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“エッジ”な若者がターゲット──米国のケータイ向け配信サービスが日本上陸

2007年03月16日 18時00分更新

文● 森 英信

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平井氏

アンプドモバイル(株)の代表取締役、平井清人氏

米国のMVNO(仮想移動体通信事業者)であるアンプドモバイル(amp'd mobile)社は今月1日、au端末向けのコンテンツ配信サービス“amp'd mobile”で日本のモバイルコンテンツ市場に参入した。

米国では携帯端末に加えて、映画やテレビ番組、ストリーミング中継、音楽配信なども手掛けており、特に若者の支持を集めている同社。今後、日本市場にどう切り込んでいくのか、アンプドモバイル(株)の代表取締役、平井清人氏を取材した。


自社で制作部隊も持つケータイ向けエンターテインメント企業


── 米国での事業概要を教えてください。

ロゴ

au端末でアンプドモバイルのムービーを再生したところ

平井氏 アンプドモバイルは、米ベライゾン・ワイヤレス(Verizon Wireless)の3Gネットワーク“EV-DO”をベースにし、携帯電話向けのエンターテインメントコンテンツを提供しているMVNOです。

米国で配信しているコンテンツは、MTVやESPNなどから提供を受けている番組のほか、自分たちでスーパークロス(スタジアム内などに作った人工サーキットで行なうバイクレース)やカスタムカー、音楽などのライブイベントをスポンサードし、携帯電話向けにストリーミング中継をしています。

自社で制作スタッフを抱えているのも特徴です。ライブ中継専用のトラックも用意しまして、10秒くらいの誤差でストリーミング中継したり、イベントのハイライトシーンの待受け画面やFlashスクリーンセーバーをその場で作って配信しています。

こうしたコンテンツを日本でも展開すべく、日本に子会社を設立し、今月1日にau向けサービスをスタートしました。スタート時のラインアップは、“着うたフル”、“着うた”、“エンターテインメント”、“ライフスタイル”、“スポーツ”の5サイトになります。

日本版アンプドモバイルの携帯サイト。利用料金は単一コンテンツでの購入と、一定のポイント分コンテンツを購入できる月額契約の2種類を用意。例えば、着うたの場合、単一では1曲あたり105/210円、月額では210/420/630円となっている


── 日本に進出した理由は?

平井氏 まず、日本のモバイルコンテンツ市場の規模が大きく、3Gのインフラも整備されていることです。欧州もマーケットは大きいのですが、国や言語が多様でキャリアーもたくさんいます。

また、日本のユーザーの“コンテンツに対する要求レベル”は非常に高いので、日本市場で受け入れられれば、そのほかの国への展開できるクオリティーを保てるとも思っています。特に我々は動画にこだわっていますので、これから日本では一気に動画市場が拡充すると考えています。


本社ビルはテレビドラマ『24』のセット


── コンテンツ配信サービスというと競合が多そうに思われますが、御社の特徴は何でしょう?

平井氏 我々の強みとしては、先ほど触れた自社で動画コンテンツを作れるということに加えて、若者に特化したブランドというのが挙げられます。

アンプドモバイルのターゲットユーザーは15~35歳で、特にフォーカスしているのは18~25歳の流行に敏感な人たちです。北米におけるこのユーザー層は、当たり障りのない普通のメッセージは求めていなくて、どちらかといえば過激でエッジなコンテンツを求めています。

コンテンツ例

コンテンツの一例。平井氏によれば、若者が好きなブランドと提携したり、スヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)のような有名アーティストなどとタイアップしたコンテンツもあるとのこと

例えば、人気ロックバンドやスーパークロスのライブ中継、セレブ情報などに加え、ブッシュ政権を小学校に見立てたアニメーションや、ロサンゼルスにある日本の原宿にあたるようなストリートのレポートを提供しています。

