買った際にはソフトの代金を割引する」といった対応は積極的に行なっているという。小嶋氏は、バンドルビジネスはソフト会社やパソコンメーカーにとって利益になるが、これを実際に売っている販売店の利益にはならない。これに対してセット販売であれば、ハード/ソフトメーカーに販売店を加えた3者に利益が分配され、ユーザーに対して製品を売ってくれる販売点側のモチベーションも上げられると話す。
これ以外にもパッケージの大きさや形状を工夫するなど、細かなノウハウがあると小嶋氏は言う。