「たてもの」と「まち」のイノベーション第20回

大雨被害 清水建設、量子コンピューターで復旧支援

文●ASCII 漫画●ほさかなお

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自治体が自分で使えるプラットフォームを

── あらためて、プラットフォームが開発された背景について教えていただいていいですか。

大村 もともとはグルーヴノーツさんとは4年前くらいから「どうしたらまちづくりにデータ分析を生かせるか」というディスカッションをしてきました。

 社会背景としてあるのは、国交省が令和4年に出した「地域課題解決のための人流データ利活用の手引き」です。人流データは交通機関や店舗だけでなく、防災・交通・観光といった地域課題を通じて、官民問わず多様な分野で活用されるようになってきていると。我々も豊洲で当社が開発したミチノテラス豊洲ではAIカメラで取った人流データをもとに混雑状況分析などをしていますが、地域課題解決ということを考えると、「より広域での分析にはスマホのGPSデータが活用できるのではないか」ということで、ジオトラさんにお声かけをすることになりました。

国交省「地域課題解決のための人流データ利活用の手引き(概要版)」より

── なるほど。

大村 もうひとつ期待されているのは、ビッグデータの政策への落とし込みです。いま国としては地域公共団体やバス事業者などが各々のデータを持っているにも拘わらず相互利用されていないことを課題としています。行政としてはEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)と呼ばれる、エビデンスにもとづいた政策立案が期待されています。特に防災や観光、交通などのまちづくりの分野においてはですね。

国交省「デジタル社会に対応した新しい都市交通調査体系の実現に向けて(概要版)」より

── 自治体によるデータの利活用ということですが、予算面はどうなんでしょう。

大村 AIや量子コンピューターは国としても注目していて、費用面の負担をしてくれるところがあります。デジタル田園都市構想でもデータ分析の後押しをしていて、たとえば愛媛の事例では、都市リスクの可視化、特に交通・防災リスクの可視化などに対して、4億円の補助金が付いています。

── 国がある程度は予算を持ってくれると。

大村 社会課題として、交通分野では、交通ネットワークの再検討も挙げられます。地方ではローカル線存続に新基準が設けられ、1日1000人未満の乗降客数の路線は再編しないといけないのではないかという話題が出ています。鉄道のネットワークを再編して、新たにLRTやバスの自動運転化も見据え、交通ネットワークの最適化を検討するニーズがあると見ています。バスの便数なども最適にしていくため、我々の分析が役に立つだろうと。

 ほかにも防災では、激甚化する台風に対応するための事前避難シミュレーションの検討や、観光分野では観光地の回遊性向上などと。そういった背景をもとに、交通・防災・観光の観点から、現状の可視化や未来のシミュレーションをできるプラットフォームを開発したいと考えました。

── サービスはどういう形で提供するんですか?

大村 現状ではプラットフォームで分析して可視化したデータをお見せしている形ですが、今後は自治体やまちづくり団体がプラットフォームを運用してくれるのが理想です。

── おお、御社がプラットフォームを運用するわけではないんですね。

大村 そうですね。豊洲周辺では我々がスマートシティのまちづくりを推進していますが、理想は自治体がまちの状況を日々確認し、災害が起きたときにあわてず復興できるとか、平時にはにぎわいが作れる。そういったプラットフォームは、どのスマートシティでもニーズはあると思います。

── 世の中にあるものとしては何に似ているんでしょうか?

大村 モデルでは国主導でやっている「PLATEAU」ですが、我々は自治体に焦点を当てて、平時と災害時、どちらも対応できるデータ分析プラットフォームを構築したいと考えています。

── 「全日本交通防災観光クラウド」みたいな形で全国展開しないんですか?

大村 我々としては地域と連携したプラットフォームを目指しています。先ほどの呉市の話のように、地域それぞれに交通や防災など学識の先生に入っていただいて議論をすることで、より地域に根差したプラットフォームを構築できると考えています。また、分析結果がわかりやすく、誰しもが理解できるものにしていきたいです。

── 地域ごとに別々のクラウドサービスが出てきて、エンジンはみなさんの作ったものが動いているというイメージですか。

大村 それが目指す姿ですね。

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