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ネットワークマガジン編集長が見た! “NET&COM 2007”レポート

2007年02月08日 21時50分更新

文● ネットワークマガジン 大谷イビサ、田邊裕貴

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 2月7日~9日、東京ビックサイトにおいて、日経BP主催のIT総合展「NET&COM 2007」が開催された。NET&COMは、企業向けのネットワークやセキュリティ関連のイベントとしては、毎年6月頃に行なわれる「Interop」に次いでメジャーなイベント。展示とセミナーから構成されてているが、ここでは展示会場のユニークなセキュリティ/ネットワーク製品を中心にレポートしよう。

小粒ながらも見応えのある展示

 展示会場は東京ビックサイト東展示棟の2ホール分のみで、こじんまりした印象。展示に関しても、NTT、KDDI、日本テレコムなどのキャリア、またNEC、富士通、IBM、シスコシステムズなど「大手」と呼ばれる企業の出展がなかったため、やや華に欠ける感じだ。そのかわり、中小のベンダーの展示が充実しており、仮想化やIPコミュニケーション、メールセキュリティ、検疫ネットワークなどソリューションに特化した展示は見応えもあった。

期待のモバイルWiMAXに触れるアッカ・ネットワークス

 今回のNET&COMの目玉の1つが、このアッカ・ネットワークスによるWiMAXのデモだ。WiMAXは、中距離向けの次世代ワイヤレスブロードバンド通信として注目されている技術。このうちアッカ・ネットワークスが手がけているのは、移動体向けの「モバイルWiMAX(IEEE802.16e)」という技術で、理論上、120km/hで移動しながら半径最大約3kmの範囲を最高21Mbpsで通信できるようにすることが可能なもの。ケータイやPHSのようなハンドオーバー技術を駆使することで、走行する自動車やバスからも連続的に通信できるようにすることを狙っている。アッカ・ネットワークスでは、昨年12月から横浜・桜木町地区に8つの基地局を設置して市街地での実証実験を行なっており、実サービスに向けての検証と調整を進めている。

 アッカ・ネットワークスのブースでは、ブース内に実際にWiMAX基地局が設置されており、WiMAX端末カードを接続したノートPCに触れることができた。このノートPCではストリーミング映像をWiMAX経由で再生していたが、引っかかりもなくスムーズに再生できており、利用感覚は一般の無線LANと変わらなかった。

 担当者の説明によると、屋外での実効スループットは数Mbpsで、一般の無線LANやADSLと同程度の水準が期待できるという。通信速度の出ないケータイや、通信距離が短い無線LANで対応できないシーンで、モバイルWiMAXを使うという組み合わせ利用が現実的だろう。また、総務省からの免許が下りることが前提になるが、夏ごろを目処に公開実証実験にも踏み切りたいとのこと。

写真1●アッカのブース内に設置されたWiMAX基地局

写真1●アッカのブース内に設置されたWiMAX基地局

写真2●WiMAX端末を接続したノートPC

写真2●WiMAX端末を接続したノートPC

写真3●会場内のやや離れた場所にもう1カ所WiMAX体験スペースが置かれていて、そこでもWiMAXに触れる

写真3●会場内のやや離れた場所にもう1カ所WiMAX体験スペースが置かれていて、そこでもWiMAXに触れる

「準UTM」は市場を創設するか?ヤマハのファイアウォールルータ

 ヤマハは発表されたばかりのファイアウォールルータ「SRT100」を展示し、セキュリティ業界への参入をアピールしていた。SRT100はヤマハの培ってきたVPNルータをベースにセキュリティ機能の強化と設定の容易さを追求した新ルータ。ファイアウォールやVPN、IDS・IPS、Winny対策、URLフィルタリング(サードパーティのサービスで対応)などの機能を持つ一方、パフォーマンスを確保するためにあえてアンチウイルス機能を搭載しなかったという点で「準UTM機」と位置づけられるだろう。UTM機では必須のファームウェアやシグネチャのアップデート料は不要で、希望小売価格8万円台と既存のUTMに比べても安い。また、日本語GUIやウィザードなどを完備することで、とにかく設定の敷居を下げたのも大きな特徴。

 こうした独自の製品のニーズがどの程度あるかは正直いって不透明だが、「かなり長い時間をかけて質問を投げかける人が多く、市場はあるという感触が得られた」(展示会場の担当者)という。同社ではUTMを導入できなかった中小企業に積極的にアピールしていく予定だ。

