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「オラクルはトヨタと同じことを実行できる」Oracle Management Summit 2006で米オラクルのウォルベン氏

2006年12月05日 00時00分更新

文● アスキービジネス編集部

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日本オラクルは、12月5日、東京・赤坂プリンスホテルで同社顧客企業を対象としたカンファレンスイベント「Oracle Management Summit 2006」を開催した。基調講演では、米オラクルのシニアバイスプレジデントであるディック・ウォルベン氏が買収戦略の意義とFusion Middlewareによる統合を訴えた。

買収先、既存顧客にも大きなメリット

「ITのコストは80%は保守・運用にかかっている。イノベーションに使われているのはわずか20%。経営者は、ITのコストをなるべく削減したいと考えている一方、競争優位のための投資をしたいというジレンマを抱えている」(米オラクル シニアバイスプレジデント ディック・ウォルベン氏)

 こうした課題に対する解として、ウォルベン氏はデータベース・グリッド、ミドルウェア、アプリケーションのフルスタックでオラクルが貢献できると主張する。「環境が複雑であればあるほどコストは高い。オラクルの使命は、システムを簡略化し、よりITがビジネスに貢献できるようにすることだ」。

米オラクル シニアバイスプレジデント ディック・ウォルベン氏

米オラクル シニアバイスプレジデント ディック・ウォルベン氏

 オラクルは、2005年1月のピープルソフト買収以来、1カ月に1社のペースで計26社もの企業を買収した。特に、流通、通信、小売といった特定の業種に強みを持つアプリケーションベンダーを相次いで買収し、統合を行なっている。ウォルベン氏はここで、同社の買収戦略の意義を改めて説明した。

 「最高クラスの製品を買収し、付加価値を提供している」。ウォルベン氏は、オラクルの傘下になることで、オラクルが行なうテストによって高い品質を確保でき、グローバル化を一気に行なえることをメリットとして挙げる。加えて、アプリケーションを単一の製品としてではなく、マネジメント全体のポートフォリオの中に位置づけることが可能になるという。

 また、オラクルの買収によって既存の顧客が得られるメリットも大きいと説明する。「オラクルが買収したことで、継続的なアップデートが提供され、Fusion Middlewareがサポートされることでオラクルの製品が持つメリットもすべて享受できる」(ウォルベン氏)。

 一方、オラクルにとっては、「ERP以外の世界はもっと広い。対応できていない部分がある」(同氏)という、自社になかった各業界に精通した専門知識や研究開発の資源を手にすることができる。また、「オペレーションビジネスの企業はほとんどが中小企業。彼らには規模が足りない」と、スケールメリットについても言及。ある一定の規模に到達することで、高い価値を低コストで生み出せるのだという。これらの取り組みによって、「買収された企業のほとんどは、オラクル傘下になることで売上を伸ばしている」とウォルベン氏は胸を張る。

「Fusion Middleware」による統合をアピール

 さらにウォルベン氏は、こうした買収戦略を支えたのが、統合と標準化にあると主張。「オラクルはここ10年、“標準”をベースとしたオープン戦略を加速させてきた。オラクルは統合の基盤をもっているため、買収が容易にできる。そのカギを握るのが、再利用可能なコンポーネント、Fusion Middlewareだ」と語る。

 オラクルは、買収を本格化させる前の2003年、グローバルで自社のバックオフィスを統合した。散在していた経営資源を集約し、単一のViewで把握できるようになり、「バックオフィスを統合することで、買収先の企業をすばやく取り込むことが可能になった」(ウォルベン氏)。

 また、ウォルベン氏は、「トヨタが複数の車種を提供できるのは、再利用可能なコンポーネントを採用しているから」と自動車の組み立て作業を例にSOAについても説明。「SOAの考え方とは、標準の再利用可能なコンポーネントを組み合わせること。われわれは、トヨタと同じことを実行できるだろう。オラクルのテクノロジー全体がそれを実現できるユニークな立場にある」と強調した。

 「Fusion Middlewareのことばかり話すのは、それが統合の重要な基盤だからだ」と再三に渡ってそのメリットとミドルウェアの重要性を説いたウォルベン氏だが、一方でオラクルは、買収先の既存の顧客に対しては、既存のアプリケーションの保守を継続して行なう「Application Unlimited」も発表している。同プログラムは、2008年にもリリースが予定されている次世代アプリケーション「Fusion Applications」のリリース後も、旧製品のバージョンアップを引き続き行なっていくというものだ。

 ウォルベン氏は、「次世代のアプリケーションへ移行する際に、自らの意思で移行できる。これがアプリケーションの新しい考え方」と語り、ユーザーが自社のロードマップに合わせてアップグレードできるとアピールした。

■関連サイト
日本オラクル
http://www.oracle.co.jp/
Oracle Management Summit 2006
http://www.oracle.co.jp/events/oms2006/

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