SAPジャパンは、2月22日、同社東京本社で会見し、ERPパッケージの主力製品「mySAP ERP 2005」のアップグレード支援策を発表した。昨年発表した「2010年までアップグレードしない」(関連記事)という方針のもと、顧客の移行支援に取り組む。
専任チームとコンサルパッケージを用意、コスト削減・期間短縮を図る
「専任チームと、アップグレードのためのツール、方法論、情報を用意する。顧客がアップグレードの価値を判断できるサービスを提供したい」。SAPジャパンのシニア・バイスプレジデント兼フィールドサービス統括本部長・林 徹氏は支援策の狙いをこのように説明する。
「mySAP ERP 2005」が日本でリリースされたのは、昨年の5月。秋には「2010年までメジャーバージョンアップせず、機能追加は拡張コンポーネントで対応する」との方針を打ち出し(関連記事)、長期間・安定的に利用できる製品としてアピールしてきた。
だが、現状ではまだ多くの顧客は新バージョンに乗り換えていないと見られており、林氏も「(旧バージョンの)SAP R/3 4.6Cのユーザーのうち、アップグレードを実行済みまたは実行中は15%程度」と認める。そのうえで、今回の支援策は「現在アップグレードを検討している60%の顧客」をターゲットにしたものだと明かす。
SAPは、顧客が移行するうえでの課題を大きく2つ見ている。ひとつは、アドオンを含むアップグレードにかかるコスト・時間が不明確であること。もうひとつは、安定稼動している既存の製品をアップグレードするそもそものメリットがあるかが不明――ということだ。
そこで今回、SAPジャパンはこの2つをクリアするアップグレード支援策を発表した。
まず、現行のシステムを移行するためのコンサルティングサービスをパッケージ化した「SAPテクニカルアップグレード支援パッケージ」を用意する。同パッケージは最低300万円から提供し、アップグレードにかかるコストと期間の削減を図るという。また、アドオンの改修やユーザーのトレーニングプログラムなどのサービスも別途用意する。
さらに、「アップグレード・コンピテンスセンター」(UCC)と呼ばれる専任の組織を立ち上げ、ハードウェアベンダーやインテグレータなどのパートナー企業と連携しながら、導入前のアセスメントから導入後フォローまでをカバーしていく。
こうした取り組みにより、「明確なアップグレード価値の定義」「アドオンの改修を含む正確なプロジェクトコストの見積もり」「短期・安価・円滑なアップグレードの実行」の3つを実現するとしている。
林氏は「一昔前、アップグレードは“年・億”の単位だと言われ大変なものだった。今回は“数カ月・数千万”で済む」としたうえで、具体的には「“半年・5000万円”程度を目標にサービスを設計した」と話した。
2005に移行するユーザーメリットとは?
実際にユーザーが移行する上でのメリットについて、林氏は「J-SOX、内部統制、SOAなど、ビジネス環境の急速な変化への対応」を挙げる。「パッケージのメリットは新しい機能をビジネスに取り込めること。アップグレードでそのメリットを享受できる」(林氏)
また、同社のパートナー&マーケティング統括本部ソリューションマーケティングマネージャーの加藤慶一氏は、「mySAP ERP 2005は、NetWeaverとエンタープライズサービスリポジトリという“BPP”(ビジネスプロセスプラットフォーム)を提供する初めてのバージョン。2000年問題を機に構築された社内の複雑なITシステムの再構築を考える機会となる」と呼びかけた。
同社はまず、アップグレードの意向が高いR/3 4.6Cのユーザーから今回の移行策を提供し、それ以外のバージョンについても順次展開していきたいと説明している。