写真4●2月6日に発表されたばかりのヤマハのファイアウォール・ルータ「SRT100」

写真4●2月6日に発表されたばかりのヤマハのファイアウォール・ルータ「SRT100」

強固な通信を実現するT-SSの無線LAN製品

 また、トリニティセキュリティシステムズ(T-SS)は、ウルトラセキュリティを謳う独自のセキュリティ技術「IPN(Identified Private Network)」を実装した無線LANの製品デモを行なっていた。IPNでは、高知工科大学の清水明宏教授が考案した「SAS-2」(simple and secure password authentication protocol, version 2)という認証技術と汎用の暗号化アルゴリズムであるAESを組み合わせ、強固な通信を実現する。

 SAS-2は使いきりのIDとパスワードからワンタイムパスワードを生成し、端末とアクセスポイント(AP)を相互に認証する。認証を行なっていないAPと端末の組み合わせでは接続が行なえない。また、パケットごとに鍵を更新することも可能。カードとAPのみで相互認証するため、認証局や専用のスイッチは不要で、コストも安価に済ませられるというメリットがあるという。製品自体の希望小売価格も無線LAN APの「IPN-W100AP」が12万8000円で、カードの「IPN-W100CB」が9800円と企業向け製品としてはかなり安価なので、中小企業に向いているようだ。

写真5●T-SSのIPN対応AP「IPN-W100AP」。2.4GHzと5GHzに対応する

写真5●T-SSのIPN対応AP「IPN-W100AP」。2.4GHzと5GHzに対応する

ザイセルはPLCアダプタとWiMAX製品を展示

 ザイセルジャパンは主力製品であるUTMのほか、PLCやWiMAXなど旬の製品を展示した。ザイセルジャパンは、台湾のネットワーク機器ベンダーであるザイセル・コミュニケーションズの日本法人。  「PLA-400」は、米国ではすでに多くの製品が登場している「HPA(HomePlug AV)」規格に対応したPLCアダプタ。200Mbpsの伝送速度は、日本で昨年発売された松下電器産業のPLCアダプタが採用する「HD-PLC」とほとんど変わらないが、HPAでは伝送距離が300mとHD-PLCに比べて長距離となっている。現在、総務省の認可待ちという状態で、春頃には製品出荷ができそうだという。ファームウェアのアップデートにより、最大64台までつなげることが可能。こうした特徴から、当初は企業への導入を想定しているようだ。

 もう一方のWiMAX製品は、アッカ・ネットワークスなど国内のキャリアに用いられている2.5GHz帯対応の製品。ともに最大70Mbpsを実現するモバイルWiMAX(IEEE802.16e)に対応している。今回展示されたのは、PCMCIA型のWiMAXカード「MAX-100」とVoIP端末や無線LAN APの機能を併せ持つ宅内装置「MAX-200M1」の2種類。こちらは国内のWiMAXサービスの動向を見ながら、日本での投入を進めるとのこと。

写真6●HPAに対応したザイセルのPLCアダプタ

写真6●HPAに対応したザイセルのPLCアダプタ

写真7●IEEE802.16e規格に対応した、ザイセルのWiMAXカードと宅内装置

写真7●IEEE802.16e規格に対応した、ザイセルのWiMAXカードと宅内装置

使い方まで提案する岩崎通信機のカラー液晶IP電話

 PBXや電話機で高い知名度を誇る岩崎通信機は、ビジュアルIP電話機とオンラインショッピングを組み合わせたソリューションを展示した。

 ビジュアルIP電話機「NR-IPKTV」はVGAのタッチパネル液晶とカメラを備えており、IPでのTV会議が容易に実現する。また、Webブラウザ「Opera」を搭載しているため、インターネットのWebページを簡単に表示できる。

 ここまでの機能であれば、最近ではあまり珍しくなくなっているが、同社は端末のタッチパネルから簡単にオンラインショッピングを利用できるようにしているのがミソだ。しかも、単にショッピングサイトのURLを登録するのではなく、岩崎通信機出資のビネガという別会社が提供する「desk shopping」というサービスを経由し、書籍や日用品、CD、文具などのショッピングサイトをワンストップで提供できるようにしている。

 こうした発想は「単にWebブラウザを電話機に搭載していれば売れるというものではない。買う理由をこちらから提供する仕組みが必要」(展示会場の担当者)というところから生まれているという。

写真8●岩崎通信機のビジュアルIP電話機「NR-IPKTV」。タッチパネルを使って、オインラインショッピングが可能だ

写真8●岩崎通信機のビジュアルIP電話機「NR-IPKTV」。タッチパネルを使って、オインラインショッピングが可能だ

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