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分離上場で問われるソニーのエコシステム

2013年06月21日 16時00分更新

文● 今村知子/アスキークラウド編集部

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20日の株主総会で改めてテレビ事業の黒字化を約束したソニーの平井社長は、17日に発足した「次世代放送推進フォーラム」では副理事長に就任し、4K推進への並々ならぬ決意を見せている。その思惑とは何か。

 4K、8Kの高精細テレビを推進させる団体「次世代放送推進フォーラム」が、17日発足説明会を開いた。ここには、放送、通信、テレビメーカーなど21社が集まり、副理事長としてソニー平井社長、NTT片山副社長などが就任している。

2013年度経営方針を発表した時のソニー・平井一夫社長

 ソニーは、その数日後の20日に株主総会で、テレビ事業の黒字化について必達すると語り、ここ数年の世界市場での大幅なシェア低下に対して巻き返しを宣言したが、2年前の2200万台から1350万台までに下がった2013年3月期の液晶テレビの販売台数を見る限り、疑問視する声が大きいようだ。

 そんなソニーの今期の起爆剤のひとつは、4K。日本時間16日からブラジルで開幕しているサッカーのコンフェデレーションズ杯では、早くも4Kに対応した最新の業務用カメラで試験撮影を行うと発表した。

 また、4Kテレビの購入者限定で、スパイダーマンなど人気映画の4Kブルーレイ・ディスク10本を無料でプレゼントする商戦も展開し始めた。今後はネットで4K画質の映画を配信するサービスも始めるという、平井社長の発言もある。こちらも、当然ソニーの4Kテレビ購入者向けサービスとなるようだ。

4KTV

これまで高価格すぎて手が出なかった4K対応テレビも、50万円という価格で家庭への普及を目指している。

分離上場で事業のシナジー効果は発揮できるか

 さらには、年内にも一般向け4Kビデオカメラの発売や、年末に売り出す「プレイステーション4」ではHDMI出力で4Kをサポートする予定もある。ソニーのあらゆるハード、ソフトで、今年は「4K」が連呼されることになりそうだ。

 業務用の撮影機材、映画などのコンテンツ、それを映すテレビと、4Kを軸に各事業が回るエコシステムを構築するのがソニーの戦略のポイントと言える。

 平井社長は、「ハードとソフトは一体だ」とエレクトロニクス事業とエンターテイメント事業のシナジーの大事さを強調しているが、実際に4Kテレビの開発には映画部門が協力し、プレステも社内の各部門との連携が見られる。

 大株主の米ヘッジファンドであるサード・ポイントは5月、エンターテイメント事業の価値を向上させるために分離上場を提案。だがこれは、ある意味、せっかく築きつつあるソニーのエコシステムの分断につながりかねない。サード・ポイント側は「分離しても両社の議長を平井社長が務めることで、相乗効果は発揮できる」とし、さらに株を買い増してソニー側へ圧力をかけているが、平井社長は「取締役会で議論したい」と言及するにとどめている。

 各事業を挙げての4K推進戦略で、果たしてソニーは今期、株主に約束したエレクトロニクス事業の復活を果たせるだろうか。万が一果たせなかった場合は、米ヘッジファンドをはじめとする株主からの要求は、さらに厳しいものになっていくことは間違いない。

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