2005年、日本で出荷されている携帯電話機のほとんどは“スマートフォン”だった──。携帯電話機用のOS“Symbian”で知られるシンビアン(株)は8日、記者説明会を開き、その中で世界各地の市場におけるスマートフォンの割合を解説した。
グラフを見ると、欧米や中国、その他の地域では、スマートフォンの出荷台数(ブルーの円)が出荷総数(オレンジの円)に比べて圧倒的に小さいことが分かる。一方、日本はオレンジとブルーの円がほぼ同じサイズで、“スマートフォンだらけ”ということになる。
ここで面白いのは同じ日本市場のスマートフォンでも、Windows Mobileを手掛けるマイクロソフト(株)の見解が少し異なるということ。
7日に開催されたWindows Mobileに関する説明会では、日本のスマートフォン市場について「これまでアーリーアダプター層に支えられてきたが、Windows Mobile端末のラインナップが増加し、ユーザーが拡大するとともに、ビジネス層へも浸透しはじめた」と語られている(参考記事)。こちらの話を聞くと、スマートフォンはまだ始まったばかりという印象だ。
日本で定義が難しいスマートフォン
2つのエピソードから分かるのは、日本で“スマートフォン”と言った場合に、語の指す範囲が意外と広いということ。今回では、シンビアンの場合が広義のスマートフォン、マイクロソフトの場合が狭義のスマートフォンとなるだろう。
われわれメディアもスマートフォンを紹介する際、“多機能携帯端末”、“音声通話とネットワーク通信が可能な携帯端末”、“PDAのように使える携帯電話機”といった解説を加える。
何となくしっくりくるように見えるが、よく考えてみれば、今や日本では、普通の携帯電話機でもカメラや音楽プレーヤー、ゲーム機として使える多機能な仕様だ。もちろんウェブやメールといったネットワーク通信も可能だし、PDAのように住所録やスケジュールの管理にも対応できる。
一方、海外では先にシンビアンが示したグラフのようにスマートフォンは少数派。先の“多機能かつネットワーク通信が可能で、PDAのように使える携帯電話機”という説明でも通用する。
スマートフォンという輸入語が日本で厳密に定義できないのは、実はこの“内外差”が影響しているのだろう。ちなみに旧ASCII24の1999年の記事では、スマートフォンに“情報処理機能を持つ小型音声通信端末”という注釈を加えていた。
もっとも、スマートフォンが何であるかが厳密に決められていなくても、メーカーは実はあまり困らないのかもしれない。要は多機能端末をわかりやすく売り込むためのキャッチコピーが“スマートフォン”というだけで、語のブランド力さえあれば問題ないという見方もある。
いずれにせよ、機会があったらぜひ各メーカーが捉える“スマートフォン”を整理してみたいものだ。今回のシンビアンの説明会でも、スマートフォンという語の定義についてやはり明示されなかった。
ちなみに説明会では、2006年第4四半期におけるスマートフォン用OSのシェアも公表された。この資料によれば、日本ではシンビアンが6割、Linuxが4割で、マイクロソフト系のOSは0.5割にも満たない。