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林信行のマイクロトレンド 第3回

米国で盛り上がる“OpenID”

2007年03月02日 13時14分更新

文● 林信行 (ITジャーナリスト)

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2007年は“アンバンドリング”がキーワード


 Web 2.0の時代になって、インターネットでは“マッシュアップ”(統合)という言葉がよく使われるようになった。筆者はマッシュアップが注目されれば、その逆の“アンバンドル”(切り離し)も重要になると考えている。

 つまり、サービス開発者は自分の得意分野だけに注力し、ほかの会社でもできる機能は潔くアンバンドルして、必要ならあとでマッシュアップすればいいのである。

 先に言った筆者のアイディアは、まさにSNSから“認証/プロフィール管理機能”をアンバンドルすることにほかならない。

 先進的な企業の中には「すでにユーザーの個人情報に旨味がある時代は終わった」と考える人も多い。企業がユーザーのプロフィールを抱えることは、個人情報流出のリスクを背負いこむことも意味する。それなら、面倒な情報の管理は他社に任せてしまえばいい。



ID再取得の手間がなくなるのも魅力


 一度、IDとプロフィールを登録し、友達関係を構築しておけば、同じ情報をほかのサービスでも利用できる。そんなユニバーサルIDが実現すれば、ウェブサービスの使い勝手は大きく向上する。

 登録情報では足りない、より細かい趣味趣向の情報は、サービス側で個別に管理してもいいし(その場合はAPIを使って、ほかのサービスからも参照できるようにすべきだろう)、ID管理サービスにXMLの情報として追記してもらってもいい。

 サービスのインプリメンテーション(実装)次第では、仕事のSNSで登録した友達関係を、趣味のSNSに反映する/しないといった設定も可能だろう。

 もちろん、このアイディアはSNSだけでなく、そのほかのウェブサービスでも応用可能だ。表計算のウェブアプリで作った書類を、ウェブメールを使って職場のSNSの関係者全員にメール転送といったことができれば便利なこと、この上ない。

 また、新しいウェブサービスが登場するたびに、自分のIDが取られないように慌てて登録する必要もなくなる。「IDがいろいろありすぎて分からなくなってしまう」問題も、サービスによってIDが異なっているため、「うまく友達を見つけられない」といった悩みも解決するだろう。

 次世代ネットワーク“NGN”(Next Generation Network)では、スパムやなりすましといった悪事を防ぐために、ユーザー認証が必然とされている。こうしたユニバーサルな認証サービスが実現すればNGN移行前の大きなステップとなるはずだ。



実現が難しいユニバーサルID


 もっとも、複数のサービスの関係をうまく取り持ちながら、共通基盤を作るというのは一筋縄では行かない(簡単なら本コラムに書かずに自分で挑戦したいところだ)。

 以前、米マイクロソフト社が“Microsoft Passport”というユーザー認証サービスを広げようとしたことがあるが、使い勝手の悪さや、マイクロソフトへの依存を嫌った人が多かったことなど、いくつかの要因が重なって、結局不発に終わっている。

 Passportは現在“Windows Live ID”に名前が変わり、MSNやWindows Liveの一部のサービスで使われているが、他社のサービスで使われている例はほとんど見当たらない。

“Windows Live ID”

“Windows Live ID”

 それでは、ユニバーサルIDのアイディアは結局、夢で終わってしまうのか? あきらめかけていたころ、米国で数年前からある認証技術に突然、スポットライトが当たり始めた。

 現在はブログソフトの開発メーカー、米シックス・アパート(Six Apart)社の社員であるブラッド・フィッツパトリック(Brad Fitzpatrick)氏が発案した“OpenID”という技術だ。

(次ページに続く)

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