丸の内仲通りを中心に近代彫刻や、現代アーティストの作品を50年もの長きに渡り展示し続けている「MARUNOUCHI STREET GALLERY(丸の内ストリートギャラリー)」。【推し丸アート】第1回連載ではその概要をお伝えしました。
50年もの歴史を持つ「丸の内ストリートギャラリー」
https://lovewalker.jp/elem/000/004/134/4134185/
GWで丸の内にお出かけされた際に、街中の風景に自然ととけ込んでいるアート作品を目にされた方も多いのではないでしょうか。仲通り沿いに展示されている世界で活躍する有名アーティストの芸術作品を、誰でもいつでも無料で楽しめるのですから、とても贅沢なことですよね。
「丸の内ストリートギャラリー」の魅力のひとつとして、歩いて10分ちょっとの大丸有エリアに19点もの作品が設置されている点があげられます。これは日本のみならず世界的にみてもとてもレアなことです。そしてあらためて見てみると決してアート作品が主張し過ぎず街の雰囲気に調和をもたらしていることに気づかされます。
さて、逆に19点もあるとどれを観たらよいのか、迷い目移りしちゃいますよね。そこで【推し丸アート】2回目の今回は、これだけは絶対観ておきたい「丸の内ストリートギャラリー」厳選5作品を独断と偏見満載で丸っと紹介します!
1:三沢厚彦「Animal 2017-01-B2」
東京駅丸の内北口改札を出て右手前方に建つ丸の内オアゾのエントランスにおよそ3メートルもある大きな「熊」が佇立しています。東京駅から足早に目的地へ急ぐビジネスマンも一瞬目をとめ「おっ!」と思わせる迫力満点の作品です。現代を代表する彫刻家・三沢厚彦の代表的シリーズ「ANIMALS(アニマルズ)」のひとつです。毎年日本各地の美術館で展覧会を行なっている三沢のアニマルズの中でもひと際大きな「熊」は圧倒的な存在感を有し、大都会を行き交う人々を見つめています。どことなく愛嬌のある顔立ちですが、大きな爪なども表現されており、愛らしさと恐ろしさの二面性をシンプルながら見事に表した作品です。尚、2023年6月10日より千葉市美術館で「三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions」が開催されます。
2:松尾高弘「Prism “Dahlia + Peony”」
「丸の内ストリートギャラリー」の最も大手町寄りに設置された光のインスタレーション。大手町ビルのエントランス左右2ヵ所に設置されているので、通りがかりにチラッと見るというより、わざわざ観に行く系の作品で、実際に目にすれば満足度200%間違いなし! エモーショナルな光のアートを追求し、空間アートの分野で国内外のさまざまなプロジェクトを手掛ける松尾の花をモチーフとした美しい新作です。ガラスの窓際に設置されたダリアとピオニー2種類の花を光の結晶として表したプリズムは、365日24時間1秒たりとも同じ姿を見せない光の変化と共に見えた方を変える「生きるアート作品」です。無機質な大手町のオフィスビルに咲いたプリズムの花はあなたの眼にはどのように映るでしょうか。
3:中谷ミチコ「小さな魚を大事そうに運ぶ女の子と金ピカの空を飛ぶ青い鳥」
一度見たらその不思議さの虜になること必至の、今最も注目を集めているアーティスト・中谷ミチコの新作が昨年から新たに「丸の内ストリートギャラリー」に加わりました。中谷の作品はパルテノン神殿にも見られる「レリーフ」ですが、一般的な平面を浮き立たせるように彫りこむレリーフとは大きな違いがあります。凹凸が逆になっているのです。と言葉で説明しても何のことだかよく理解できないかもしれませんので、是非実物をご覧になって下さい。想像を遥かに上回る驚きと感動が待っています。東京メトロ銀座線虎ノ門駅の渋谷方面行ホームに2020年に設置された「白い虎が見ている」で一躍名を馳せた中谷作品。レリーフ作品に表現された人物が動くように見えるのは、観る人の眼がおかしいのでは決してなく、そのように意図して作られているからです。動画撮影してSNSでのレポートをお待ちしています!!
