インテル(株)は27日、米インテル サーバー・プラットフォーム事業部長のカーク・スカウゲン(Kirk B.Skaugen)氏による記者説明会を開催し、同社のサーバー向けCPUやプラットフォームに関する最新動向についての説明を行なった。
スカウゲン氏はプレゼンテーションや質疑応答の中でたびたび、ライバル米Advanced Micro Devices社に対する製造技術面での優位を強調した。65nmプロセス世代で製造されたクアッドコアCPUを多種出荷しているのに加えて、2007年後半に投入予定の45nmプロセス世代CPU“Penryn”(ペリン)の開発が順調に進んでいる自信の表われと言えよう。
スカウゲン氏はまず、同社の顧客の多くは、消費電力当たりの性能を重視すると述べたほか、同じマザーボード、同じプロセッサーソケット、さらに同じ熱設計枠のプラットフォームで、CPUをアップグレードできる安定したインフラを提供することの重要さを説いた。この点についてはAMDも同様の見解を示しており、サーバー製品では同じプラットフォーム内で、異なる世代のCPUをサポートできる点が重要視されていることがうかがえる。
またスカウゲン氏は製造プロセスの微細化と新しいマイクロアーキテクチャーの導入を交互に行なう同社の手法を“チクタクモデル”と称し、1つのプラットフォームで5種類のCPUをサポートできるとした。質疑応答の際にもスカウゲン氏は、AMDが65nmプロセスへの製造設備の移行と新アーキテクチャーの投入(クアッドコアCPUのBarcelona)といった2つの移行を同時に進めている点について、「飛んでいる飛行機のエンジンを修理するのはやりたくない」という言い回しでリスクの高さを指摘。チクタクモデルはローリスクで、大規模な量産化に適していると述べた。
なお、スカウゲン氏が提示した資料には、45nmプロセスで製造される2008年の次世代マイクロアーキテクチャーCPU“Nehalem”(ネハレム)に続いて、Nehalemの32nmプロセス版である“Westmere”(ウェストメア)が登場し、その翌年には32nmプロセスの新アーキテクチャーCPU“Gesher”(ゲシャー)が続くと記されていた。
たびたび同社幹部が言及しているインテルプロセッサーを支える3要素(プロセス技術、マイクロプロセッサーの設計、製造施設のネットワーク)についても触れた。プロセス技術については、65nmプロセスから45nmプロセスへの移行を、3つの製造施設を45nmプロセスへと移行させることで、2008年の予定から2007年後半へと前倒しを実現。特に2006年から2007年にかけてのXeonプロセッサーやプラットフォームについては、1四半期前後前倒して発表・投入できたことを、「エンジニアリングの成功である」と述べたほか、2008年予定のIA-64アーキテクチャーのマルチコアCPU“Tukwila”(タックウィラ)も順調に開発が進んでいるとした。
サーバー向け製品のビジネス面では、1月に発表された米サン・マイクロシステムズ社との戦略的提携の発表がまず取り上げられた。スカウゲン氏はこの提携が複数年に渡る長期的なものであり、シングルプロセッサー搭載システムから2プロセッサー/4プロセッサー/それ以上など、多くのシステムにXeonプロセッサーが採用されるとした。サンはすでにAMDのOpteronをサーバー製品に採用しているが、スカウゲン氏は「サンはAMDのいい顧客だった。これからはインテルにも」と述べて、両社の関係がサンとAMDの関係に劣らないのものになるとした。インテルCPUを搭載する製品は2007年前半から登場し始め、後半には多くの製品が投入されるという。ただし採用されるのはXeonプロセッサーがカバーするセグメントのみで、Itaniumプロセッサーや8プロセッサーを超えるような大規模なシステムは対象としないとのことだ。
スカウゲン氏はXeonの性能面での優位についても述べた。システム全体での消費電力がシングルコアのXeon自体からほとんど変わっていないのに対して、クロック周波数は下がり、演算性能自体は上がっているというグラフを示したほか、デュアルコアOpteronとデュアルコアXeon 5100番台やクアッドコアXeon 5300番台との各種業界標準ベンチマークのスコア比較グラフを提示して、性能面で大きく上回るとした。さらにPenrynベースのクアッドコアCPUが登場すれば、性能はさらに向上すると自信を示した。
その他にも、2007年投入予定の4プロセッサーサーバー向けプラットフォーム“Caneland”(ケインランド)の利点や、今後のサーバー向けCPUの動向についても簡単に触れた。Canelandは“Tigerton”(タイガートン)と呼ばれるマルチプロセッサーシステム向けクアッドコアXeonと、4プロセッサーに対応する新しいチップセット“Clarksboro”(クラークスボロ)で構成されるプラットフォームである。CPUとチップセット間を、“専用高速インターコネクト”と称するCPUごとに分離されたバスで結ぶほか、チップセット内に64MBのスヌープ・フィルター・キャッシュと呼ばれるキャッシュメモリーを内蔵し、パフォーマンス低下を抑制する。メモリーモジュールはFB-DIMMをサポートするほか、“I/Oアクセラレーション・テクノロジー”(IOAT2)と呼ぶI/O高速化技術も取り込むなど、新技術を多数盛り込んだプラットフォームとなる。
また、現行の低電圧版クアッドコアXeon L5300番台をベースにした3GHz版のクアッドコアXeonの投入や、HPC/ワークステーション用途向けの1600MHz FSBをサポートするチップセット、CoreマイクロアーキテクチャーベースのXeon 7000番台、45nmプロセスのサーバー向けデュアル/クアッドコアCPUなどを年内に投入するという。