ビジネスユーザーをターゲットとし、ニュースなどを中心に扱う大手の携帯キャリアーでは、こうした“とんがった”タイトルを扱うのはなかなか難しいでしょう。

ブランディングには特に気を使っていて、それはサイトの見た目にも現われています。これまでの携帯サイトは、音楽や動画といったジャンルやコンテンツごとにユーザーインターフェースな操作方法がばらばらで、まとめてブランドとして訴えることが難かったのです。一方、我々は複数のサイトにまたがる共通のインターフェースを用意しています。

余談ですが米国本社のオフィスも特徴的で、人気テレビドラマ 『24』のファーストシーズンで使われた建物を利用しています。一般公開はしていませんが、取引先との打ち合わせに使うと、最初の30分は“撮影大会”になりますね(笑)。

米国ではアンプドモバイルの関連グッズも販売している(写真左)。イベントでは、何とコンドームを配ったことも!!(右) “ENTERTAIN YOURSELF WITH AMP'D MOBILE”とはシャレが効いている


海の向こうでも、コンテンツを買うのは若者


── ところで米国では携帯電話向けの動画配信サービスは普及しているのでしょうか?

平井氏 一般的にはまだまだですが、それは北米の携帯キャリアーのコアユーザーがビジネスユーザーだからであって、我々のターゲットである若者はビデオや音楽の配信サービスを受け入れてくれる比率がものすごく高いです。

コンテンツ購入のARPU(アープ:1契約当たりの収入)を見てみると、市場の平均額は米国も日本と同じくらいですが、我々の場合はその6倍~7倍くらいあります。

── 米国でのモバイル向け動画配信サービスというと、競合の“MobiTV”はサービス加入数が100万件を突破したと発表しています。アンプドモバイルのユーザー数はどれくらいですか?

平井氏 昨年12月時点で17万人です。MobiTVは、我々のようなMVNOではなくコンテンツプロバイダーで、提供するコンテンツも一般人をターゲットとした内容が多いです。

── 最近、流行しているユーザー発信型の動画共有サービスは提供していますか?

平井氏 米国ではすでにプロトタイプが始まっています。ブログのようなコミュニティーサイトを用意し、ユーザー同士が携帯電話器で撮ったビデオを投稿してシェアするような仕組みです。 同じようなことを日本でも展開しようと思っています。

平井氏

平井氏によれば、米国のアンプドモバイルで最も人気があるコンテンツがビデオで、次がミュージック、ゲームの順だという


若者のハートを捉えられるか? 今後の日本での戦略


── 日本オリジナルのコンテンツは用意されますか?

平井氏 段階的には行ないたいですが、まず日本でブランドを浸透させるのが先ですね。その後、日本のコンテンツプロバイダーなどとも提携して、最終的に国内と海外のコンテンツが半々になるようにしていきたいです。日本オリジナルのコンテンツを海外に提供することも考えています。

── 日本で配信中のビデオには、日本語のテロップがついています。これは日本側でローカライズしたものですか?

平井氏 ええ。翻訳には力を入れていて、直訳ではなく、モバイルの画面サイズに合わせて意訳しています。

ちなみに米国本社では、サイトだけでなく、通信キャリアとしてのバックエンドの開発においても、日本人技術者が活躍しています。やはりモバイル関連の実装技術は日本人に一日の長があり、日本人ならではのきめ細かい職人技も非常に評価されています。

── 今後、日本市場ではどう展開していきますか?

平井氏 具体的な売り上げ目標などは申し上げられませんが、感覚的には3年以内にコンテンツプロバイダーとしてトップ20に入りたいと考えています。

au以外のキャリアーについては今年の夏くらいの展開を考えています。また、夏ぐらいから、アーティストやスポーツイベントを積極的にスポンサードしていきたいと思います。”渋谷ジャック”のような計画もあります。

米国本社ではとにかくほかの企業では見たことのない出来事が次から次へと現われて、働いている我々も驚きの連続です。日本でもやっぱりそういったノリでやっていきたいです。やるほうはなかなか大変なんですけどね(笑)。


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