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遠藤諭の“ご提案” 第1回

Macをはじめよう

2007年03月14日 18時00分更新

文● 遠藤諭

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アップルさまへの「ご提案」は、これでございます。


 Get a MacのMac君を起用するに当たって、もちろん、従来のアップルのコマーシャルのようにカッコいい系やアイドル系のタレントを使うことも考えられただろう。しかし、この広告では、パソコン君とのデコボココンビリアリティーが求められたところが、Aさんの指摘した“上手いアピール手段”なのである。つまり、Mac君にはどんなタイプがよいのか?

  • ギーク(geek) よりコンピュータ寄りは「×」
  • ナード(nerd) おたく=パソコン君との比較の意味でも「×」
  • ドーク(dork) いっちゃってる系はMacにいがちなので「×」

 こうやって、消去法でやっていくとジャスティン・ロングが、いかにこの広告の適任かが分かるだろう。Aさんの“slacker”は、ちと言い過ぎかもしれないが、要するに、新しい“カッコ悪さ”の“カッコ良さ”みたいなところがある。

ギーク、ナード、ドークのトイフィギュア

左より、ギーク、ナード、ドークのトイフィギュア。何となくイメージがわきます?

 WSJの記事は、「Get a Mac」日本版の「Macをはじめよう」について、広告代理店Beaconのエグゼクティブプランニングディレクター、リンダ・コバリク氏のコメントを紹介している。パソコン君のほうのキャスティングも問題ではないかと述べているのだ。

"The Mac guy looks like he is wearing Uniqlo, the Gap, or Muji. These say simple and low cost -- low-end brands," says Ms. Kovarik. As for the PC guy looking like a nerd, "They're really quite revered now in Japanese culture," she says.

「Mac君は、ユニクロやGAP、あるいは無印良品を着ているようですよね。これは、(Macが)シンプルでローコスト――ローエンドブランドであると言いたいんです」とコバリク氏は話す。オタク(=nerd)っぽく見えるパソコン君については「日本の文化において、彼らはホントに尊敬されてるんですよ」と彼女は言う。

 “オタク”(おたく)は、20年以上前に、私の仲間うちで使っていた言葉である。最初は“愚者”と呼んでいたのが、おたくらが「おたく」と呼び合うことから「おたく」になった。実は、1970年代から1980年代にかけて、おたく以外の若者が、相手に対して「おたく」と呼びかけるのは珍しくはなかった。1979年の映画『太陽を盗んだ男』では、ラジオのDJである池上季実子(沢井零子)が、原爆を作る中学教師の沢田研二(城戸誠)と対面するシリアスな場面で、

おたく……

と切り出していて、いま見ると吹き出しそうである。記事でコメントしているコバリク氏が、ここまで了解しているかは別としても、なかなか日本を知っている指摘といえる。しかし、日本版のパソコン君はオタク的なのか?

 日本版でのラーメンズの起用は、なかなか考えられた結果なのは間違いない。ジャスティン・ロングのような役者の不在、日本に馴染まぬ比較広告といった難問を解いたことは、賞賛されるべきかもしれない。ローカライズを諦める手もあったはずだが、あえて挑戦したことは文化的に意義のあることだ。ただ、WSJの記事も言っているように文化の違いは大きい。そこで、私のこのコマーシャルに関する「ご提案」というものがある。それは、

Get a Macの日本版は“落語”でやったらいかがでしょう?

である。「ヨッ! パソコン君、ウイルスの心配はどう?」「そりゃまた大変だ」てな感じで一人二役でやってしまう。ありがちなお囃子で始まる落語フィーチャーの広告ではなく、白バックで、ポップな感じでやってしまいましょう。

ご提案

…というわけで、Get a Macの日本版は“落語”でいきませんか?

 さて、ジャスティン・ロングだが、夏に公開の『ダイ・ハード4』では、サイバーテロリストとして登場するらしい。なんと、セキュリティを破る側に回るのだ。

 以上、「ご提案」でした。


なお、ジャスティン・ロングに関するアップデート情報をブログ“東京カレー日記”に載せた
http://blogmag.typepad.jp/tokyocurrydiary/2007/04/mac_93df.html


筆者紹介−遠藤諭

 (株)アスキー取締役。91年〜2002年まで『月刊アスキー』編集長、現同誌編 集主幹。日本のモバイルやネットのこれからについて、業界での長い経験を生か した独自のスタンスで発信している。著書に、日本のコンピュータ黎明期に活躍 した人たちを取材した『新装版 計算機屋かく戦えり』、朝日新聞に連載した 『遠藤諭の電脳術』など。ブログ“東京カレー日記”の最新記事は“バズワード とbuzzword、意味が違い過ぎる!”。


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