キヤノンの『IXY DIGITAL 810IS』はコンパクトデジタルカメラの定番、“IXY DIGITAL”(イクシィデジタル)シリーズの中でも光学式手ぶれ補正(IS:Image Stabilizer)を搭載してより手軽に使えるモデルだ。IS付きのIXY DIGITALとしては既に『IXY DIGITAL 800 IS』(600万画素、関連記事)、『IXY DIGITAL 900 IS』(710万画素、関連記事)があるが、本機は有効800万画素へ高画素化されたほか、細かく機能アップしている。
レンズは900 ISが28~105mmの光学3.8倍ズームなのに対し、本機は800ISと同じ35~140mmの光学4倍ズームを搭載し、広角寄りの900 IS、やや望遠寄りの810 ISという差別化がなされている。
ボディーデザインは基本的に800 ISを継承しており、本体サイズ/重量ともに同一だ。曲線を各部に取り入れた面構成や、背面右端に埋め込まれたモードダイヤルなども同様である。ただし表面処理は変更されている。フロントが“パールシルバー”、背面がシックなグレーの“グラファイトシルバー”、中間部にはやや淡いグレーの“ムーンライトシルバー”、さらにレンズ周囲が“鏡面仕上げ”という凝ったデザインを採用している。
背面の光学ファインダー横にある電源ボタンやシャッターボタン周囲のズームレバー、IXY DIGITALシリーズでおなじみとなったカーソルキーとFUNCなどの操作部は、基本的に800 ISと変わりないが、新たにカーソルのリング部には“タッチホイール”が搭載された。これは、ほかのIXY DIGITALシリーズ(『IXY DIGITAL 80』や『IXY DIGITAL 1000』)などで採用されている操作性で、リング状のカーソルに半押し機能が付き、どこを押したかが画面上のアイコンで分かるというもの。
本機ではさらにこの機能が進化し、リングを回転させるように指を動かせば(リングそのものは回らない)ダイヤル操作のように再生画面の送り/戻しや、メニュー表示が各種のモード選択が行なえる。もちろん、従来どおりタッチホイールの一部を半押し状にすればフラッシュやISO感度の設定が切り替わるだけだが、素早く一周するようになぞるとモード選択に入るというのが、やや微妙なタイミングを必要とする。
このほか、背面の液晶パネルは色再現領域の広い“クリアライブ液晶”を採用。反射防止コートに加えてキズ防止コート、汚れ防止コートも併用することで指紋の付きにくい『IXY DIGITAL 10』(関連記事)と同様のものとなった。顔認識機能“フェイスキャッチテクノロジー”も、フラッシュの調光や再生時の赤目補正にも用いられるなど、IXY DIGITALシリーズにおける最新技術が一通り盛り込まれている。
光学式手ぶれ補正機構を“遊び”に用いた新技術
――“ファンタジーナイトモード”
IXY DIGITALシリーズにとって新機能となるのがシーンプログラムとして用意された“ファンタジーナイトモード”だ。これは夜景撮影などの際に背景で写る光点を星やハート型の軌跡を描いたように写し込むものだ。銀塩写真などでも利用される“クロスフィルター”(十字や六方向の光条を写し込むことができる光学フィルター)や、光点が模様として見えるパーティグッズ“ホロスペックス”(『ミラクルメガネ』などの名称で販売されている)のような効果が得られるわけなのだが、驚かされるのはこの実現には光学フィルターを用いているわけではないことだ。ファンタジーナイトモードは夜景撮影時に用いられるわけだが、スローシャッターの露光時間の間に光学式手ぶれ補正機構のためのレンズを素早く動かすことで光点を各図形に描画している。このため、完全にスローシャッターのみで撮影するのであれば背景も前景も図形描画用に動いてボケた画像となるが、人物などのメイン被写体はフラッシュ光で照らされて止まって写すことができるわけだ。