4:草間彌生「われは南瓜」
今年で94歳となった世界的芸術家・草間彌生の象徴的な作品である「南瓜」が丸の内のビルの谷間にひっそりと佇んでいます。草間の南瓜といえばベネッセアートサイト直島のシンボルと言える作品となった黄色い「南瓜」や、ルイ・ヴィトンとコラボを果たしたものなど枚挙にいとまがありません。どこでも見られるようでいて「丸の内ストリートギャラリー」の「われは南瓜」は草間作品の中で唯一、黒御影石で作られた真っ黒で平べったい作品です。草間のテーマである「永遠」が半永久的な存在である石で表現されています。本体に空いた幾つかの穴から丸の内仲通りを行き交う人間模様を眺めてみたり、自分自身について思索を重ねたりするのもまた一興です。派手なイメージのある草間作品ですが、漆黒の落ち着いた作品を敢えて華やかな都会のど真ん中に設置することで普段と違った見方が出来ます。
5:H&P.シャギャーン「Matching Thoughts」
最後の5点目はH&P.シャギャーンのブロンズ作品です。ここまで紹介してきた4名がそれぞれ誰もが一度は聞いたことのある有名作家だったのに対し、H&P.シャギャーンはアートファンですらその存在が知られていない「謎のアーティスト」です。公式サイトによると「2004年、ヨーロッパの古都ウィーンに滞在制作中だったアンリが、古くからの友人であるピエールを呼び寄せたことをきっかけに始まったアートユニット。」とありますが、アンリ、ピエールって誰それ?状態でしょう。実はこの作品、日本の有名現代アーティスト2名のコラボ作品だとか…? とにかく素晴らしい作品ですから、ぜひ丸の内へ観に行ってみてくださいね。
「丸の内ストリートギャラリー」その秘めたるポテンシャル恐るべしです。今回紹介した5作品の他にもまだまだ魅力的で個性的な作品は沢山あります。自分のお気に入りを見つけに丸の内に出かけてみましょう。
「継続は力なり」と学生時代に先生からよく言われましたが、「丸の内ストリートギャラリー」として1972年(昭和47年)から現在に至るまで数年に一度展示替えを行ないながら継続させてきた「歴史」が成せる、他では真似できない魅力が待っています。
「丸の内ストリートギャラリー」公式サイトには、どこにどんな作品が展示されているか一目で分かるエリアマップや、各アーティストの詳細、紹介動画などが掲載されています。お出かけ前にチェックしてみましょう!
https://www.marunouchi.com/lp/street_gallery/
「第43回丸の内ストリートギャラリー」実施概要
<展示期間>
2022年6月~2025年5月(予定)
<展示場所>
丸の内仲通り、丸の内オアゾ前、大手町ビル
<主催>
三菱地所株式会社
<監修>
公益財団法人彫刻の森芸術文化財団
<展示アーティスト>
H&P.シャギャーン、アギュスタン・カルデナス、イゴール・ミトライ、キム・ハムスキー、草間彌生、ジム・ダイン、ジュゼッペ・スパニューロ、澄川喜一、ティモ・ソリン、中谷ミチコ、名和晃平、パヴェル・クルバレク、バーナード・メドウズ、舟越桂、ヘンリー・ムーア、松尾高弘、三沢厚彦、ルイジ・マイノルフィ、レナーテ・ホフライト ※五十音順
<公式サイト>
https://www.marunouchi.com/lp/street_gallery/
中村剛士(なかむらたけし)
Takの愛称で「青い日記帳」主宰。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信している。goo「いまトピ」、JR東日本「びゅうたび」、「楽活」などにコラムを連載。『いちばんやさしい美術鑑賞』、『失われたアートの謎を解く』(筑摩書房)、『カフェのある美術館 素敵な時間をたのしむ』、『カフェのある美術館 感動の余韻を味わう』(世界文化社)、『フェルメール会議』(双葉社)、『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)、『美術館の手帖』(小学館)など執筆・編集。『文藝春秋』書評寄稿などの執筆活動ほか、テレビ、ラジオ出演、各種講演、イベント主催など、アートの伝道師として幅広く活躍中。
http://bluediary2.jugem.jp/
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