月刊アスキー 2007年7月号掲載記事
北海道旭川市旭山動物園は、上野動物園よりも多い年間入場者数を記録したことで有名になった。その理由は、動物の姿形ではなく、「動物たちの特徴的な行動を展示」(同園園長 小菅正夫氏)する“行動展示”にある。透明な筒の中を泳ぐアザラシや、観覧者の頭上の網で休むヒョウ、間近で餌に食らいつくホッキョクグマをテレビなどで見たという方も多いだろう。この行動展示をコンセプトに、旭山動物園、旭川ICT協議会、マイクロソフトの3者が、「マザー・アース ~母なる地球~」というウェブサイトを立ち上げた。
同サイトは、メインメニューに3Dの地球を使い、動物が実際に生息する地域をクリックすることで各動物ページに飛んでいく。動物園内の行動展示は、動物の自然な動きを観察できることが魅力だが、マザー・アースでは、その行動が地球上のどこで行われているかが分かるというわけだ。こうした表現は、Windows Vistaに標準搭載されたWPFが使われた。WPFは、動画や写真、3Dなどを組み合わせたコンテンツを簡単に表示・制作できる技術だ。
一見、単なるリッチコンテンツといった趣だが、コンセプトが行動展示だけに、細かいところに小菅園長の配慮が練り込まれている。現場ではかなり激しい議論も行われたという。記者発表では、メイン画面の地球儀について「地軸が実際の角度と違う」、「ユーザーがドラッグすると、地球が自転と反対方向に勢いよく回る」といった点について小菅園長がダメ出しをしたエピソードが披露された。
マザー・アースのキャッチフレーズは、「伝えるのは命のかがやき」。正直、ちょっと面はゆい。しかし、記者会見場で小菅園長は言った。「どんなにがんばっても、命は画面に表示することはできない」。そんな思いから出たキャッチフレーズなら、襟を正して納得したくなる。実際アクセスすると、なぜか不思議と、このフレーズがしっくりくるサイトになっている。