このページの本文へ

【インタビュー】

SaaS市場の啓蒙者として「Zebra」を広めたい――フィードパスに聞く

2007年03月02日 21時38分更新

文● アスキービジネス編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

マッシュアップを実現するZimletを拡充、コミュニティの計画も


――そのZimbraを展開するにあたり、フィードパスは「feedpath Zebra」と名づけました。ZebraはZimbraをローカライズしたものと考えてよろしいのですか。

後藤氏:Zebraには大きく3つの主軸となる機能――「Webメーラ」「スケジューラ」「共有ドキュメント」があります。これらの機能については、もともと十分な機能を持っているので、我々がそこに付け加えるものは基本的にないと考えています。

 ただ、Zebraには、他のWebサービスと連携するための「Zimlet」(ジムレット)と呼ばれるプラグインがあります。これに関しては、日本にあったカスタマイズや日本向けのZimletを開発し、提供しています。

葛山氏:Zimletを使った連携機能では、たとえばメール本文中の「昨日」という文字列をマウスオーバすると、昨日の予定をポップアップ表示するといったことができます。このとき、英語では「Yesterday」と書くのに対して、日本語にはいろいろな表記がありますよね。もちろん、すべては無理ですが、ある程度の表記をカバーしています。要するに、ローカライズとはいっても、単純にUIを日本語化しただけでなく、日本のビジネスシーンで使えるように対応させたという面があります。

(写真左から)feedpath Zebraの主軸となる機能「Webメール」「スケジューラ」「共有ドキュメント」。メールでは絞り込み機能も充実している

――ZimletはZebraの大きな特徴ですよね。Zimletのメリットを教えてください。

スケジューラや地図と連携するZimletのサンプル。特定の文字列をマウスオーバするとポップアップで表示する

スケジューラや地図と連携するZimletのサンプル。特定の文字列をマウスオーバするとポップアップで表示する

葛山氏:Zimletを使うと、自社が何がしたいかによってZebraの機能の作りこみができます。従来であればシステム連携を図るのに膨大な工数、コストがかかっていましたが、一般的なWebサービスのAPIが公開されているアプリケーションであれば、Zimletを使って非常に簡単、迅速に連携できてしまうのが特徴ですね。アプリにもよりますが、ジンブラ社が公表しているデータでは、1アプリあたり3~4時間あれば連携できるという実績があります。

 ちなみにZimletは、メール以外にも共有ドキュメントやスケジュールのデータをキックにしてアプリを起動することもできます。

――Zimletのような“マッシュアップ”は、コンシューマ向けのサービスではよく耳にします。Zimletは企業向けのシステムとの連携も可能なのでしょうか。

葛山氏:米国のZimbraの例では、発注システムと連携するZimletがあります。メール本文の注文書ナンバーをマウスオーバすると概要を表示し、さらに権限者であればそのままZimbra上で承認や却下ができるというものです。さらにもっと複雑な作業もテンプレートを用意することで対応可能です。

 ERPなどの企業システムでは、メーラで承認依頼のメールを開き、システムにログインして承認するといった手順を踏むのが一般的ですが、それではメールとシステムとを行ったり来たりすることになります。普段何気なく行なっている行為ですが、実は非効率なんですよね。Zebraは、メーラ上であらゆる業務を済ませてしまおうというアプローチで設計されていますので、確実に業務が楽になるはずです。

――Zimletはどのようにして提供されているのでしょうか。

葛山氏:Zimletは、フィードパス社としても提供していきますし、仕様が公開されているので自社で作っていただくこともできます。基本的には「好きなようにしてください」という非常にオープンなものです。

 米国ではジンブラ社がコミュニティを自社で運営していて、現在20種類ほどのZimletが公開されていますし、定期的にZimletのコンテストも開催しています。フィードパス社としても、よいZimletを作ってコミュニティに公開していこうと考えています。また、日本でもそう遠くない時期にコミュニティを作る計画があります。

 我々は、ZimletはZebraを普及させていくひとつのポイントだと考えているんです。ユーザーにとって便利なZimletを作り、それが広まって、フィードパス社のサービスを使っていただく。そうしたエコシステムを作っていきたいですね。

――実際にZimletを追加する作業はどのようにして行なうのでしょうか。誰でも自由に追加できるのですか。

葛山氏:自社でサーバを立ててZebraを導入するケースでは、現状はコマンドベースですが管理者が自由に追加できます。  一方、今回当社から提供するSaaS(Software as a Service:マルチテナント型のASPサービス)モデルの場合は、サービス保証の観点からお客様が作ったZimletの追加は控えていただいています。SaaSでは、Zimletの動作を含めて我々が保証をしていくことになりますので、ご了承いただければと思います。

 ただ、フィードパス社としては、専任の技術スタッフを置いて、有益なZimletはどんどん開発・追加していきます。その際は、全利用者に一斉に追加されるものと、今後開設する「Zimletギャラリー」というサイトで必要なものを選べるようにするつもりです。

――今後、フィードパス社としてはどのようなZimletを計画されていますか。

葛山氏:Zebraのターゲットは中堅中小企業ですので、そこに軸をおいたものになります。たとえばグループであるサイボウズの製品は、ターゲットとするユーザーが近いこともありますし、連携していきたいと考えています。

 それ以外では、VoIPやIMのソリューションのニーズをいただいています。すでにSkypeやAsteriskのZimletは用意されていますが、ほかにもさまざまな製品がありますので、ラインナップを拡充していく方向で検討しています。

【次ページ】SaaSでフィードパスが目指すものとは……

カテゴリートップへ