2024年3月上旬は、プラットフォーム規制を巡る動きが相次いだ。
欧州連合は7日、デジタル市場法(Digital Market Act、DMA)の全面適用をはじめた。DMAはいまのところ、GAFAMと呼ばれる米国の巨大IT企業5社に加え、TikTokを運営するバイトダンスを対象とする。ごく限られた巨大企業のみを対象としたことから、欧州委員会が、デジタル市場で独占的な地位を確保した米中両国の企業への監視を強める法律と位置づけられる。
米国では、TikTokの米国での配信を事実上禁止する法案が、下院の委員会で7日に可決された。この法案は、バイトダンスがTikTokを売却しない場合、米国でのTikTokアプリの配信が禁止される内容だ。
日本でも公正取引委員会が6日、グーグルとアマゾンを主な対象とした、動画配信サービスの実態調査の結果を公表した。インターネットに接続されているコネクテッドTVの市場では、グーグルとアマゾンが優位にあり、今後、さらに影響力が強まる可能性があるとしている。
強力な米国のTikTok禁止法案
日米欧の動きを並べて気づくのは、米国が選択しようとしている措置が最も強いということだ。
7日に下院を通過した法案は、運営主体であるバイトダンスに対して、「5ヵ月以内に米国のTikTokを売却しないなら、今後米国ではサービスは続けさせない」と突きつける内容だ。バイデン大統領もこの法案を支持している。
米国でもTikTokは人気が高く、2024年1月の時点で1億4,800万ユーザーがいるとされる。今回、議会が一気に「禁止」に向けた動きを加速させたのは、中国系の企業が保有したままでは、米国人の行動に関するデータがアプリを通じて中国側に流れ、米国の安全保障上、深刻な脅威になりうるという懸念からだ。
法案が効力を生じ、バイトダンスがTikTokの米国部門の売却に応じなかった場合、iPhoneやAndroidのアプリストアから、TikTokはダウンロードできなくなる可能性がある。
この法案は、TikTokだけを狙い撃ちするものではない。中国だけでなく、ロシアやイラン、北朝鮮など米国と対立関係にある国の企業が提供するアプリに対して、TikTokと同様の措置が可能になる内容だ。仮に、ロシア系の企業が提供するアプリの人気が高まり、データの流出などについて安全保障上の懸念がある場合、米政府は、そのアプリの部門を売却させたり、配信を禁止したりすることが可能になる。
バイトダンス側は、TikTok上でこの法案に反対するよう呼びかけた。すると、TikTokユーザーらが一斉に上下両院の議員事務所に電話をかけ、議員事務所の電話が鳴りっぱなしになったという。
ただ、TikTok禁止法が実現するには、今後、いくつかのハードルがある。
次の米国大統領になる可能性が高まってきたトランプ氏はSNSで、この禁止法案には反対の姿勢を示している。さらに、米国内の専門家の間では、禁止法案が言論の自由など米国の憲法に違反するとの見方が強いようだ。上下両院の多数がこの法案に賛成だとしても、法廷での争いに発展する可能性もあるのではないか。
実はアマゾンが強いテレビ向けOS
米国の動きと並べると、かなり地味に見えるが、日本の公正取引委員会の実態調査も内容は興味深い。
公取委の報告書はおもに、ネットに接続されたスマートテレビやストリーミングデバイスの市場において、アマゾンとグーグルの影響力が強まっていると指摘する内容だ。
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