オンキヨー(株)は1日、東京・溜池の全日空ホテルにプレス関係者を集め、分解能24bit/サンプリング周波数96kHzのHDオーディオを高音質に再生することを目的としたオーディオ向けパソコン『HDC-1.0』の記者発表会を開催した。HDC-1.0の詳細については既報の通りだが(関連記事)、ここでは発表会の模様をお届けする。
パソコンにケンカを売る手もあった!?
発表会では最初に、取締役常務執行役員の廻戸正昭(まわりど まさあき)氏が壇上に立ち、開発の背景を説明した。廻戸氏は、「レコードや生音などのアナログ音源がCDに、さらに携帯オーディオへと進化してきたが、それにつれてデータは圧縮されCDの1/20程度まで圧縮されている。これはデジタルオーディオ技術の進化が、音楽性の退化になっているのではないか?」と時代の流れに警鐘を鳴らした。
同社はこれに対して、「いい音を求める方に向けた音楽配信サービス」として“e-onkyo music(イーオンキヨー ミュージック)”という高音質音楽に特化した配信サービスを行なっており、現時点で3万5000曲(うち24bit/96kHzのHDオーディオ楽曲は約600曲)を提供している。
さらに、昨年(2006年)には、米インテル社と協同で同社初のパソコン『HDC-7』を開発・発売し、今回は「“We are HD Sound.”をモットーに、音楽を変えていく」と強い決意で新機種発表に至った経緯を説明した。
開発に携わった商品企画部部長の神谷速夫(かみや はやお)氏は、開発現場の立場から
- デジタルオーディオプレーヤーの普及(600万台市場)
――パソコンを介したリスニングスタイルの定着 - デジタルオーディオ技術の推進と音楽文化の継承
――オーディオメーカーの使命 - ライフスタイルを尊重したPCアーキテクチャーの活用
――原音再生を目指して開発に着手
の3つを柱に開発を進めたと説明。「パソコンにケンカを売る手もあったが」とゲストスピーカーに招かれたインテル(株)のマーケティング本部本部長の阿部剛士氏にジョーク混じりに牽制球を投げつつ、「今はパソコンが普及して、家庭でもパソコンから音楽を楽しむ時代。そこで、パソコンを生かして高音質を家庭に届ける方法を模索した」と続けた。
本製品の特徴として神谷氏は、簡単な操作で各種DRM付きフォーマットの音楽ファイルを再生・管理できる独自ソフト『Carry On Music 10』をアピール。これは同社サービス“e-onkyo music”で提供しているDRM付きWMAのほか、OpenMG、AAC(OpenMGとAACはDRMなしのユーザー自身がリッピングしたもの)を一元管理できるもの。
さらに液晶パネル付き“マルチリモコン”が付属し、離れた場所から音楽再生しても楽曲のタイトル情報などが手元で確認できる。Carry On Musicにはアナログ音源からのキャプチャー機能も備えるが、波形から楽曲情報を検索する“Music ID”(米Gracenote社)と連携することで、レコードやテープから取り込んだ楽曲情報も確認できるとしている。
掲載当初、OpenMGはDRM付きに対応を記載しましたが、正しくはDRMなしにのみ対応となります。このため、DRM付きの音楽ファイルはWMAのみ対応です。お詫びして訂正いたします。(2007年2月2日)
なお、『HDC-1.0』は市販の高音質メディアであるSACDとDVD-Audioには対応しない。この点を同社担当者に聞いてみたところ、「パソコン向けにSACD対応ドライブは存在しないし、高音質音源は配信サイト(e-onkyo music)を利用してほしいというコンセプトのため」と回答した。
その代わりというわけではないだろうが、『HDC-1.0』のHDD(約120GB)には最初から40曲のHD音源がプレインストールされている。インテルの阿部氏がオンキヨーへの賛辞として、「一度HDオーディオを聴いてその音質に衝撃を受けると、しばらくは携帯プレーヤーの音が聞けない耳になってしまう。まるで壁に張り付いたような音に感じて、難儀をした」と発言していたが、音楽一本に絞ってコアコンピタンス(企業の中心的技術)を結集した『HDC-1.0』は、オーディオファンの耳にどんなインパクトを与えるか、発売が楽しみだ。