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iPhoneは大きな森を生み出す「最初の木」(後編)

2007年02月08日 14時00分更新

文● 林信行 /ITジャーナリスト

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しがらみのない自由な発想


脱パソコンメーカー宣言

アップルは社名から「Computer」を取って、脱パソコンメーカーを宣言した

 iPhone設計の遺伝子で、もうひとつ重要なのが、「元」パソコンメーカーが手掛けた携帯電話機であるということだ。

 携帯電話業界の良き伝統も悪しき慣習もすべて取払い、今日ここにある技術の粋を生かして「最も使いやすくて優れた携帯電話機」を作ろうとしてらどうなるか?──iPhoneはそういう発想に基づいて製品化されている。

 アップル以外の伝統的な携帯電話機メーカーは、先人の利がある一方で、キャリアに遠慮したり、いつの間にかできてしまった自分の領分をわきまえたり、それまでの常識に縛られていたり、他社との競争によって生み出された差別化手法に捉われていたりと、大きな「足かせ」もはめられている。

 このコラムの中編で紹介したiPodの場合を思い出してほしい。アップルは音楽業界で、それまでの音楽業界の一員ではなく、パソコンメーカーであるという立場を生かして、ブレークスルーをやり遂げた。

 今までのように楽曲の販売で利益を得るのではなく、「iTunes Store」では1曲単位で、安価にコンテンツを提供。iTunes Storeの楽曲は、著作権管理の関係でiTunesかiPod以外で再生できないようになっている。

 つまり楽曲販売が伸びればユーザーがiPodを購入するようになるので、このiPodで利益を得て、楽曲の価格を抑えられるという発想だ。このビジネスモデルのおかげで、iTunes Storeは、ユーザーに対して最大限の便宜をはらうことができた。

 こうしたアップルのやり方は、社名から「コンピュータ」が取れた今でも変わることはないだろう。それにアップルは、iPhoneの普及によりOS Xに注目が集まり、最終的にMac OS Xを搭載するMacの価値向上にも貢献すると信じているはずだ。

 同じ戦略は、iPhoneの通信機能にも見てとれる。iPhoneのSafariや「Google Map」でインターネットにつなぐ場合、無線LAN圏内では無線LANを使い、電波が届かない地域ではEDGE通信に自動的で切り替わる。

 無線LANは通信料を取れるわけではないので、もちろんキャリアには何のメリットもない。むしろ、危機感すらあおられるはずだ。しかし、アップルはこの仕様を押し通した。

 もちろん、現時点ではキャリアとして手を組んでくれたシンギュラー(Cingular)社に遠慮している部分もあるが、製品計画として発表された時点で、すでにパンドラの箱は開かれている。

 アップルによる携帯電話ビッグバンが始まるのは時間の問題だ

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