スマートフォン向けOSで世界トップシェアを持つシンビアン(株)は8日、東京・汐留の日本法人本社において報道機関向けの事業説明会を開催した。
説明会で報告された主な内容は以下のとおり。
- 2006年の事業報告
- 日本法人の今後のビジネス見通し
- 開発者支援の強化
- セキュリティーへの取り組み
日本のシンビアン端末はここ1年で2倍に増加
事業報告とビジネスについては、シンビアン(株)の代表取締役社長、久 晴彦(ひさはるひこ)氏がプレゼンテーションを行なった。まず報告されたのは、Symbian OS(シンビアンOS)を搭載したスマートフォンの累積出荷台数が1億1000万台を突破したということ。
久氏によれば、この1億1000万台のうち「半数近い5170万台が昨年中に出荷され、その20%が日本向け」とのこと。また「日本は2005年から2006年の約1年間で約2倍に成長した、我々にとって最も貢献度の高い市場」と発言し、ここ数年でのSymbian OSの急激な伸びと日本市場の重要性を改めて強調した。
久氏は、「Symbian OSといえばノキア端末を思い浮かべがちだが、日本での稼ぎ頭は実はNTTドコモのFOMAだ」ともコメントした。欧米とは異なり、日本ではいわゆるスマートフォンタイプよりも携帯電話タイプの端末に軸足を置いている実状を述べ、日本でのSymbian OS搭載端末が累計で53機種を突破したことも明らかにしている。
今後のビジネスについては、「日本ではリナックスのシェアが約4割あり、やや押され気味なので、今後は富士通(株)や三菱電機(株)、シャープ(株)といったライセンシーへのサポートを強化し、より一層のシェアを拡大を狙う」と、攻めの姿勢を見せた。
また久氏は「キャリアや開発者、日本に30社あるパートナー企業と手を組み、みんなが“win-win”の関係になれるエコシステムも築いていきたい」とも語っている。
ApacheやVNCをシンビアンに移植できる
開発者支援とセキュリティーのプレゼンテーションは、同社のディレクターテクニカルコンサルティング、山田貴久(やまだたかひさ)氏が担当した。
開発者支援策については、「アプリケーションを自由に追加できるのがSymbian OSのメリット。現在世界に約7000本あるアプリをもっと増やすお手伝いをしたい」と述べた上で、“POSIX on Symbian OS”と呼ばれる新たな開発環境を披露。
そのメリットについて、「このオープンな開発環境を利用することで、開発者はすでにC言語で作成済みのアプリケーションやリナックス用サーバーなどを、効率よくSymbian OS向けに移植可能になる」と紹介している。
セキュリティーについては、Symbian OSを狙ったウイルスの出現とその対策に触れた上で、「認証や暗号、公開鍵といった従来からの方法に加え、最新の『Symbian OS 9』では、OSレベルで動作アプリの監視が可能になった」と語った。
山田氏は「より強固にセキュリティーが保てるようになったSymbian OSは、オープンでありながら誰もが安心して楽しめるOSに成長したと確信している」と締めくくっている。
折しも、前日の7日には、マイクロソフト(株)が携帯端末向けOS『Windows Mobile』に関する戦略説明会を、国内で開催したばかり(関連記事)。
消費者にアピールするマイクロソフトと、端末メーカーへの働きかけを強めるシンビアン。両社の向く方向は異なるが、スマートフォンにおけるOSのシェア争いは、今後一段と熱を帯びてきそうだ。