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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第263回

名ばかりライドシェア。かなり限定的な解禁へ

2023年12月26日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 一般のドライバーが有料で顧客を乗せるライドシェアが、2024年4月から解禁される。

 ただし、かなりの制限が付いたスタートだ。

 2023年12月20日、デジタル行財政改革会議に出席した岸田文雄首相はこう述べた。

 「全国各地で深刻となっている地域交通の課題を踏まえ、ライドシェアの課題に対応し、地域の自家用車や、一般ドライバーを活用した新たな運送サービスを、来年4月から開始いたします」

 ただしタクシーが足りない地域、かつタクシーをつかまえにくい時間帯や季節に限る。運行管理もタクシー会社が担うことになる。

 タクシー業界のライドシェアに対する強い警戒感を踏まえ、かなり既存の業界に気を使った形でのスタートになる。

タクシーが足りない

 現行の道路運送法では、料金を取って自家用車に人を乗せることはできない。

 今回のライドシェアの限定解禁で政府は、同法第78条第3項の規定を使う。

 「公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき」

 身の周りのことを考えてみると、祖父母の世代は地方の駅や空港から遠い地域で暮らしている。

 いまでこそ、たまに遊びに行くと車で迎えに来てくれるが、いつまでも元気に車で迎えに来てくれることは期待できないだろう。

 そこでタクシーの需要が生まれるわけだが、人口の少ない地域では運行しているタクシーも少ない。

 当然タクシーを呼んでも、なかなか来てくれない。

 こうした状況が、日本中で生じているのだろう。

 さらにコロナ禍が、タクシー不足に追い打ちをかけた。

 2019年3月末から2023年3月末の4年間で、タクシーの運転手は約6万人減った。割合にして約2割の大幅減になる。

 コロナ禍が一段落したいま、円安による海外からの観光客ラッシュで都市部でもタクシーはつかまりにくい。

 まさに「公共の福祉」が確保できないほど、都市部でも地方でも人々の移動手段は傷んでいる。

 そうであっても、タクシーの事業者がライドシェアに反発するのは当然だ。簡単に参入を認めてしまっては、会社が存続にかかわる。

 人々の移動手段に明らかな支障が生じているいま、早急に対策は必要だが、タクシー業界を無視して性急に進めるわけにはいかない――。

 こうした中、政府が選んだのは、極めて限定的なライドシェア解禁だった。

タクシー会社が管理する”ライドシェア”

 4月にスタートする一部解禁では、道路運送法の規定どおり地域と時間帯を限定する。

 新制度の詳細は、いまのところ明らかではないが、まずライドシェアを管理するのはタクシー会社だ。

 公開されている情報から推測すると、運転手が少なく、タクシーを呼んでも乗客を迎えに行くのに時間がかかる時間帯や季節にだけ、自家用車のライドシェアが運行される。

 金額も、タクシーと同等だという。

 タクシー会社が運行を管理する以上、原則として優先的に配車されるのは、タクシー会社の社員として働くドライバーだろう。自家用車のドライバーたちはあくまでも補完的な役割に見える。

名ばかりライドシェア

 ライドシェアの限定解禁に併せ、政府は、タクシー会社の人手不足にも手を打っている。

 観光地などの一部地域で、タクシー運転手に求められる第2種免許を持っていなくても、普通の運転免許だけでタクシーを運転できるようになる。

 さらに、20言語で第2種免許の試験を実施し、外国人ドライバーがタクシー運転手として働くハードルを下げるという。

 新制度の詳細を詳しく見ると、ライドシェアの解禁というよりは、むしろタクシー会社の人手不足対策のメニューが並んでいるようだ。

 タクシー会社主導のライドシェアについても、ドライバーの確保に課題が生じそうだ。

 東京をはじめとした都市部では、Uber Eatsの配達員は広がった。いつでも働ける手軽さが受け入れられたのだろう。

 これに対して、タクシー会社主導のライドシェアは時間も季節も限定される。

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